建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)

建築物省エネ法とは、建築物におけるエネルギー消費量が著しく増加している状況を踏まえ、建物のエネルギー消費性能の向上を総合的に図るために制定された日本の法律。
2015年に公布され(平成27年法律第53号)、2022年の法改正により従来の題名から「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」へ改められた。エネルギー消費性能基準への適合義務といった規制措置と、性能向上計画認定や表示制度などの誘導措置を2大体系として規定している。
建築物省エネ法で定められる規制措置と誘導措置の基本体系
建築物省エネ法は、最低限満たすべき水準を課す「規制措置」と、自主的な高性能化を促す「誘導措置」の2つの柱で構築されている。規制措置における判断基準は、屋根・外壁・窓などの断熱・遮熱性能を測る「外皮基準」と、空調・換気・照明・給湯・昇降機といった設備の標準的なエネルギー消費量を評価する「一次エネルギー消費量基準」の2つからなる。
一方の誘導措置には、省エネ性能向上計画の認定制度があり、誘導基準に適合した建築物に対しては省エネ設備を設置する床面積の容積率不算入特例(最大10%)が付与される。さらに、販売・賃貸事業者が消費者に対して建物の環境性能を示す「省エネ性能表示制度」や、市町村が再エネ設備導入の促進を図る「建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度」、供給戸数の多い事業者を対象とした「住宅トップランナー制度」などが整備されている。
2025年全面適合義務化と2030年までの強化スケジュール
法制度は段階的に強化されてきた。2024年4月には不動産販売・賃貸事業者向けの省エネ性能ラベル表示が努力義務化され、建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度が施行された。次いで2025年4月からは、従来は届出や説明義務にとどまっていた小規模住宅や中規模建築物を含む、原則すべての新築住宅・非住宅建築物を対象に「省エネ基準適合」が全面義務化された。基準を満たさない建物は建築確認済証や検査済証が交付されず、着工や引き渡しが認められない。
さらに国は、2050年カーボンニュートラルや2030年度温室効果ガス46%削減目標の達成に向け、遅くとも2030年までに新築建築物の省エネ基準を「ZEH」や「ZEB」水準へと引き上げるロードマップを掲げている。一次エネルギー消費量の20%から40%削減の義務化や新築戸建住宅の6割への太陽光発電導入などが目指されており、上位住宅トップランナー制度などを定めた2027年4月施行の改正法に関する解説でも報じられている通り、大手供給事業者に対する目標計画・報告の義務化など、先を見据えた規制強化が順次進められている。
企業のファシリティ・建築実務における留意点
事業用不動産の新築や増改築を計画する企業のファシリティ担当者や開発実務者にとって、本法への対応は建設計画の根幹に関わる課題である。建築確認申請手続きの中で省エネ適合性審査が実施されるため、省エネ計算書の作成やチェック期間を見込んだ余裕のある設計工程の管理が不可欠となる。計算方法については、国立研究開発法人建築研究所のWEBプログラム等を用いる標準計算ルートか、簡易な仕様ルートかを基本設計の早期段階で見極める必要がある。
加えて、将来の基準引き上げに伴う資産価値低下を防ぎ、補助金活用や税制優遇を有利に進める観点からも、現行の最低基準にとどまらずZEHやZEB水準を先取りした仕様策定が推奨される。不動産取引や賃貸経営を行う場合は、広告時の省エネラベル表示対応など、営業・マーケティング部門と連動した情報開示体制の構築も求められる。
参考
- 国土交通省 ― 建築物省エネ法のページ
- e-Gov法令検索 ― 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律
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