水素社会の点と点をつなぎ、世界の水素サプライチェーンを担う荏原製作所

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全社をあげて水素関連事業に注力

社長直轄のコーポレートプロジェクトとして水素関連事業に全社を挙げて取り組む荏原製作所。<つくる・はこぶ・つかう> の全方位から、同社ならではの水素ビジネスの創出を目指す。昨年の秋展に続き、3月のFC EXPO春展への出展を予定している同社の最新技術や製品、水素ビジネスへ向けた想いを聞く。

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新しい社会貢献の姿を追求

1912年にポンプメーカーとして創業してから112年。送風機、圧縮機、冷凍機、環境プラント、精密・電子事業へと事業領域を拡大してきた荏原製作所。1985年、のちに精密・電子事業となるコーポレートプロジェクトが産声を上げて以降、30年以上ぶりに第4の柱となるような事業創出に力を入れている。

『荏原としてより大きな目で新しい社会貢献の姿を追求していく必要がある』という社内のムーブメントが高まるなか、地球温暖化、脱炭素、エネルギーセキュリティといったグローバルな社会課題の解決へ向けた1つの手段として着目したのが水素。

「環境事業の持つガス化技術、液化水素や圧縮水素の移送に必要とされるポンプ・圧縮機の技術など、当社グループには水素に関連する技術・ノウハウが存在します。それらのシナジーを活かし、荏原グループ全社で力を捧げる社会貢献の在り方として水素関連事業が浮かびあがりました」と話すのは、CP水素関連事業プロジェクトプロジェクトマネージャーの塚本 輝彰氏。

こうしたなか、2021年8月より、社長直轄の全社横断的なコーポレートプロジェクト(CP)として水素関連事業プロジェクトがスタート。社長直下に組織を置くことで、よりスピーディな意思決定と社内リソースの大胆な活用を実現し、水素関連の新しい事業の創出を目指していく。水素を<つくる・はこぶ・つかう>の広い領域をカバーしていくのが、荏原製作所の水素ビジネスの考え方。

「水素は大きなグローバルサプライチェーンのようなニーズとローカルな分散型のニーズがあり、今はまだ未来の社会が何を必要とするのかを断定できるタイミングではありません。ですから現在は、作って、移動させて、使うところまでの全域に対して当社の持てる力を発揮し、様々な場面で活用できる技術、製品、サービスを幅広く模索していきます。その中からだんだん本当に必要なものが絞られていくと考えています」(塚本氏)

荏原製作所の水素関連事業プロジェクト
荏原製作所の水素関連事業プロジェクト
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水素を使う時に必要な存在に

CP水素関連事業プロジェクト プロジェクトマネージャー 塚本 輝彰氏
CP水素関連事業プロジェクト
プロジェクトマネージャー
塚本 輝彰氏
CP水素関連事業プロジェクトマーケティング戦略・営業ユニット ユニットリーダー 竹原 寛氏
CP水素関連事業プロジェクト
マーケティング戦略・営業ユニット
ユニットリーダー
竹原 寛氏
マーケティング推進部長 吉浜 真也氏
マーケティング推進部長
吉浜 真也氏

1912年より、水インフラを支えるためのポンプを日本で初めて作ったところから始まるポンプの技術、製品は荏原製作所の強みの1つ。水の移送から始まり、石油化学、LNG(液化天然ガス)、そして液化水素へ。祖業がポンプである同社は、その技術・ノウハウにおいて世界でもトップレベルを走っている。

「水素を液化し日本へ大規模に船舶輸送し発電所の燃料として使うという取り組みは、国を挙げての施策となっています。LNGも-162°Cの極低温ですが、液化水素はそれより約100°C度低い。極低温領域でのポンプの開発には、かなりの技術的ハードルがありますが、当社ではLNGのポンプ技術を活用し、液化水素の輸移送ポンプの開発に挑んでいます」(CP水素関連事業プロジェクトマーケティング戦略・営業ユニット ユニットリーダー:竹原 寛氏)

<はこぶ>の領域で液化水素の輪移送ポンプの開発に挑む一方で、<つかう>の領域で必要な昇圧ポンプの開発も進める。例えば、水素ステーションで水素を充填するには、圧力をかけて送らなければならない。

「発電所にいくら液化水素を貯める大きなタンクがあっても、タンク単体では何も起きません。そこに圧力を与えて極低温流体を移送・昇圧する技術が存在しなければ、何も動かないのです。その部分を我々が担っていくのです」(竹原氏)

この3月に東京ビッグサイトで行われるFC EXPOでは、これらの最新技術・製品のうち、NEDOの助成事業として進めている液体水素ポンプや、水素圧縮機などを紹介する。NEDOの助成事業で開発した液化水素の移送ポンプは、-253°Cという極低温環境下での使用が可能であり、JAXA能代ロケット実験場で実液試験を実施した際の実機を展示する予定だ。

「水素を使うには、それを繋ぐものが必ず必要です。社会の中で水素を使う時に絶対に荏原が必要だという存在になる。水素社会の点と点をつなぐ存在になっていきたいと考えています」(マーケティング推進部長:吉浜 真也氏)

水素発電ガスタービンに不可欠な世界初の「液化水素燃料供給ポンプ」
水素発電ガスタービンに不可欠な世界初の「液化水素燃料供給ポンプ」

水素事業を次なる事業の柱に

<つくる>の領域ではターコイズ水素に着目している。メタンを燃料とし、水素と固体炭素を作る、ターコイズ水素製造プロセス。通常のブルー水素との大きな違いは、プロセスの中でメタンやCO2に含まれる炭素を固体として取り出せることだ。取り出したカーボンはカーボンブラック、グラファイトなど、価値のあるものに変えることができる可能性もあり、炭素循環という部分でも利点は大きい。

「現在は技術開発の段階で、プロセスをひとつひとつ実証しており、社会実装はもう少し先になるかと思います。これに関しては、ユーザー様も交え、様々な形でアライアンスを組みながらサプライチェーンの構築をしていきたいと思います」(塚本氏)

未来の水素社会は0か1かではなく、全体の何割かを水素が担っていくような世界になっていくだろう。そういう意味で、2050年へ向けた水素の利活用にはまだまだ大きなポテンシャルがある。荏原製作所では、グローバル展開も視野に入れ、将来的に水素事業を事業の柱(売上にして2,000億円以上)にまで成長させていく。

「日本がカーボンニュートラルへのコミットを達成するには、水素は絶対に必要だと思います。今ある多くの技術課題を解決し、技術をブラッシュアップすることで使いやすいコストを実現していくことが重要です。社会実装できるレベルまで、技術と経済価値を高めることを続けていく。それが、我々の使命かと考えています」(塚本氏)

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株式会社荏原製作所株式会社荏原製作所
〒144-8510 東京都大田区羽田旭町11-1
03-3743-6111
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プレスリリース
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「※NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構」

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