PwC、企業の「脱炭素×新規事業創出」を伴走支援
2023年11月、エネルギーの専門性と多様な業界知見を併せ持つGX人材を集結させた横断組織がPwCコンサルティングに誕生した。大きく5つの注力領域でビジネス開発を支援するGXの専門チームだ。今回はその中でも「脱炭素ビジネス開発支援サービス」に注目し、サービス概要や実際のビジネス開発事例を紹介する。
多様な人材、組織の集合チーム
PwCコンサルティングに新たに設立されたグリーントランスフォーメーション(GX)専門の横断組織では、(1)水素・アンモニアビジネス支援 (2)脱炭素ビジネス開発伴走支援 (3)定置用蓄電池導入・事業化支援 (4)次世代エネルギー投資支援 (5)レギュレーションビジネス支援の5つの領域に注力したサービスを展開する。
GXコンサルティング責任者を務める同社パートナーの中谷 尚三氏は「エネルギー部門の専門性と、各産業界の知見・ノウハウを持ったプロフェッショナルが集結した集合体であることが、この組織の特長です」と話す。中谷氏自身は、コンサルティング会社に勤めて四半世紀以上。事業戦略、M&A、事業統合などを中心にエネルギー会社の支援も多く手がけてきた。
中谷氏とともに、5つの領域の中でも特に「脱炭素ビジネス開発伴走支援」を手がけるのが、ディレクターの赤坂祐太氏とマネージャーの細淵由佳氏だ。赤坂氏は前職の金融系シンクタンクで需要側のエネルギーマネジメントとCO2削減業務に携わり、PwCコンサルティングに移ってからは一貫してエネルギー業界を担当してきた。「脱炭素化やネットゼロが企業のCSR活動から経営課題としてクローズアップされており、企業からの相談も増えています」と赤坂氏。
一方、前職を含めコンサルティングファームで10年ほどのキャリアを持つ細淵氏は、戦略コンサルティング部門に所属し、企業の成長戦略や新規事業創出などストラテジーコンサルティングや実行支援を得意とする。
「脱炭素×新規事業創出に取り組む企業の支援をしたことがきっかけで、より多くの企業に取り組んでもらいたいと思い、GX専門チームのメンバーとして活動をしています」(細淵氏)
『脱炭素ビジネス』を一貫してサポート
菅政権の『2050年カーボンニュートラル宣言』以降、企業の脱炭素への取り組みが本格化している。脱炭素社会の実現に向けては、脱炭素を単なる規制ではなく『新たなビジネスを創出する機会』と捉え、新たな収入源の獲得や既存ビジネスの付加価値向上につなげていく視点が重要となる。
「事業として儲からなければ脱炭素の取り組みは続きません。新規事業の立ち上げだけでなく、その先の営業支援まで踏み込み、『脱炭素ビジネス』で売上が立つ、事業が立ち上がるまで伴走型の支援をしていきたいというのが我々の想いです」(中谷氏)
脱炭素ビジネスの市場は将来動向や顧客ニーズが不透明な部分が多いため、事業立ち上げにおける時間軸や収益性の見極めがポイントとなる。また、自社の有するアセットを踏まえ、最も強みを発揮できる領域を選定することも重要だ。参入の有望領域を評価した上で、規制・制度面等の実行性も考慮し、構想策定から伴走型営業支援まで、一貫したサポートを実施する。
「新規事業は、構想策定をしたものの、事業化に至らないケースが多々あります。特に脱炭素ビジネスは事業性の不透明さから、構想と事業化の間に高い壁があるように感じています。脱炭素やエネルギー領域の専門家だけでなく、新規事業立ち上げの知見・ノウハウを持ったメンバーが集まり、事業立ち上げに向けて伴走型で支援できることが、我々の強みの1つかと思います」(細淵氏)
「脱炭素、エネルギーも含めて専門的な知見が豊富で、有望領域の評価や参入への判断などの支援もクイックに提供できます」(赤坂氏)
支援する企業はベンチャーから大企業まで幅広い。近年は多様な企業が脱炭素に取り組んでおり、それぞれの強みを生かしながらビジネスを立ち上げるケースも出てきているという。
多様な産業の脱炭素ビジネスを支援
脱炭素市場には、15兆円規模になる伝統的な市場もあれば、1兆円に満たない新しい市場もある。参入検討に際しては、市場規模に加え、成長性をどう見るかが特に重要だ。
関西電力グループであるオプテージでは、豊富な実績のあるPwCコンサルティングへ脱炭素×ITの新規事業領域調査を依頼。現在は市場規模が小さく黎明期であるオフセット市場に将来的な可能性を見出し、同社の強みであるインフラビジネスとの親和性も高いWeb3×カーボンクレジット領域で新たな事業の検討・開発を進めている。
「脱炭素ビジネスを立ち上げるうえで難しいのが、企業自身、自分たちのニーズがよく分かっていないことです」と赤坂氏。
Scope3のどこを減らしたいのか、それはそもそもコスト削減なのか、収益化したいのか、要素分解が困難で市場の見立てが難しい。
「この要素の市場がどのくらいあるかという点を丁寧に解きほぐし、企業とディスカッションしながら『ここなら刺さる』という市場を見極めていきます」(赤坂氏)
JERAグループのネクセライズでは、新たな収入源を得るための新事業領域を模索するなか、PwCコンサルティングに支援を依頼した。
市場の成長性や同社の強みを発揮できる分野を検討し、ディスカッションを重ねた結果、新規事業領域を「防災・減災×脱炭素」と定め、事業に取り組んでいる。特に営業活動については、PwCコンサルティングが手厚く支援。資料作成からプレゼンテーションのシミュレーションまで、同社スタッフをサポートした。
「様々な産業の脱炭素新規事業をサポートし、事業化まで実現していく。その経験を、今後脱炭素市場に参入する企業にも還元していきたいです。また、一つひとつは個別企業の脱炭素新規事業に見えますが、いずれ、それらは繋がっていくと考えます。1プレイヤーでできることは限られています。将来的には、様々な脱炭素新規事業をつなぎ、産業間が連携して大きな事業が成立していく形を目指していきたいと思います」(中谷氏)
PwCコンサルティング合同会社
TEL 03-6257-0700(代表)
グリーントランスフォーメーション(GX)
ビジネス開発支援
https://www.pwc.com/jp/ja/industries/eu/green-transformation.html