電力インフラを支えるパワコンの役割と可能性(3ページ目)
ヨーロッパの経験から垣間見える、「パワコンの可能性」
パワコンで世界トップシェアを有するSMA。ドイツで1981年の創業以来培ってきた経験や知見を活かして、川上氏はパワコンが持つ可能性について下記のポイントを述べた。
●「系統周波数制御」の可能性
日本では、周波数を維持するために電力会社がバランスをとっているが、欧州では分散型発電所の力を借りて系統周波数のバランスを取ることが規格化されている。この規格が日本にも導入されるとさらに可能性が広がるのではないか。
●「夜間の力率調整」の可能性
大量の変圧器が各発電所に設置されているが、欧州では夜間にパワコンを動かして力率補正を実施しながら系統バランスをとり、無効電力の売買も行っている実績がある。近々日本でも必要になる仕組みであると考えられる。
●「連系点での力率調整」と「遠隔有効電力抑制」の可能性
発電所の増加に伴い、パワコン単体での力率制御から発電所全体を、連系点をターゲットにして制御することがこれからは必要になってくるのではないか。また、欧州ではパワコンの運転制御スイッチを送電会社が握り、いかなる時も制御できる仕組みになっている。電力需要や太陽光発電の予測に加えて、太陽光発電所のリアルタイム監視ができてはじめて正しい出力制御ができる。日本でもリアルタイム監視の仕組みをしっかり考えるべきである。
●「バッテリーと連動したエネルギーマネジメント」の可能性
パワコンだけではなく、バッテリーも使用しながら系統の安定化を図る取り組みは、社会的意義があることなので今後注力すべき技術ではないか。
以上、パワコンに備わっている機能や課題、可能性をいくつか紹介したが、SMAは、世界のトップメーカーとして、これからの日本の太陽光発電の更なる普及をサポートするうえで、最先端の製品を世に送り出し続けるという。次回はこのようなハイスペックなパワコンを製造しているMAのドイツ工場の様子を取材記事形式でレポートにまとめる。世の中の課題やニーズに対して、30年もの間応え続けてきたSMA。その歴史とノウハウの詰まった製造の現場を環境ビジネス編集部が視察した。次号も期待されたい。
(本記事では、同社サービスダイレクター兼テクニカルダイレクターの川上氏が「パワコンの機能や今後の可能性、社会背景を見据えた課題点」について再生可能エネルギー世界展示会の特設ステージで講演した内容をレポートでまとめています。フォーラムに参加できなかった方々向けに、当日の講演資料を無料でダウンロード頂けます。こちら、または文末からダウンロードが可能です。)
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