TIS、韓国のEIPGRID社と連携し地域エネルギーマネジメントを支援
IT企業として50年以上の歴史を持つTISは、2022年4月、デジタルの力で脱炭素社会を実現するソリューションブランド『Carbony(カーボニー)』を発表。その第1弾としてVPPプラットフォームの提供を開始している。ソリューションブランド立ち上げの背景や狙い、エネルギーの地産地消を見据えた次世代エネルギープラットフォームの目指す姿について聞いた。
◆デジタル技術で脱炭素に貢献
TISは国内大手の総合ITサービス企業として、創業から50年にわたり、より豊かな暮らしを実現するための社会基盤をITの力で支えてきた。近年は、4つの社会課題「金融包摂」「健康問題」「都市への集中・地方の衰退」「低・脱炭素化」に注目し、進化し続けるデジタル技術を駆使した課題解決に力を入れる。
4つの課題の1つ「低・脱炭素化」の実現に向け、新たな脱炭素ソリューションブランドとして立ち上げたのが『Carbony』だ。
『Carbony』はCarbon(炭素)とharmony(調和)を掛け合わせた造語で、“デジタルの力によってマルチステークホルダーと脱炭素を共創し、持続可能で豊かな次世代エネルギー社会実現する”ことをコンセプトとしている。
「TISの強みであるデジタル技術を活用して二酸化炭素を調和(プラスマイナスゼロ)し、多様なステークホルダーとの共創で次世代エネルギー社会を作っていくという想いを込め立ち上げたソリューションブランドです」(産業公共事業本部・樋口智祥氏)
『Carbony』では、(1)エネルギー事業を行う企業・法人 (2)エネルギーを利用する企業・法人 (3)個人・家庭にセグメントを分け、各セグメントに最適なソリューションを提供していく。
「分散型電源のエネルギーマネジメント・高度化活用とマルチステークホルダーの行動変容を促す仕掛けの創出がソリューション開発の方針です」(樋口氏)
ソリューションの第1弾として『Carbony VPPプラットフォーム』の提供を開始。今後、EV充電管理やEVを活用したエネルギーマネジメント、低圧機器デマンドレスポンスなど第2弾以降のソリューションも順次開発し、幅広い分野での脱炭素への取り組みを支援していく。
◆Carbony VPPプラットフォームの特長
TISではこれまで、電力・ガス会社のシステム構築や電力小売事業者向けトータルソリューションの提供など、エネルギー業界で多くの実績を重ねてきた。
デマンドレスポンス(DR)という言葉が出てきた2018年頃から提供してきたものをリニューアルし、分散電源管理基盤として開発されたのが『Carbony VPPプラットフォーム』だ。
同VPPプラットフォームには、大きく3つの機能がある。
(1)AR/RAシステム:
アグリゲーションコーディネーター/リソースアグリゲーターの両方の立場で必要となる機能を1つのサービスで利用可能
(2)市場取引管理:
需給管理市場、容量市場といった複数の市場を1つのサービスで連携可能
(3)IoT基盤:
複数種類・複数台数のリソースと連携が可能
3つの機能は、フルパッケージでの提供以外に、各機能単位での提供も可能で、各種ステークホルダーごとに必要な機能を柔軟に組み合わせて提供することもできる。
「ソリューション開発のテーマとしては大きく2つ。調整力と再エネです。市場接続からエネマネにおける機器制御までワンストップで対応できるのが特長で、工場などの設備から蓄電池、EV、空調機、ヒートポンプ給湯器といったものを束ねるような基盤となっています」(産業公共事業本部・谷口健一郎氏)
また、同VPPプラットフォーム開発は韓国のEIPGRID社とパートナーシップを組んで進めている。EIPGRID社は、VPPやエネルギーマネジメント領域において、韓国をはじめ、欧州、東南アジアで多くの実績を持つ。EIPGRID社の持つ、海外での知見・技術と、TISが長く培ってきた国内エネルギー業界・制度に対する知見・技術を融合することで、より洗練されたソリューションへと進化させるべく、協力体制を確立している。
◆今後のキーワードは“最適制御”
日本では、今まさに第7次エネルギー基本計画が策定途中だが、今後、再エネ比率が上がっていくことは間違いないだろう。
再エネの地産地消が注目されるなか、変動の大きい再エネを上手く活用するための調整力が必要となる。一方で、蓄電池やEVなどの新しい電源の普及と同時にコストが下がり、動かせるリソース・バリエーションは増えている。こうした背景から、地域やコミュニティのエネルギーマネジメントの重要性が高まってきている。
「エネルギーの地産地消、系統混雑の緩和などを考えた場合、地域やコミュニティ単位での自立型マイクログリッドといったカタチに、我々のソリューションも進化させていくべきだと考えています」(谷口氏)
産業分野をまたぎ、クロスセクターで様々なリソースを組み合わせながら調整力をアグリゲーションしていくことで、地域の中でのフレキシビリティを獲得していく。
「単独拠点でエネマネを高度化していきながら、それらの拠点を束ねて調整力としてアグリゲーションしていく。最適制御が今後のキーワードかと思います」(産業公共事業本部・山本明梨氏)
パートナーであるEIPGRID社の海外における先行事例では、東南アジアにおける地域コミュニティマネジメントがある。法人、個人と多様な需要家があるなか、多種多様なエネルギーリソースと接続し、統合モニタリングや発電・需要予測など、コミュニティエネマネの実証を実施。現在は商用化に向けた準備を進めている。
また、米国では空港をコミュニティとして取り組みが行われている。常駐するレンタカー会社のEVでエネルギーマネジメントを実行し、コミュニティ単位のエネルギー最適化の第一歩を踏み出した。今後は世界中の空港を対象として多様な業態の店舗といった空港内のエネルギーリソースを統合し、最適なコミュニティエネマネの実現を目指していく。
「“地域のコミュニティ・エネルギーマネジメント”がキーワードですが、地域全体であったり空港という施設であったり、コミュニティの捉え方は様々です。TISとしては、EIPGRID社の海外先行事例も参考にしながら、多様なコミュニティの多様なリソースを接続する“コミュニティ・エネルギーマネジメント”に取り組んでいきたいと思います」(山本氏)
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