『社内で紙を再生する技術』環境配慮型オフィスプロジェクト始動
SDGsが採択されてから4年が経過し、その考え方は多くの企業の事業活動のなかに取り入れられつつある。また、投資家もそれに呼応する形でESG投資を進めており、2018年の投資残高は世界で30兆ドルを超えているといわれる。
こうした流れを背景に、SDGsの最新動向や企業活動への導入に向けた取り組み事例を紹介するセミナー『SDGs経営の実践』を日本ビジネス出版が9月20日に開催した。当日は、事例紹介としてエプソン販売株式会社 総務部部長の関口 佳孝氏が登壇。同社のSDGsへの貢献に向けた取り組みについて解説した。
この記事で紹介している取り組み事例について、詳しい資料を公開しています。こちら、もしくは文末より資料ダウンロードできます。
4つのイノベーション通じSDGs経営を実践
1942年に創業されたセイコーエプソンは、長野県諏訪市に本社を置く。2018年度の連結売上高は1兆896億円で、うちプリンターに関わる事業がその7割を占める。
社長の碓井 稔氏が『SDGsへの貢献宣言』を発信するなど、グループ全体でSDGsにコミットしている同社は、(1)インクジェットイノベーション、(2)ビジュアルイノベーション、(3)ウェアラブルイノベーション、(4)ロボティクスイノベーションの4つのイノベーションを生み出すことで、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。
セイコーエプソン・エプソン販売 総務部部長の関口 佳孝氏は「私たちはメーカーですので、イノベーションを通じた製品製造・供給で、SDGsに貢献するのが基本です。当社のプロダクトをお客さまが利用されることで、オフィス環境がエコでサステナブルになるような取り組みを実践しています」と話す。
関口氏はセミナーで、このプロダクトを通じたSDGs経営の実践事例として(1)インクジェットプリンターと、(2)PaperLab(ペーパーラボ)の事例を紹介した。
インクジェットプリンターでオフィスが変わる
持続可能性の観点からみると、ビジネスシーンで使用するプリンターを『環境に優しいもの』に切り替えていくことが必要となるが、ここで力を発揮するのがインクジェットプリンターだ。トナーを紙に接触させて転写し熱と圧力で定着させるレーザープリンターに比べ、微細なインクを紙に噴射するだけの熱を使わないシンプルなインクジェットプリンターは、電力使用量や消耗品が少なく、その構造自体、環境負荷が低いものとなっている。
同社では、ビジネスユースプリンターのリリース当初から自らのオフィスにも製品を導入し、その効果を検証している。この事例も社内で検証済みだが、レーザー方式のプリンターをインクジェット方式のプリンターに置き換えることで、印刷コスト、電力使用量、廃棄物量の大幅削減が実現されたという。
例えばトナーインクひとつとっても、カラープリントを5万枚印刷するために、ビジネスインクジェットプリンターでは4色のインクパック×各1パックが必要であるのに対し、レーザー方式では計36本のトナーカートリッジが必要である。
こうした背景もあり、「レーザー式をインクジェットに置き換えたことで、印刷コスト30%、消費電力75%を削減でき、廃棄物量の65%低減を実現できました。加えてインク交換が少なくてすむため、交換工数も86%低減し、社員がインク交換に労力を費やす必要がなくなるといった、働き方改革にも貢献しています」。同社は、これまで社内の7割を占めていたレーザープリンターを置き換え、インクジェットプリンター設置率を9割にまで上げた。特に2017年からは、毎分100枚の印刷が可能な高速ラインインクジェット複合機(LX-10000F)の導入を進めてきた。
これは、インクジェットプリンターのイノベーションを通じてSDGs経営を実践した事例といえる。またオフィスや事業所にとっては、同社の開発した高機能のインクジェットプリンターを採用すること自体が、環境貢献につながるという好例ともいえるだろう。
紙の再利用で循環型オフィスを実現
2つめの事例である2016年にリリースしたPaperLab(ペーパーラボ)は、水をほとんど使わずオフィス内で印刷された文書を完全に抹消し、紙を再生できるシステムだ。
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