業務効率と環境保全を両立 エプソンが全社で取り組む施策とは?(2ページ目)

  • 印刷
  • 共有

セイコーエプソン株式会社エプソン販売株式会社 総務部 部長 関口佳孝氏

セイコーエプソン株式会社/エプソン販売株式会社
総務部 部長 関口 佳孝氏

高速ラインインクジェット複合機/プリンターは、印字プロセスに熱を使わない、エプソン独自の「Heat-Free Technology」を採用。これにより、高速・高画質印刷を低消費電力で実現。同グループでは、2014年から事業所内のレーザープリンターを順次インクジェットプリンターに換えており、現在、その設置率は約90%となっている。セイコーエプソン株式会社/エプソン販売株式会社 総務部 部長 関口 佳孝氏は「インクジェットプリンターへの置き換えによって、印刷コスト約35%、消費電力80%、使用済みトナーカートリッジや交換部品などのプラスチックゴミの廃棄量75%の削減を実現しています」と説明する。

さらに、水をほとんど使わず使用済の紙から新たな紙を再生できるPaperLabを設置することで、オフィスの中で紙を循環するしくみを構築。PaperLabを導入した事業所のうち長野本社では、社内で使用する紙のうち44%がオフィス内で作られた再生紙。アンケートで見たように多くの企業で難しいとされる、紙の削減を実現しているのだ。

PaperLabは、機密文書を社内から一歩も外に出すことなく処理できるという利点も大きい。環境配慮型オフィスセンターが開設された事業所では、専用の鍵付回収ボックスを社内に配置。分別回収してセンターに持ち込み、機密情報を保持したうえで再利用につなげている。

「セイコーエプソングループでは、2019年度末までに、長野県を中心に19台のPaperLabを設置し、グループで使う紙はすべて循環させるよう、プロジェクトを進めています」(関口氏)。

当事者意識を持って『環境型社会』をつくる

「私どもはメーカーですので、『良い製品を開発しますのでご購入ください』となりがちですが、自らの製品を社内で活用することで実績を出し、説得力のある環境活動を発信していきたいと考えています」と関口氏。

『エコプロ2019』のエプソンブース。『環境配慮型オフィス』がテーマで、ミニセミナーも開催された。ブースの外まで人があふれるほど多くの参加者が聴講。

『エコプロ2019』のエプソンブース『環境配慮型オフィス』がテーマで、ミニセミナーも開催された
ブースの外まで人があふれるほど多くの参加者が聴講

セミナー後には、 PaperLab実機の周りに人だかりができた

セミナー後には、 PaperLab実機の周りに人だかりができた

高速インクジェット複合機/プリンター。すでに事業所内の約90%が、コストだけでなく消費電力、CO2・プラスチック削減にも寄与する、このインクジェットプリンターに置き換わっている。印刷コスト約35%、消費電力80%、使用済みトナーカートリッジや交換部品などのプラスチックゴミの廃棄量75%の削減を実現

高速インクジェット複合機/プリンター。すでに事業所内の約90%が、コストだけでなく消費電力、CO2・プラスチック削減にも寄与する、このインクジェットプリンターに置き換わっている。印刷コスト約35%、消費電力80%、使用済みトナーカートリッジや交換部品などのプラスチックゴミの廃棄量75%の削減を実現

『環境配慮型オフィスプロジェクト』を構築するためには、高速インクジェット複合機/プリンターとPaperLabを設置するだけではなく、前述のような紙の仕分け、回収といったシステムを構築する必要がある。とりわけ、使用後の紙の仕分けは、ステープルを外したり、カラーとモノクロを分けて回収箱に入れたりするなど、社員一人ひとりの意識が重要だ。

「このPaperLabを世に広めようというのが全社の方針です。まずは、自分たちが環境型社会を作る当事者であるという意識を持つことで、紙の循環システムを作りあげてきました。単なるプロダクトアウトだけでなく、我々自身が『環境配慮型オフィス』のひとつのかたちを見せることで、取り組みを広めていきたい」と関口氏は語る。

PaperLab開発の原点も、プリンターを製造し、販売する会社として、紙の使用は不可欠ではあるものの、大量破棄されることへのためらいであったという。

『環境配慮型オフィスプロジェクト』は、紙の使用が不可欠なビジネスシーンに合わせ、物理的・心理的に無理なく、着手できることから取り組める、環境経営の実践例といえるだろう。関口氏は「プロジェクトが広く浸透し、紙の再生が当たり前になる社会が来ることを強く望んでいます」と今後の展望を述べた。

エプソン販売株式会社
https://www.epson.jp/

この記事にリアクションして1ポイント!(※300ポイントで有料記事が1本読めます)