CORSIA

CORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation/国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム)とは、国際民間航空機関(ICAO)が2016年の総会で採択した、国際航空分野を対象とする市場メカニズムである。
国境を越えて運航される国際航空からの排出はパリ協定の国別削減目標(NDC)の直接対象外となるため、国際的な統一ルールとして創設された。基準排出量を超えるCO2排出に対してオフセット義務を課し、航空分野の成長と排出抑制の両立を目指す枠組みである。
CORSIAの対象事業者と相殺の仕組み
CORSIAは、最大離陸重量5,700kg超の航空機を使用し、年間の国際線CO2排出量が10,000トンを超える民間航空会社や貨物航空会社、ビジネスジェット運航者などを対象とする。国内線の運航は対象に含まれない。
制度運用の基本は、計測・報告・検証を行うMRV(Monitoring, Reporting, Verification)と、オフセット義務の履行で構成される。運航者は毎年の国際線運航に伴う燃料消費量とCO2排出量を算出し、第三者検証機関の検証を経た上で自国政府に報告する。運航実績が所定の基準排出量(ベースライン)を超過した場合、事業者は超過分を相殺しなければならない。
相殺の手段としては、認証を受けたCORSIA適格燃料(SAFなど)の使用による控除、またはICAOが承認した適格カーボンクレジットの購入・償却が認められている。なお、オフセット義務は出発国と到着国の双方が制度に参加している国際線路線(国ペアアプローチ)に限定され、片方でも不参加国が含まれる路線ではMRV義務のみが課される。
導入スケジュールと基準排出量の厳格化
制度の導入は段階的に進められており、2021年から2023年までのパイロットフェーズ、2024年から2026年までの第1フェーズ、そして2027年から2035年までの第2フェーズに分かれている。
第1フェーズまでは各国の自発的な参加による運用であり、日本を含む120カ国以上が参加している。2027年以降の第2フェーズからは、後発開発途上国や国際航空の運航シェアが極めて小さい国などを除く、原則すべてのICAO加盟国に義務化される予定である。
相殺義務の発生基準となるベースラインは、国際的な議論を経て厳格化されている。当初は2019年と2020年の排出量平均値と定められていたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う航空需要の急減を踏まえ、一時的に2019年の単年排出量へ見直された。その後、2022年のICAO総会決議により、2024年から2035年までのベースラインは「2019年排出量の85%」へと引き下げられた。2022年総会では国際航空分野全体で2050年ネットゼロを目指す長期目標(LTAG)も採択されており、航空需要の回復に伴って各社が負うオフセット負担は一段と本格化している。
適格クレジット要件と企業のサプライチェーンへの影響
オフセットに用いるクレジットは、任意のボランタリークレジットを自由に充当できるわけではない。ICAOの技術諮問機関(TAB)の審査を経て承認されたプログラムや手法、特定ヴィンテージに限定される。さらに、二重計上を防止するため、パリ協定第6条に基づく相当調整(CA)が適用されたクレジットであることが厳格に求められる。このため、国際的な認証を取得したクレジットの確保が極めて重要となっている。
近年では、日本航空がDAC(大気中CO2直接回収)技術などを用いたCORSIA適格のCO2除去クレジット調達を発表するなど、将来の義務履行を見据えて高品質な除去クレジットを長期契約で確保する動きも出ている。
航空燃料の控除に用いる持続可能な航空燃料(SAF)に関しても、ISCCやRSBといった指定持続可能性認証機関の認証を受け、トレーサビリティが証明されたもののみが適格燃料として算入される。
こうした航空会社のコンプライアンス負担は、航空運賃や燃油サーチャージを通じて物流コストに転嫁される可能性がある。航空輸送を利用する荷主企業にとっても、Scope 3排出量の算定や管理において、航空会社が調達するSAFの環境証書やCORSIA基準の整合性を確認する実務的な重要性が増している。
参考
- ICAO(国際民間航空機関) ― Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation (CORSIA)
- 国土交通省 航空局 ― CORSIA 適格燃料 登録・認証取得ガイド
- IATA(国際航空運送協会) ― CORSIA Fact sheet
注目情報(PR)
この記事にリアクションして1ポイント!
(※KAIGI ID登録でポイントを貯められます)













