企業と環境省がタッグを組み、地球環境問題・地域課題を同時に解決

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環境省では、石油石炭税や電源開発促進税を財源として、エネルギー特別会計を計上し、低炭素や再エネ開発・利用促進など様々なプロジェクトを支援している。こうした活動が「環境対策」にとどまらず「地域の課題解決」にもつながっていることは、企業にとって大きなメリットとなっている。今回はプラスチックごみ問題を切り口に成果を上げている事例を紹介したい。

海洋プラスチック問題などの環境問題解決に、エネルギー対策特別会計補助事業を活用

2017年12月に中国がプラスチックごみをはじめとした廃棄物の輸入を禁止したことを皮切りに、廃棄物を輸入してきた国々が輸入規制を表明。日本をはじめ先進国にプラスチックごみが滞留する事態が発生した。日本でも、処理が追いつかないプラスチックごみが山積みとなり、さらに処理価格も高騰するといった状況が生じている。一方で、海に流出するプラスチックごみも大量にあり、このままいくと2050年にはプラスチックが魚の量を超えるとさえ言われている。そのような中、昨年5月、政府は『プラスチック資源循環戦略』を策定。

環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室長 冨安氏
環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室長 冨安氏

同戦略について、「基本原則は『3R+リニューアブル』としました。これは3Rに加えてリニューアブルを加えることで、持続可能な資源に置き換えていくというメッセージを込めています。具体的にいうと、まずプラスチックの使用を合理化して無駄に使われる資源を徹底的に減らします。そしてプラスチック製容器包装・製品の原料を紙やバイオプラなどの再生可能資源に切り替えていきます。さらに、プラスチック製品をできるだけ長く使用しつつ、使用後は徹底的に分別回収し、循環利用をしていく、という考え方です」と語るのが、環境省 環境再生・資源循環局総務課 リサイクル推進室長 冨安氏。『プラスチック資源循環戦略』では、リデュース等の徹底、効果的・効率的で持続可能なリサイクル、再生材・バイオプラスチックの利用促進、海洋プラスチック対策などが盛り込まれている。

同省のエネ特事業では、このような地球環境問題を企業や地域の課題と同時解決する取組についても支援を展開している。

自己完結型リサイクルシステムを構築し、地域社会への貢献も実現

環境省では、中国をはじめアジア全体に拡大する廃プラスチックの禁輸措置への対応などを踏まえ、我が国のプラスチック資源が適正かつ安定的に循環されるよう、国内における省CO2型プラスチックリサイクル設備の整備を支援している。そのような中で、富山県富山市でリサイクル事業や産業廃棄物処理事業を営む株式会社富山環境整備では、地域に根差しながら自社の敷地内でリサイクル処理を行うことができる『自己完結型リサイクルシステム』を構築。「プラスチックリサイクルの重要性と必要性が社会的に一層高まる中、事業として十分にチャンスがあると判断し、自社で原料化し製品まで作り上げる、プラスチックのリサイクルシステムを導入しました」と富山環境整備 専務取締役 石﨑 勝嘉氏は語る。

下記は環境省のプロジェクトのエネ特活用事例を紹介した動画サイト「ミライアイズ」。この中に富山環境整備の事例も掲載されており、リサイクルシステムの構築と補助金の活用などを考えている企業にとって参考となるかもしれない。

「自己完結型リサイクルシステム」の取り組み
「自己完結型リサイクルシステム」の取り組み(環境省「ミライアイズ」より)
※画像をクリックすると別ウインドウで動画が再生されます。
富山環境整備の全景
富山環境整備の全景

同社は、このシステムを構築する際、エネルギー対策特別会計補助事業である『省CO2型リサイクル等高度化設備導入促進事業』を活用。光学選別機などを導入し、CO2排出を低減しつつ、リサイクル製品の品質向上と製造コスト削減を実現したという。

また、このシステムでどうしても処理しきれないものは、自家発電焼却設備で熱と電気を生み出す原料として使用される。特筆すべきは、この熱と電気の一部を利用し、ハウスでの農作物の試験栽培などに利用されているということだ。ミライアイズの中でも紹介されているが、パートを含め約100名が花卉や野菜の栽培に従事し、ICTの導入や徹底したマニュアル管理、作業の標準化などにより、これまで農業に携わったことがない近隣の方々をはじめ、ベトナムなどの海外人材、障がい者雇用なども実現しているという。「地域の皆様や地元自治体からも、担い手不足で農業が衰退していく中、こうして新しい形でまた農業を盛り上げていく取り組みに対して大変ありがたいという言葉をいただいております」と石﨑氏がうれしそうに語っていたのが印象的だった。

【プラスチック関連以外にも、補助金を利用したエネ特活用事例が動画サイト
「ミライアイズ」で紹介されている】
詳細はこちら

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