高まるエネルギー危機への備え「オフグリッド電源システム」

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2010年、日本初のオフグリッド電源システムを開発したオフグリッドの先駆者である慧通信技術工業。再エネを主電源とし、従来の電力供給ネットワークに頼らず自ら電力を生み出す同社のシステムに採用されているのが、TDKラムダの双方向DC-DCコンバータ『EZA2500W』だ。システムの特徴や開発の狙いなどを両社に聞いた。

オフグリッドは事業継続に欠かせない技術

――慧通信技術工業の事業概要についてお聞かせください。

粟田 隆央氏 慧通信技術工業 代表取締役
粟田 隆央氏 慧通信技術工業 代表取締役

慧通信技術工業 代表取締役 粟田 隆央氏(以下・粟田氏):当社は2000年に設立し、大手家電メーカー、ハウスメーカー、通信事業者等へ製品やシステムを供給してきました。2008年にはスマートメーターを、2010年にはオフグリッド電源システム『パーソナルエナジー』を、いずれも日本で初めて開発し、販売を開始しています。オフグリッドという言葉も当社が初めて提唱したものです。開発当時は、概念を理解してくれる人はあまりいませんでした。

――オフグリッド電源システム『パーソナルエナジー』の特徴はどのようなものでしょうか。

『パーソナルエナジー』は、発電所、変電所、配電網の全てを網羅したコンパクトなシステムで、独立した小さな電力会社ともいえます。

日本は化石燃料の9割以上をSAU,UAEなど中東諸国に依存しており、地政学的なエネルギーのリスクは高い。今後、安定した電力を自力で得ることができるシステムの必要性は増していくでしょう。

当社のシステムは太陽光発電を主電源としていますが、それは、いつでも・どこでも安定して得られる安価なエネルギーであるからです。『結果として温室効果ガスの削減にも寄与する』というのが本質で、CO2排出量の削減を目的に太陽光発電を選んだわけではありません。

私たちが考えるオフグリッドは、経済合理性とエネルギーセキュリティの観点から、事業継続にとって欠かすことのできない技術だと捉えています。

――現在、オフグリッド電源システムはどのような場面で活用されていますか。

粟田氏:防災無線局やデータセンター、人工透析病棟といった医療機関など、災害時も含め常に電力を必要とする場所へ導入されています。ウクライナ危機に端を発するエネルギー価格の高騰で、工場施設などでもBCP対策だけでなく、電力コスト削減を目的に『パーソナルエナジー』を採用するケースが増えてきています。

オフグリッドビルシステム
オフグリッドビルシステム

現場のリアルな反応をもとに製品を改善

――TDKラムダの『EZA2500W』採用に至る経緯をお聞かせください。

粟田氏:システムでは、太陽光発電を含むHVDC(高圧直流送電)をどう制御するかがポイントです。もともと製品としてあった『EZA2500』では電圧の問題でシステムとして運用に至れないことから、上位機種として『EZA2500W』を開発いただきました。私たちの意見を多く採用いただいた結果、安定した運用が可能となり、現在標準化を行っています。

岩谷 一生氏 TDKラムダ 技術統括部
岩谷 一生氏 TDKラムダ 技術統括部

TDKラムダ 技術統括部 岩谷 一生氏(以下・岩谷氏):『EZA2500W』については、従来品EZA2500に比べ電圧範囲と使用温度範囲の拡大、基板のコーティングや防塵・防水長寿命ファンの採用など、助言いただいたことは全て反映しています。我々、電源設計者は設計した製品が使われている現場を見る機会がほとんどありませんが、粟田氏は常に現場を見せてくださる。実際の現場を見ながら改善すべき点を検討できることは、我々にとっても大変ありがたいことです。

粟田氏:電源の不具合は、環境要因も多いため現場に行かないと分かりません。設計者・開発者が実際に自分の目で見て製品を解析するのが一番早い。

例えば、実験結果を再現できないことが電源には多くあります。電気的な現象は物理現象なので、確実に何かが起こっているはず。それが再現するまで待ち、その兆候を捕まえて、仮説を立てて対策していくのが、我々エンジニアです。そうした忍耐が必要な作業を経て、安定した電源が世に流通するのです。

現在採用しているEZA2500Wについても、初期は試行錯誤が多かったですが、TDKラムダさんの協力もあって、今では信頼性もあり、品質の高い製品に仕上がっていると思います。問題が起こった際の解析技術も持っているため、安心して使っています。

パーソナルエナジー自在20kwh①
パーソナルエナジー自在20kwh①
パーソナルエナジー自在20kwh②
パーソナルエナジー自在20kwh②

高まるオフグリッドの重要性

――今後、オフグリッドの重要性は高まっていきますか。

粟田氏:現在、ウクライナだけでなくイスラエルでも紛争が勃発しており、今後のエネルギー調達価格については楽観できない状況にあります。場合によってはオフグリット化せざるをえない企業やサービスも出てくるでしょう。

我々は、社会インフラの一部をオフグリッド化、自律分散化することで、より強靭なインフラシステムを構築できると考えています。少子高齢化が加速するなか、巨大なシステムやインフラを構築・維持することは難しくなっていきます。小規模化、自律分散化することで、維持コスト、運用コストを抑制していくことが不可欠と考えます。

――未来へ向けて、TDKラムダへの期待は?

粟田氏:必要としている製品をスピーディに供給いただければありがたいです。市場が見えてからではなく、今はまだ主流ではない分野も開発していっていただきたいと思います。

岩谷氏:エネルギー革新は、この先どんどん進んでいくと思いますので、5年後・10年後を見越してスピード感をもって、製品開発していくことが重要だと私も思っております。そのために、お客様の困りごとを一早く理解し、製品開発に繋げられるようこれからもお客様第一で製品開発・技術サポートを行っていきます。

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TDKラムダ株式会社TDKラムダ株式会社
TEL:03-6778-1111
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