双方向DC-DCコンバータを活用した『再エネ活用型DCマイクログリッドシステム』

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『エネルギーの地産地消』を掲げ、かねてから自社工場で再エネベースのエネルギーシステム構築を実現してきた成宏電機。同社の構築する『再エネ活用型DCマイクログリッドシステム』はエネルギー自給も可能な電源システムだ。成宏電機と、同製品を絶縁型双方向DC-DCコンバータで下支えするTDKラムダの両社に、それぞれの製品、サービスについて特徴を聞いた。

未来のエネルギーモデルは『地産地消型』

―成宏電機の企業沿革、事業概要についてお聞かせください。

夏梅 大輔氏 成宏電機 代表取締役
夏梅 大輔氏
成宏電機 代表取締役

成宏電機 代表取締役 夏梅 大輔氏(以下・夏梅氏):成宏電機は、世界遺産でもある富山県五箇山の商家がルーツです。『40年ごとにビジネスを変えよ』という家訓に従い、養蚕・絹織物・自動織機・電気工事・システムエンジニアリングと、時代に合わせてビジネスモデルを変革しながら今に至ります。現在は、自動車メーカーや半導体装置メーカー向けに産業用装置を設計・制作し、そのノウハウを活かしてエネルギー分野への展開を進めています。

我々が考える「未来のエネルギーモデル」とは、使いたいところで創って使い切る『地産地消型』です。そこからバックキャストした要素技術として、再エネや蓄電池の利活用を深掘りしながら、研究機関や電力会社との連携も活発に行っています。

―DCマイクログリッドシステムの特徴をお聞かせください。

夏梅氏:私たちはカーボンニュートラルという言葉が一般的になる前から、自社工場内で太陽光や風力、地中熱などの再エネをベースにしたエネルギーシステムを手がけ、実績があるものをお客さまにご提供してきました。再エネを組み合わせてエネルギーを賄おうとすると、その一つひとつを交流で系統連系していくのは困難です。直流の電気をそのまま、必要な分だけ取り出し、多い分は溜めるという、直流のマイクログリッドの発想が、当時からありました。それを実現するのが今回のシステムです。商用電源を抑えて再エネ比率を高めることでカーボンニュートラルに近づけると同時に、電気代コスト減の観点でも経営に貢献できます。

『DCマイクログリッドシステム』の特徴
『DCマイクログリッドシステム』の特徴
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『EZAシリーズ』採用の3つの決め手

―TDKラムダとの付き合いは、いつ頃からでしょうか。

夏梅氏:2014年に手がけた、とあるメーカー向けの大型コンテナ系蓄電池システムがきっかけでした。当時、お客さまから『鉛バッテリーを利活用したエネルギーモデルを作れないか』と相談を持ちかけられ、自由度の高いコントローラーはないものかと調べていました。そのときにTDKラムダさんの製品と出会ったのです。双方向DC-DCコンバータ『EZA2500』を150台近く使い、システムを構築しました。当時はまだ主流ではなかった、夜間の電気を蓄電し日中に吐き出すピークシフトの概念を実現しました。

その後、太陽光と風力、リチウムイオン電池をEZAによって組み合わせた工場内の自動搬送装置(AGV)の電源システムも構築し、それらは現在も稼働しています。

―EZA採用の決め手となったものは何だったのでしょうか?

夏梅氏:EZAの強みは大きく3つあると思っています。1つ目は、制御の自由度の高さ。パラメータをユーザー側で自由に操ることができるので、SIer側が様々な発想、自由度を持ってお客さまに提案できます。例えば、双方向性を活かして太陽光パネルの劣化診断をするシステムを作り、実際に実装しています。

2つ目は、再エネ・蓄エネとの親和性の高さ。『EZAシリーズ』は絶縁型のため、再エネやEV、蓄電池と繋ぐことができます。既にお客さまのもとで動いているインバータやサーボシステムなど、既存の装置に後付けで組み込むことで、安心安全かつ短期間でアップグレードできるのが、大きな利点です。

3つ目はBCPとの親和性です。未来のエネルギーモデルは『地産地消型』と述べましたが、例えばこれまでの集中型発電の場合、上流の町が停電すれば下流の町も停電してしまいます。電源が絶縁されていることで故障時の切り離しが容易になり、波及事故の抑制が可能になるばかりか再エネ由来のエネルギーで自活することも可能になります。

岩谷 一生氏 TDKラムダ 技術統括部
岩谷 一生氏
TDKラムダ 技術統括部

TDKラムダ 技術統括部 岩谷 一生氏(以下・岩谷氏):EZAの設計者の立場から言えば、電源にできることは限られています。もちろん、機能は最大限に考えて設計してきましたが、成宏電機さんに使っていただいて、我々が考える以上の活用法があることに驚いています。太陽光パネルの劣化診断も、設計当初は全く想定していなかった使い方で、斬新な発想と工夫のもとで、コンバータの性能を最大限生かしていただいています。

夏梅氏:我々SIerは、疑問に思ったことはすぐに解決していかないと前に進みません。TDKラムダさんは設計者の方と距離が近く、スピード感と信頼感を持って様々な要望に対応していただけるのが、積極的に採用するもう一つの理由です。

岩谷氏:『EZAシリーズ』は、新しい市場へ向けた電源です。実際にシステムを設計し、使っていただいたお客さまからのフィードバックは、電源設計者にとっては大きな宝です。成宏電機さんの場合、我々が思うより1歩も2歩も先の発想で活用いただいていますので、いつも勉強させていただいているという気持ちで対応しています。

安全を第一に、BCPとも高い親和性

―『EZAシリーズ』は、絶縁型の双方向DC-DCコンバータです。絶縁型にした理由は?

岩谷氏:当社のスイッチング電源はほとんどが絶縁型ですので、TDKの磁性材料含め、強みを活かせるというのが1つ。もうひとつは、安全面を考えると絶縁の方が有利な点が多いというのが理由です。

夏梅氏::『安いから非絶縁』という考えが多いですが、地絡や漏電を確実に検出し波及事故を防いでいくためには絶縁はマストです。

―『DCマイクログリッドシステム』の今後の展開について、教えてください。

夏梅氏:カーボンニュートラル社会の実現には、再エネの活用が必須です。しかし、システムや機器を刷新するのはハードルが高いのも事実。我々の提案は、既存のシステムを活かしたまま電源部分だけを再エネ由来にシフトしていくというアプローチです。電源だけの置き換えですから工事もシンプルですし、何より再エネを活用した産業装置になるため、主要電源が停電しても生産活動を維持できます。その意味でBCPにもつながります。今後普及するであろうEVとの接続など、可能性はまだまだ広がりますね。

岩谷氏:現在は『EZAシリーズ』のみですが、さらに様々なシステムに対応できるよう電源の種類を増やしていきます。DCグリッドを軸に『ACとの双方向なエネルギー連系』、『太陽光・風力の発電エネルギー連系』など、EZAシリーズ同様に、制御の自由度が高く、お客様(SIer)の使い勝手を追求した電源の開発を進めていきます。

 

TDKラムダ株式会社TDKラムダ株式会社
TEL:03-6778-1111
東京都中央区日本橋二丁目5番1号
日本橋髙島屋三井ビルディング
https://www.jp.lambda.tdk.com/ja/

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