重さ従来品の約1/2の超軽量モジュール PID減少を抑制し発電ロスを防止(2ページ目)

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PID現象を抑制し、出力99%維持

Leoflex®は化学強化処理によって製造される。化学強化とは、ガラスを硝酸カリウム溶液に浸すことで、ガラスの表面付近に含まれるNa+イオンを、よりイオン半径が大きいK+イオンと交換させることでガラス強度を増す製造法。

旭硝子株式会社 川野辺 毅氏
旭硝子株式会社
システムソリューションBU
軽量PV関連事業 グループリーダー
川野辺 毅氏

「K+イオンがガラス表面であたかもおしくらまんじゅうをしているかのような状態となり強度を増します。物理強化のような層が必要ない分、ガラスを薄くできるのです」(川野辺氏)。

化学強化ガラスは航空機やスマホなどにも使用されており、特別新しい技術ではないという。Leoflex®は、薄くて軽い、割れにくく、傷がつきにくいという特性を持つガラスだ。

Leoflex®の採用によって、Lightjoule™は、PID(Potential Induced Degradation)現象の抑制効果も得た。PID現象とは、高温高湿や高いシステム電圧の影響で太陽電池モジュールの電気出力低下が起こる現象だ。この抑制は、発電ロスの防止につながる。

発生原因はいくつかあるが、ガラス表面のNa+イオンの拡散がひとつの要因と考えられている。だがLightjoule™の表面にNa+イオンはほとんど存在しない。耐PID試験において出力低下が1%以下であることを確認している。出力維持への自信を、AGC旭硝子は「出力20年保証」という形にしている。

公共施設などでも補強なしで設置可能

工場や倉庫の屋根を利用して太陽光発電を行いたいというニーズは根強い。その一方で、屋根の強度が足りないため、太陽電池を設置出来ないケースも少なくない。それでも太陽光発電を導入しようとすると、建物を補強したり、モジュールの搭載枚数を計画より減らしたりせねばならず、コストや回収期間が膨れ上がる。

一方、超軽量のLightjoule™なら、これまで耐荷重が課題になっていた構造物でも設置の可能性が広がる。

例えば駅舎がそうだ。ある駅では通常の太陽電池モジュールを設置するために柱梁を補強している。阪神電車大石駅も同様に、補強が必要だったが超軽量のLightjoule™を採用したことによって、全く補強をすることなく太陽光発電を設置することができた。

阪神電車大石駅俯瞰写真
阪神電車 大石駅

カットできたのはコストだけではない。駅舎など公共施設の場合、工期はできるだけ短い方がいい。軽量なのでLightjoule™は施工性も良く、阪神電車大石駅が太陽光パネルの設置に要したのはわずか2カ月弱。補強工事をしていれば、それだけでかなりの期間がかかっただろう。

川野辺氏が今後力を入れていきたいと考えているのが、災害時に避難所となる学校の体育館への設置だ。学校と言えば校舎の屋上が思い浮かぶが、屋上は津波などの災害時に一番の避難場所となる。そこを太陽光パネルが埋め尽くしていては避難できない。また、災害後に避難所として体育館を使用する場合、校舎の屋上から体育館まで高圧ケーブルを引く必要がでてくる。

Lightjoule™なら耐荷重問題で設置が難しかった体育館の屋根への設置が可能だ。体育館にパネルを設置すれば、高圧ケーブルを引くコストもかからず電力ロスも少なくてすむ。危険な高圧ケーブルが校庭を横切ることもない。今後は災害時の非常用電源としての活用を自治体に働き掛けていく考えだ。

Lightjoule™の発売開始により、耐荷重の問題でこれまで設置できなかった、工場や倉庫への太陽光発電導入が一気に加速しそうだ。

旭硝子株式会社
〒100-8405 東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング
http://www.agc.com/products/glass/LWPV_module/?link_id=gw001


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