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最終更新日:2026年10月01日

CDR(二酸化炭素除去)

環境ビジネス編集部
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CDR(Carbon Dioxide Removal:二酸化炭素除去)とは、人為的な取り組みによって大気中の二酸化炭素(CO2)を回収・除去し、地中、陸域、海洋、または耐久性の高い製品等に長期間にわたり恒久的に隔離・貯留する技術や活動の総称である。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書でも定義されており、自社の排出削減努力を行ってもなお残る「残余排出量」を中和し、ネットゼロや大気中の温室効果ガスを正味で減らすカーボンネガティブを達成するための必須手段として世界的に重要視されている。

排出回避(CCS)との本質的な違い

脱炭素分野で広く知られるCCS(炭素回収・貯留)とCDRは、二酸化炭素を回収・隔離する点では共通するが、対象とする炭素の由来と気候変動対策上の役割が本質的に異なる。

従来のCCSは、化石燃料を使用する発電所や産業プラントなどの特定の排出源において、大気中に放出される直前の排ガスから高濃度の二酸化炭素を分離・回収して地下等に貯留する技術である。これは新たな二酸化炭素の大気放出を防ぐ「排出回避・削減」に位置づけられる。

これに対してCDRは、すでに大気中に希薄に拡散・滞留している二酸化炭素そのものを直接的または間接的に取り除き、大気中の二酸化炭素総量を純減させる「除去(ネガティブエミッション)」を目的とする。このため、国際的な算定基準やクレジット市場において両者は明確に区別して扱われる。

CDRの主要な手法と分類

CDRのアプローチは、生物の光合成や自然生態系の炭素循環を活用する「自然ベース(Nature-based)」と、化学工学や産業プロセスを組み合わせた「工学・ハイブリッド型(Engineered / Hybrid)」に大きく二分される。

それぞれ炭素の固定期間(永続性)、単位あたりの導入コスト、実現可能な回収規模などに特性があり、実務上のポートフォリオ構築ではバランスが重視される。

分類 主な手法 メカニズムと固定の特徴
自然ベース 植林・再植林・森林管理 樹木の光合成により大気中の二酸化炭素をバイオマスとして固定する。比較的低コストで生物多様性保全にも寄与する。
自然ベース ブルーカーボン マングローブ、塩性湿地、海草・海藻藻場などの沿岸・海洋生態系を通じて海底堆積物等に炭素を隔離する。
自然ベース 土壌炭素貯留 不耕起栽培や被覆作物の導入など農地管理の改善により、土壌中の有機炭素含有量を高めて留める。
工学・ハイブリッド型 バイオ炭(Biochar) 剪定枝や農業残渣などのバイオマスを酸素遮断下で熱分解して炭化させ、農地施用や建材原料として数百年単位で固定する。
工学・ハイブリッド型 DACCS(直接空気回収・貯留) 専用プラントで大気から直接二酸化炭素を化学吸着・分離回収し、地下深部の帯水層や玄武岩層に圧入して鉱物化・恒久貯留する。
工学・ハイブリッド型 BECCS(バイオエネルギー+CCS) バイオマス発電やバイオ燃料の製造過程で生じる二酸化炭素を回収し、地中深くに恒久貯留する。
工学・ハイブリッド型 風化促進(ERW) ケイ酸塩や玄武岩などの微粉末を土壌や海洋に散布し、自然の風化プロセスを化学的に加速させて重炭酸塩等として長期間固定する。

国際的な制度動向と日本の政策展開

IPCC AR6のシナリオ分析では、気温上昇を1.5℃未満に抑制するためには徹底した排出削減に加えて年数十億トン規模の大規模なCDR導入が不可欠と示されている。2023年4月のG7気候・エネルギー・環境大臣会合や首脳宣言においても、脱炭素化が極めて困難な産業セクターの残余排出を相殺する現実的な解としてCDRの重要性が合意された。

欧州連合(EU)では2024年に、域内のCDR活動に対する品質基準や監視ルールを統一する「炭素除去認証枠組み(CRCF)」規則が合意され、除去クレジットの信頼性担保が進む。

日本国内においても、「GX2040ビジョン」の論点において地域資源を活用したネガティブエミッション産業創出の一環としてCDRの推進が盛り込まれている。官民の動きも活発化しており、産業界では三菱総研や三菱商事らが主導する日本CDR協議会の設立をはじめ、国内ルール形成やビジネス環境整備を目的としたアライアンスが形成されている。また、制度面ではJ-クレジット制度において農業分野のバイオ炭施用が先行していたが、2025年8月にはコンクリートへの炭素固定に関する新方法論が制定されるなど、資材を通じた固定化のクレジット化も進展している。

企業の実務担当者が押さえるべき論点

企業の気候変動対策実務において、CDRは単なるボランタリーな環境貢献ではなく、国際的な開示・認証基準に直結する戦略課題となっている。調達や導入にあたっては以下の論点に留意する必要がある。

SBTiネットゼロ基準における残余排出量の中和要件

SBT(Science Based Targets)イニシアチブの企業ネットゼロ基準では、ネットゼロ目標の達成条件として、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を原則90%以上削減した上で、どうしても残ってしまう最大10%程度の残余排出量を「CDRによって中和(Neutralize)」することを求めている。森林伐採防止などの排出回避型クレジットではこの要件を満たせないため、中長期の目標達成にはCDRの組み込みが前提となる。

パーマネンス(永続性)とリバース(再放出)リスク

手法選定の実務では、炭素が固定され続ける年数(パーマネンス)と、将来的に大気へ戻ってしまうリバースリスクの評価が欠かせない。森林や土壌等の自然ベース手法は初期コストが安価な反面、山火事や病害虫、土地利用変更によって炭素が再放出されるリスクを伴う。一方、DACCSなどの工学的手法は1000年以上の高い永続性を有するが、設備投資や膨大なエネルギーが必要でコストが高い。近年では、商船三井によるバイオ炭由来のCDRクレジット購入と償却のように、長期固定と現実的なコストのバランスを評価した技術ベースクレジットの先行調達事例が増加している。

参考

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環境ビジネスは、温暖化防止のための世界で初めての国際協定である京都議定書が1997年に採択されたことを受けて、その翌年創刊しました。当時、『21世紀は、環境の世紀』といわれ、私たちは、新たな時代の到来はもちろんのこと、新たな産業の息吹を感じ、環境に関するビジネスに役立つメディアを出版することになりました。ウェブマガジン「環境ビジネスオンライン」では、環境業界の注目ニュース・最新トレンド・政策・企業情報解説記事など、実務に役立つ情報・サービスを提供しており、多くの実務層の方々にご参照いただいています。

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