「低騒音・高機能EMS」を搭載した新蓄電池システムが登場
各種変圧器、受変電設備など電力インフラ設備を手掛けるダイヘン(大阪市)が、再生可能エネルギーのさらなる拡大を見据えた事業展開を加速している。2025年は独自のエネルギーマネジメントシステム(EMS)「シナジーリンク」や新型パワーコンディショナー(パワコン)を搭載した太陽光併設型・系統用の蓄電システムの販売を始めた。ダイヘンEMS事業部長の服部 将之氏に狙いを聞いた。

昼間に余る電力 蓄電池利用が不可欠
背景にあるのは、政府が2025年2月にまとめた第7次エネルギー基本計画である。2040年に太陽光発電の比率が30%程度に拡大する見通しで、今後は電力を効率よく運用するエネルギーマネジメントがますます重要になる。特に今後の大きな課題となるのが出力制御だ。
「2023年度以降、太陽光で発電した電力が余剰となり出力制御が急増しています。再エネを有効活用するためには、蓄電池を組み合わせてうまくコントロールすることが不可欠です」(服部氏)

蓄電池を導入するパターンは大きく分けて3つある。
①系統に蓄電池を直接接続し、社会全体で太陽光発電所と系統用蓄電池でコントロールしながら、昼間の余剰電力を貯めて夜に蓄電池から放電する
②太陽光発電所に蓄電池を併設し、発電所として電力をコントロールする
③需要家が自家消費用の太陽光に蓄電池を併設する
ダイヘンは3つの市場向けに製品を投入するが、特に①、②を紹介する。
① 系統用蓄電池パッケージ
系統用蓄電池パッケージは出力が2MW、容量が8MWhの蓄電所が多く計画されている。各種の電力取引市場に対応しており、EMS 「シナジーリンク」が高速・高精度な充放電を制御する。
ユニット型パワコンを6段重ねで使用

新製品のユニット型パワコンは出力170kWの小さなパワコンを6段重ねとした1MWが基本形になる。
このユニット型パワコンの大きなアドバンテージは騒音対策だ。服部氏が説明する。「今蓄電所建設では近隣に対する騒音対策が大きな課題です。一般的な蓄電池システムの中で一番大きな騒音になるのがパワコンです。パワコンの周囲1メートルを基準に騒音の平均値を計測すると、他社のパワコンが80~90dB(デシベル)に対して、我々のパワコンは70.3dBと大幅に低減しています。騒音に対応するための防音壁の設置にはかなりのコストがかかり、土地の面積も必要になります。我々の工場に来られて、パワコンの音を確認されるお客様が非常に多く、実際に音を聞いて安心してお帰りになります。これが我々の工場見学の定番ルートになるほど、大きなメリットです」
蓄電所停止リスクの回避
なぜダイヘンはユニット型のパワコンを軸にした蓄電池パッケージを展開するのか。もう一つの大きな理由が、蓄電所停止リスクの回避だ。服部氏が説明する。「電力の調整や電力インフラを担う蓄電池の停止の影響は、非常に大きい。1MW、6ユニット連結のパワコンで運用すると、仮に1ユニットが故障で停止した場合も、あとの5ユニットは運転を続けることができる。社会インフラを支える機器としては、ダウンタイムをどれだけ短くするか、範囲を小さくするかが非常に重要であり、これが新製品を開発した狙いです。社会的意義は大きい」
② 太陽光発電併設型蓄電池パッケージ
太陽光発電所併設を想定して開発した蓄電池パッケージは、定格出力が1MW、容量が4MWhの構成で、基本性能は蓄電所向けと同じだ。新製品は昨年度末に販売を開始し、2025年3月ごろから出荷を開始した。FIT(固定価格買い取り制度)から電力市場の価格動向や電力需要に合わせて電力供給できるようにするFIP(フィード・イン・プレミアム)に転換する事業者であれば、収益性向上のために蓄電池の導入は不可欠になる。
搬入と柔軟配置のしやすさ
「太陽光発電所は山間部やゴルフ場の跡地など、搬入経路が狭いケースが多い。そのため、この蓄電池パッケージはパワコンを1.3メートル角に小型ユニット化しました。キャビネット型の蓄電池との組み合わせで、6トントラックで分割搬入できるので、狭い場所にある発電所では大きなアドバンテージです。さらに小型ユニット化したパワコンを並べる際、太陽光の空きスペースの土地の形に合わせ、配置をカスタマイズできます。分割搬入と柔軟配置、この二点が新たな太陽光発電併設型蓄電池パッケージの大きなメリットです」(服部氏)

EMS「シナジーリンク」で電力を自律的に自動制御
EMS「シナジーリンク」で電力を自律的に自動制御いずれの蓄電池パッケージもユニット型のパワコンを使っており、このパワコンも含め各周辺機器にはダイヘンが独自開発したEMS「シナジーリンク」が搭載されている。各機器が自律的に動き、電力の需給バランスを自律的に自動制御する仕組みだ。「例えば、電力量の目標値を与えると、実際の電力量との差分が各機器に配信されます。各パワコンに搭載されたシナジーリンクモジュールは、受信する目標値と実際の電力量との差をもとに稼働量を決めます。そして、稼働量を各パワコンに指示します。蓄電池、太陽光、空調機が自律的に動作するために、モジュールには、それぞれが最適に動作するような個別のアルゴリズムが搭載されています」(服部氏)

中央集権型エネルギー管理の転換
こうした蓄電池システムを軸に、ダイヘンは今後、2050年のカーボンニュートラル実現に向けてさらに広がるEMS事業で優位性を発揮したい考えだ。「今後は、こうしたEMSが広域連携していくことが想定されます。そのときには、よりシナジーリンクが価値を発揮します。だからこそ、我々は中央サーバで電力監視している中央集権型の従来EMSから、自律分散型のEMSに変えたい。今後、増加する系統用蓄電所、太陽光発電所、工場等の太陽光発電といった設備が、より広く、連携できるシナジーリンクが、さらに価値を高められると考えます」

株式会社ダイヘン
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