「気候変動×防災」を実践するZEB-気候変動と防災をセットで考える-
ZEBというと、これまで環境対応の建築物のイメージが強かった。しかし、昨年(2019年)の大災害やそれに伴う混乱などを目の当たりにした現代社会において、今や気候変動対策は防災・災害対応という観点とセットで考える時代となっている。この社会的気運に応える形で環境省は「レジリエンス強化型ZEB支援事業」を展開するなど、まさに平時では低炭素、災害時には防災設備として活用できる施設を増やし、気候変動対策を進めながら、災害にも強い日本を創ろうとしている。その取り組みについてインタビューを行った。
面と点で攻める『防災に強いまちづくり』
環境省では、自然災害などによる激甚な被害に備え、〈気候変動〉×〈防災〉をテーマに、レジリエンス強化に主眼を置いた取り組みを民間・自治体問わず支援している。
「気候変動対策は、温室効果ガスを減らす〈緩和〉と、ある程度起こってしまう悪影響に対する〈適応〉の両輪で考えていく必要があります」と話すのは、環境省・地球温暖化対策課の多田 悠人氏。
〈緩和〉は災害の規模を小さくする意味で、悪影響に対する〈適応〉は防災という意味で、どちらも非常に重要だ。これを両輪で実践した取り組みとして、千葉県睦沢町の『むつざわスマートウェルネスタウン』の事例が面白い。道の駅と地域優良賃貸住宅を一体としたエリアで、太陽光発電設備、太陽熱利用設備などの地産資源を活用した自立・分散型エネルギーシステムを構築しているのが特徴だ。(環境省:『民間事業者による分散型エネルギーシステム構築支援事業』を利用)。
通常のシステムと比較し20%以上のCO2削減効果を得られるだけでなく、災害時に自立運転が可能となっている。実際に昨年の台風15号では、そのパフォーマンスを遺憾なく発揮したという。周辺一帯が停電した際にもエリア内では電力や熱の供給が途絶えず、周辺住民へ携帯の充電スペースやシャワー、トイレなどを無料提供し、エネルギー自給エリアとしての役割を果たした。
- 1
- 2