「気候変動×防災」を実践するZEB-気候変動と防災をセットで考える-(2ページ目)

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気候変動対策とレジリエンスの親和性

防災・レジリエンスを点で支えていくために環境省が力を入れているのがレジリエンス強化型ZEBなどへの支援だ。環境省は令和元年度の補正予算で、『激甚化する災害に対応した災害時活動拠点施設等の強靱化促進事業』として1,000百万円を計上、また、令和2年度の当初予算案(『建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業』)では新しいメニューを追加するなど、肝いりで進めている。災害対応の観点から、被災時にも必要なエネルギーを供給できる機能を強化した業務用施設におけるZEBと、新築集合住宅におけるZEH-Mを支援する。

建物に対し、使用電力を50%省エネし、太陽光などで創り出した再生可能エネルギーをオンすることで、実質的な使用エネルギーをゼロに近づける事を目的とするZEB。環境省・地球温暖化対策課の市川 善浩氏は「建物自体の省エネと創エネをしていくこと自体、建物の自立化につながります。外部からのエネルギーが途絶したとしても、建物が単体で自活していけるという意味で、ZEBはレジリエンスという観点で非常に親和性が高いと言えます」と話す。

2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、北海道全域の停電(ブラックアウト)が大きな問題となった。この裏で「日本初のブラックアウトを耐え抜いたビル」として話題になったアリガプランニングのビルをご存知だろうか。環境省の『平成29年度 ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業』を活用して北海道初の『ZEB』を達成したビルだ。

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電力供給がストップする中で、太陽光発電や蓄電池、各種省エネ設備の活用によりブラックアウトをなんなく耐え抜いたという。

「災害自体が、これまでの常識では想定できない規模になってきており、被害は今後、どんどん深刻化していくでしょう。平時は太陽光パネルと蓄電池で脱炭素に貢献し、災害時にはレジリエンスを高いレベルで発揮していくような建物の必要性が、今後より高まっていくと考えています」(市川氏)。

環境省は令和元年度補正予算で、『レジリエンス強化型ZEB支援事業』(令和2年度当初予算案では『レジリエンス強化型ZEB実証事業』)として、公共性の高い業務施設などで、再生可能エネルギー設備、未利用エネルギー活用設備、蓄電池などを導入し、停電や水害発生時にも安定的に必要なエネルギーを供給できる機能を強化したZEBを支援。さらに、『レジリエンス強化型ZEH-M支援事業』(令和2年度当初予算案では『集合住宅におけるZEH-M化促進事業』)として、停電時にもエネルギー供給のできる先駆的なZEH(ZEH-M)となる住宅を新築するモデル事業を支援する。

地方公共団体だけでなく、民間事業者や団体も補助対象となり、老人福祉施設など、災害時に避難所や供給拠点として機能を果たす施設などでの活用を進めていく。

100年に一度の大災害が日本のどこかで毎年発生するようになっている。このような中で、気候変動に加え、防災やレジリエンス対応といったキーワードは、自治体や企業にとって不可欠なものになってくるだろう。それは従業員や株主、顧客、地域の方々をはじめとしたステークホルダーにとっての安心安全にもつながり、大きな強みにもなる。ぜひ、補助金などを活用して、ZEBにチャレンジするなど攻めの姿勢で持続可能な社会を実現してほしい。

【再エネ・省エネ設備導入の補助・委託事業は環境省の「エネルギー対策特別会計ポータルサイト(エネ特ポータル)」でも紹介されている】
詳細はこちら
環境省
〒100-8975
東京都千代田区霞が関1-2-2


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