電力インフラを支えるパワコンの役割と可能性(2ページ目)

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求められる諸対策「電磁妨害」「騒音対策」「安全性」

パワコンが担う役割の重要性が高まる一方で、今後検討すべき問題や社会的要求に対して求められている課題・検証等も多々生じている。これらの要求に対して、設備別にポイントを絞って下記にまとめた。

はじめに、パワコンにおける課題とその対策について、主に次の3つが挙げられる。

(1)「EMC対策」

改めて、パワコンの大量分散設置による電磁妨害と電磁感受性における国際規格をきちんと理解することが重要である。それぞれ、工業地域で使用できるクラスAと住宅地で使用可能なクラスBという2つのレベルに基づき、技術基準を遵守することが求められる。

(2)「騒音対策」

空調機器音や動作音、スイッチング音などの対策が必要だ。特に日本では住居や商業地域に隣接した立地での大型発電所が多いため、EMC対策とともに設置環境に合わせた正しい製品を選択することが重要になる。

(3)「製品の安全対策」

これは当然のことであるが、安全対策の追求は今後も推し進めていく必要がある。長期使用による発煙・発火事故に加え、高温多湿、塩害、台風、粉塵など設置環境が厳しい日本であるがゆえ、設置環境に合わせた長期利用ガイドラインを設けるべきであると川上氏は主張する。続けて川上氏は、機械は壊れる可能性があるという視点から、メーカーはエンドユーザーに、製品の安全性について正しく情報発信していく必要性も訴えている。

鹿児島 70MW
鹿児島県は桜島付近に位置する70MWの太陽光発電所
SMA社のパワコンが導入されており、塩害や粉塵など厳しい環境下でも安定的に稼動をしている。

太陽光発電所に迫る「サイバー攻撃」

次に、分散型発電所の観点で2つの課題点を挙げる。

1つが、発電が停止する「ダウンタイム」の問題だ。このダウンタイムの解決法は、より厳しい設置環境に耐えられる製品開発に取り組むこと、また、故障時は復旧時間を最短化するアフターサービス網を構築すること等が求められている。いずれも、社会で再生可能エネルギーが信頼を得る発電源になるための大事なポイントになるであろう。

さらに川上氏は、無視できない課題の1つとして、「サイバー攻撃」について危険性を語る。「これからの太陽光発電普及のためには、発電所へのサイバー攻撃の対策が必須になるでしょう。外部からの制御が可能なパワコンは、裏を返せばサイバー攻撃の危険にさらされるということで、欧米でも盛んに議論されています。セキュリティレベルの高い専用回線を設けるなど、今後は、国家の重要な電力インフラを守るために業界全体で考えるべき問題でしょう。」

課題のリスト

また、海外と比較したときの技術指針・規格についても触れておきたい。 日本は海外と違い「絶縁抵抗値監視」という概念がない。本来、発電所の安全を保つためにはこのような監視措置の必要性は高く、海外では24時間365日モニターで監視している。川上氏はこれらの状況も踏まえて「今後は日本の太陽光発電所でも絶縁抵抗値の常時監視を取り入れることが、安全な発電を実現するためには重要になってくると考えています。」と監視体制を常備することの必要性を語る。

次ページ →ヨーロッパの経験から垣間見える、「パワコンの可能性」

※下記より講演資料のダウンロードができます。

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