初期費用・維持管理費なし 『追加性』整合の再エネ電力とは?

  • 印刷
  • 共有

世界各地で次々と気候変動リスクが高まり、企業にとって脱炭素化は事業の継続・発展を考えるうえで不可欠な取り組みとなった。そのため、企業の再エネ由来電力の導入が加速化している。こうした状況を背景に、『収益につながる環境経営と再エネ電源調達の進め方』をテーマに、2019年11月22日、29日に開催された『環境ビジネスフォーラム』。22日の東京開催では、早くから再エネ電力のエネルギーサービスを手掛けるNTTファシリティーズの平形 直人氏が世界の再エネ電力導入の最新動向と先進事例について講演した。

NTTファシリティーズ ソリューション本部スマートエネルギー部 平形 直人氏

NTTファシリティーズ ソリューション本部スマートエネルギー部 平形 直人氏

再エネ電力を調達するには3つの選択肢がある

2019年、昨年に続き日本列島には大型台風が相次いで襲来。千葉県を中心とした大規模な停電や各地での河川氾濫等、甚大な被害が生じた。国土交通省の予測によると、今後も日本周辺の猛烈な台風の出現頻度は増加し、21世紀末の豪雨の発生件数は約2倍以上に増えるという。台風19号は企業経営にも大きな影響を与え、上場企業全体で損失額が約300億円に達するという推計もある。こうした災害による経済的損失は国内だけの話ではない。CDPレポートによれば、今後5年間で世界の大企業が直面する気候変動リスクは1兆ドルにも達する見込みというデータもある。

パリ協定の締結、ESG投資の拡大、そして前述のようにグローバル規模で気候変動リスクが顕在化するなか、企業には今まで以上に脱炭素化に向けた対策が求められている。気候変動対策が、企業活動の継続にも欠かせないものになっているからだ。

こうしたなか企業による再エネ電力導入が活発化している。国内でいち早く再エネ電力を提供するサービスを手掛けたNTTファシリティーズ。ソリューション本部スマートエネルギー部の平形 直人氏は、再エネ電力を調達するには3つの方法があると説明する。自ら再エネ発電設備を導入すること、再エネ証書を購入すること、小売電力事業者のグリーン電力を購入することだ。平形氏は、それぞれコストや事務負担等で違いがあり、事業所のロケーションや経済性などを考慮し、自社に適した方法を選択する必要があると述べる。下表がその概要だ。

図1

画像クリックで拡大

表を補足すると、自社で自家消費型太陽光発電設備を導入する場合、すなわち、自家発電・自家消費では、初期投資と管理費がかかり、設備の運用・管理を自社責任で行う必要がある。また、再エネ証書には Jクレジット、グリーン電力証書、非化石証書があるが、平形氏は「共通する課題としては、導入コストが高いことがあげられます。また、Jクレジットとグリーン電力証書に関しては流通量が少ないことが課題」とし、これらの点を考慮する必要性を指摘する。なお非化石証書に関しては従来、RE100に対応できるかどうかが議論されていたが、トラッキングが付与された再エネ指定電源であれば対応できることになった。

選択時に注意すべき、追加性(Additionality)とは?

さらに最新のトレンドとして「こうした再エネ電力の海外での調達方法をみると、例えばRE100アニュアルレポートによれば、REC(グリーン電力証書)購入から自家消費電源の導入を含め、自らが再エネ電力の導入に関わる傾向が加速している」(平形氏)という。

新たな再エネ電源の確保

新たな再エネ電源の確保
自ら再生可能エネルギーの導入に関わる傾向が加速

画像クリックで拡大

平形氏は、こうした動向を分析しながら、企業が再エネ電力を調達するうえでの注意点を2つあげる。一つ目は、国内だけでなく世界的にみても再エネ電力が不足しており、将来的にも不足する見通しが高いことだ。

「例えば現在でもRE100加盟企業の再エネ目標を満たすには、約3割程度再エネ電力が不足しているという報告があり、その傾向は今後強まると想定されている。もう少し安くなってから購入しようと考えている企業もいらっしゃると思うが、より品薄になる可能性もある」。

もう一点は国内ではあまり知られていないが、「再エネを選択する際に、追加性(Additionality)が重要になってきている」(平形氏)。追加性とは、再エネ電力や証書・クレジットの購入によって、新たな再エネ設備に対する投資を促す効果があることを意味する。つまり再エネにランク付けする動きであり、リーディングカンパニーでは追加性のある再エネを選択、調達する方針にシフトする傾向にある。なお、RE100ではまだ言及されていないが、Amazonなどが加盟する『CORPORATE RENEWABLE ENERGY BUYERS’ PRINCIPLES』(78社加盟 2019年7月時点)では、追加性の考え方を取り入れているという。

平形氏は「今後、せっかく調達した再エネ由来の電力が追加性がないと判断され、再エネを利用したと認められないという事態もありえる。こうした再エネの要件についても今後は注目しておく必要がある」と注意を促す。

【NTTファシリティーズの資料ダウンロードはこちら】
ダウンロードはこちら

次ページ →初期費用・意地管理費なし、「追加性」整合の再エネ電力導入

この記事にリアクションして1ポイント!(※300ポイントで有料記事が1本読めます)