洋上風力発電事業の高収益化を国内気象の専門家が支援

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日本特有の自然条件(地形・気象・海象)のなかで、高い精度が要求される『風況解析』。国内の風力発電プロジェクトで数々の実績をあげ、洋上風力発電に関わる風況調査から気象海象に関するコンサルティングを発電事業者に提供する日本気象株式会社に、国内の洋上風力発電開発にともなう、その重要性を聞いた。

日本気象株式会社(大阪府大阪市)は、欧州における最新の観測技術や解析技術を活用した高精度のデータ支援で、洋上風力発電事業者の事業性評価をサポートしている。国内の数々の風力発電プロジェクトに加わった実績を活かし、風況調査、気象海象予報、シミュレーション技術等で培ったノウハウをベースに、発電事業者へ調査から事業開始まで、一連の事業コンサルティングを行っており、当分野のリーディングカンパニーとして日本の洋上風力発電事業を支えている。

デンマーク ウインドファーム

デンマーク ウインドファーム
日本気象は2016年よりデンマーク工科大学内にオフィスを構え、欧州における最新技術や情報の収集を行っている。18年には、英国スコットランドに本社を構える世界的な再生可能エネルギーコンサルティング企業であるWoodGroupと業務提携し、欧州の幅広い再エネ事業の先進的な技術を国内に導入しサービスを行ってきている(写真提供:日本気象株式会社)

高精度な実測・解析で事業性を評価

国内では沿岸沖合における洋上風力発電の建設工事は前例がないなかで、信頼性の高い風況予測データへの期待は高い。

再エネの『主力電源化』のためには、事業性の観点から、長期にわたって低廉で安定した電力を生み出す、収益性の高い洋上風力発電であることが必須である。

荒木 龍蔵氏 日本気象株式会社 環境・エネルギー部 再生可能エネルギー課 技術フェロー/課長 博士(理学)
荒木 龍蔵 氏
日本気象株式会社
環境・エネルギー部
再生可能エネルギー課
技術フェロー/課長
博士(理学)

「洋上風力発電の開発海域では、発電事業者は事業計画の検討段階から、洋上の風速、風向等の風況特性を詳細に実測、把握し、事業の可否を検討する分析データを取得します。設計に関わる極値風速等までをより正確に推定することは、経済性検討、地域住民との調整等と同様に、不可欠です。風力発電の発電量は風速の3乗に比例するため、0.1m/sの風速の予測誤差が大きな発電量差となります。事業計画段階での風の予測には、必ず誤差が生じるわけですが、数%でも減らすことができれば、高精度で事業性を評価できます。

風況の精度を上げることは、発電量を上げることができるとともに、安全性を損なわずにコストパフォーマンスの良い風車を、設計、運用、配置することにもつながるのです。

洋上風力発電事業は大きく分けて、事前調査、設置、試運転、運用、撤去の各フェーズがあります。作業船やSEP船等は運行経費が非常に高額になるために、海域の波浪、風速等の影響を受け運行計画が変更になることは避けたいものです。高精度の気象海象予測をもとに作業可能な時間を最大限活用することにより、洋上風車の設置に要する期間を短縮することが、洋上風力発電の採算性向上にはきわめて重要なのです。

高度な気象海象予報データの提供によって、工事やメンテナンスの工程遅延リスクを軽減し、全体コストの削減を実現できることは、発電事業者にとって優先される重要事項になります」と、荒木 龍蔵氏は、風況、波浪等の気象海象観測データが洋上風力発電事業の利益率を大きく左右することの重要性を説く。

上記のように、海上風や波浪等の実測調査データは、洋上風力発電施設海域の決定、事業化の検討、設計、建設、維持管理、撤去に至るまで、多大な便益を及ぼす。しかし、候補海域は地形が複雑で水深があり、欧州に比べ洋上観測タワーを設置し、実測・収集するには、制約が高く難工事になるために、大きなコストがかかる。

そこで同社では、リモートセンシング技術を導入し、風況調査、実測データを取り込んだシミュレーション、予測を開発。洋上観測タワーを立てることに比べ、10億円規模の経費削減を実現している。

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