MaaS

MaaS(マース)とは、「Mobility as a Service」の略で、出発地から目的地までの移動ニーズに対し、複数の公共交通や移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括して提供する概念のこと。
単なるスマートフォンの統合アプリにとどまらず、人口減少や運転手不足に伴う交通空白の解消、さらには脱炭素化(交通GX)に資する社会インフラとして進化を続けている。
「MaaS」概念の拡張と法制度に基づく「地域交通のリ・デザイン」
MaaSは当初、ICTを活用して鉄道やバス、タクシーなどの経路検索・予約・キャッシュレス決済を一元化するサービスとして注目された。しかし現在では、AIオンデマンド交通や自動運転車、シェアサイクル、特定小型原動機付自転車などの多様な移動手段を統合し、まちづくりや医療・福祉、商業と結びついた地域課題解決の基盤として位置づけが拡大している。
政策面では、2023年10月に全面施行された改正地域公共交通活性化再生法において、自治体や交通事業者が連携して交通ネットワークを再構築する「地域交通のリ・デザイン」が推進されている。MaaSなどのデジタル技術は、地域公共交通計画の中核的な手段として法的に位置づけられた。また、2024年4月からはタクシー事業者が運行管理を担う日本版ライドシェアの運行が開始されたほか、過疎地等における公共ライドシェア(自家用有償旅客運送)の制度拡充も行われ、これらラストワンマイルの担い手をMaaS基盤上で管理・配車する環境が整いつつある。
さらに、政府のモビリティ・ロードマップに基づき、無人自動運転移動サービス(レベル4)の社会実装を2025年度までに50カ所以上、2027年度までに100カ所以上で実現する目標が掲げられており、MaaS基盤への自動運転技術の組み込みも進められている。
脱炭素(交通GX)と連携する「グリーンMaaS」
運輸部門の温室効果ガス排出削減に向けて、環境施策と連動した「グリーンMaaS」の導入が加速している。EVバスや超小型モビリティ、グリーンスローモビリティ(低速電動車)の導入と充電・エネルギーマネジメントを一元的に管理する取り組みのほか、マイカーから公共交通や低炭素モビリティへのモーダルシフトを促す施策が展開されている。
利用者の行動変容を促すため、移動に伴うCO2排出削減量をアプリ上で可視化し、削減量に応じて商業施設や地域で利用可能な環境ポイントを付与する仕組みも登場している。これは企業のサプライチェーン排出量(Scope 3)における通勤・出張領域の可視化や削減対策としても活用が期待されている。
こうした移動の最適化や効率的な運行計画を支えるデータ基盤の整備も活発化しており、ゼンリンとESRIジャパンが合意したGISと交通ネットワークデータを連携させる新サービス開発のように、民間企業による分析プラットフォームの構築がMaaSや物流の脱炭素化を後押ししている。
社会実装に向けた実務上の課題と事業モデル
実務面におけるMaaSの社会実装では、システムの開発手法と持続可能な事業採算性の確保が焦点となっている。かつて主流だった高コストな専用ネイティブアプリの開発から、ユーザーの利用ハードルが低いLINE公式アカウント(ミニアプリ)やWebブラウザベースのサービスを採用する自治体や事業者が主流になりつつある。
また、運賃収入やシステム手数料のみで維持費を賄うことは困難であるため、地域の商業施設・医療機関とのタイアップや送迎協業、まちづくりや脱炭素関連の公的補助金などを複合的に組み合わせた費用・収益分担モデルの構築が求められている。
参考
- 国土交通省 ― 日本版MaaSの推進
- 国土交通省 ― 地域公共交通の「リ・デザイン」
- デジタル庁 ― モビリティ・ロードマップ
注目情報(PR)
この記事にリアクションして1ポイント!
(※KAIGI ID登録でポイントを貯められます)













