エネマネ事業者を活用し1/2補助金を受けた食品工場の省エネ取組
タカナシ乳業では北海道工場の省エネプロジェクトでアズビルをエネマネ事業者として活用、平成27−28年度の「エネ合補助金」で1/2の補助金を受け順調に成果を積み上げている。エネマネ事業者であるアズビルの強みは、特に複数年にまたがる大規模工場(年間原油換算エネルギー使用量1,500kl以上)案件で発揮される。経済産業省の「エネ合補助金」は今年度、採択率が4割を下回った。年々、採択のハードルが上がる中、アズビルは大規模工場における採択件数の高シェアを誇る。
『2018年度 エネ合補助金申請ノウハウ』資料を環境ビジネス限定で無料公開しています。こちら、もしくは文末より資料ダウンロードできます。
重油からガスへの燃料転換にEMSを活用し、1/2補助金を申請
2015年初め、タカナシ乳業では以前から懸案だった北海道工場(北海道厚岸郡浜中町)のボイラー更新および重油からLNG(液化天然ガス)への燃料転換事業の検討に入った。同年4月に釧路にLNG基地が運転開始することになり、LNGを調達する目途が付いたからだ。しかし、燃料転換のためには敷地内に自前でLNGのサテライト基地を建設しなければならず、投資コストがかさむ。そこで、急きょ省エネ事業を助成する「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金(エネ合補助金)」を活用する検討に入った。
早速3月中旬には、30年来、同社に制御機器・システムを納入してきたアズビルをエネマネ事業者に選定。目標とする削減量を見積り、対象設備や省エネ手法について議論を重ねながら、申請書の作成に着手した。補助率1/2で申請するためにはEMSおよび設備を用いた省エネで10%以上、そのうちEMSによる省エネ制御で1%以上(※)の省エネが必要だ
(※)27-28年度エネ合補助金の公募要領による。
全国の工場の設備関連事業を統括する本社技術部の菊地勇二部長は「ガスへの燃料転換は設備の効率改善を図るためとCO2削減により地球温暖化対策へ貢献するために温めていたテーマで、工場の設備更新の時期に合わせて行いました。エネ合補助金についてはアズビルを通じて情報収集していましたが、いざ申請作業に着手すると詳細な提出文書を作成するのに、相当の労力がかかりました。また通常は半年以上要するといわれる準備期間も数カ月しかなく、アズビルにアドバイスをいただき、現場の意見も取り入れながら、急ピッチで対応し、ようやく締め切り(7月中旬)に間に合わせました」と振り返る。
エネマネ事業者による蒸気圧の減圧制御の提案を採用し、省エネを達成
蒸気の省エネというと、排熱を回収しボイラーに供給する水の温度を上げ、ボイラー効率をあげる方式が一般的だ。北海道工場でもすでに取り組んでいたため、エネマネ事業者のアズビルが提案したのがEMS(Harmonas-DEO)導入による蒸気圧の減圧制御だった。
これは系統ごとに圧力を計測し、必要量までヘッダーの圧力を下げる方式であり、今まで取り組んだことがないものだ。北海道工場では蒸気の熱により、生乳の加熱や濃縮、脱脂粉乳の製造などを行っている。脱脂粉乳の製造工程では乾燥炉など熱利用が欠かせず、他の工場に比べ熱エネルギーの使用量が多い。蒸気はボイラーで作られ、ヘッダーを通してそれぞれの設備系統に送られる。従来も、例えば加熱処理など系統ごとに減圧し温度を調節する設備に供給していた。しかし、蒸気を送る配管は長い距離にわたって敷設されるため、放熱ロスが大きい。そこで系統に分岐する前の主管の大本に調節バルブを設置し、圧力・流量を自動制御し放熱量を抑えることで、省エネを図ることになった。
しかし、蒸気圧の減圧制御はインバータなどによる電気系の制御に比べ、技術的に難度が高い。例えば、圧力を0.1MPa下げれば、一律に何%かのエネルギーが削減できるというわけではない。設備系統ごとにどのくらいの圧力・流量が必要か。設備は年間、どのくらい稼働し、蒸気流量はどのくらいあるのか。管の口径は、管路は屋外か屋内か。蒸気の乾き度は、設備の状態や稼働状況、外的要因によって、削減量が変わってくるからだ。
エネマネ事業者には様々なデータを収集・勘案し、そこから設定圧を定め、削減量の数値を見極める技術・ノウハウが求められる。今回アズビルはこれまでの経験を生かし、「減圧制御の省エネ効果」を提案した。
「正直、提案いただいたときには減圧するだけで、そんなに省エネ効果があるのかと思いましたが、試算で根拠を示していただき驚きました。従来、我々の省エネの引き出しにない項目なので、おかげで省エネ手法の間口が広がりました」と菊地氏は称賛する。
- 1
- 2