企業と環境省がタッグを組み、地球環境問題・地域課題を同時に解決(2ページ目)

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プラスチックの原料をセルロースに置き換え、海洋プラスチックごみ問題の解決に貢献

昨年のG20でも大きな話題になった海洋プラスチックごみ問題。特に厄介とされているのが、マイクロプラスチック問題だ。ここにもエネ特の後押しを受けて、環境問題と社会課題の同時解決を目指す動きがある。

マイクロプラスチックとは、洗顔料のいわゆるスクラブ剤や化粧品、工業用研磨剤などに使用されている小さなビーズ状のプラスチック原料やもともとは大きなプラスチック製品だったものが紫外線などの外的要因により、劣化・崩壊して小さな細片状(5mm以下)になったものである。洗顔料や化粧品の場合、下水処理で回収されずに海に流出したマイクロビーズは、動物プランクトンが誤飲してしまうため食物連鎖によって上位捕食者に蓄積されてしまうおそれも指摘されている。これらのマイクロプラスチックは毎年大量に地球環境を汚染しており、使用を禁止するか、原料そのものを変える以外、流出を止める手立てはない。

「GPI(ゼネラル・パッケージング・インダストリー)を標榜するレンゴー株式会社は、紙と同じ木材パルプを使用した原料を使って、この問題を根本的に解決しようと考えている。同社では「プラスチック代替プロジェクト」を展開し、今まで樹脂フィルムで製造していたものを生分解するセロファンや紙などのセルロースで代替する研究を行っている。また、ビーズ状のプラスチック製品に対しては、セルロースをミクロサイズに加工した「セルロースビーズ」を開発。任意に大きさを変えることもでき、マイクロプラスチックの代替素材になるという。「セルロースビーズ」は海洋生分解性があり人体にも影響がない。そのため、洗顔や歯磨き粉のスクラブ剤としても安心して利用でき、下水を通って河川や海に流出しても最終的には水と二酸化炭素に分解される。

「環境省の補助事業である『脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業』を利用して開発を進めました。開発技術の量産レベルでの再現性や今後の市場可能性など予想がしづらい部分も多く本格的な開発に慎重でしたが、補助事業ができたことにより思い切って踏み込むことができました」とレンゴー 中央研究所 研究企画部 田嶋 宏邦氏。同社は、木材パルプを原料としたセルロース(セロファン)事業を始めて85年の歴史を持ち、「海洋プラスチックごみ問題など、社会的な課題が世界でクローズアップされる中、プラスチックに代替可能なセルロース製品の開発は弊社の社会的責任と考えており、今後も取り組んでいきたい」と企業の社会的意義を語ってくれた。

同社の取組は、下記の動画に収録されており、脱プラ技術の開発や製品化などをどう進められたのかがシンプルに紹介されている。補助金を利用したい企業などは、非常に参考になるだろう。

株式会社富山環境整備の「自己完結型リサイクルシステム」の取り組み
レンゴー株式会社の脱プラスチックに対する取り組み(環境省「ミライアイズ」より)
※画像をクリックすると別ウインドウで動画が再生されます。
セルロースビーズ
セルロースビーズ

画像クリックで拡大

社会実装に向けて、環境省として様々なバックアップを用意

『プラスチック資源循環戦略』を推進する中で、環境省は、前述した「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」や「省CO2型リサイクル等高度化設備導入促進事業」などの予算を盛り込み、企業などをサポートしている。「脱炭素社会を支える~」は、CO2排出を削減しつつ従来の化石由来プラスチックを代替する再生可能資源由来素材の転換を促すための社会実装事業のことで、省CO2型生産インフラの整備や技術実証を強力に支援する事業だ。令和元年度は新規予算として35億円を計上。「海洋プラスチックごみ問題などにしっかり対応するため、新規予算としてこれだけ多額の予算が計上されました」と冨安氏。

また、「省CO2型リサイクル等~」は平成30年度の二次補正予算では60億円の予算が、令和元年度は33億円の予算が計上されるとともに、令和2年度の予算案では43億円を計上している。同氏によれば、「アジア各国の廃プラ輸入規制のほか、来年1月より、汚れたプラスチックもバーゼル条約の規制対象になるため、今後国内に滞留する廃プラスチックの量が増加する可能性もあります。そのような中で、同事業を企業の方々に利用いただくことで、国内のプラスチック資源循環体制の構築につながります」とのことで、今後もさらなる対応が求められる状況にある。

昨年のG20で環境省は、プラスチック代替素材の開発や代替品の利用、使用量の削減やリサイクル、研究等の分野における、我が国の優れた技術・システム・アイデアの事例をとりまとめ、原田環境大臣(当時)自らG20各国に紹介した。同省は現在の状況をむしろチャンスと捉え、『プラスチック資源循環戦略』の下、予算措置も活用しながら、日本の取組を世界へ広げていこうとしている。「企業の方にはぜひ、補助事業などをご活用いただきながら、プラスチック問題の解決に取り組んでほしいと思います」と冨安氏は語った。

【プラスチック関連以外にも、補助金を利用したエネ特活用事例が動画サイト
「ミライアイズ」で紹介されている】
詳細はこちら
環境省
〒100-8975
東京都千代田区霞が関1-2-2


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