電力自由化も見据え、創・蓄・省の最適提案 (2ページ目)

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発電、蓄電、デマンドなど各種制御機能を必要に応じ提供

こうした課題にいち早く対応できるのも、住宅・低圧市場で実績を築いてきたオムロンならではの強みといえる。

立石氏は「この領域において、自律分散制御型のシステムを手がけることで培ってきた個の制御技術を生かし、それらをネットワーク化しグルーピングすることによって群全体の制御にも広げることで、個からエリア全体までをネットワークでつないでカバーします。そして、出力制御や自家消費への対応、発電パフォーマンスの最大化、需給バランスといった課題にトータルで対処していこうと考えています」と今後のコンセプトを描く。

その思いを具現化する一つが、今春発売予定の住宅・低圧市場向けの「太陽光発電用ハイブリッド蓄電システム」だ。太陽光発電と蓄電のハイブリッドパワコンは、分離型としては最軽量。基礎工事が不要で壁掛けもできるので、設置工数の削減ができる。また、従来機種(屋外タイプ)で好評を得ている自然空冷方式も踏襲した。

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ハイブリッドパワーコンディショナ(左)、DC/DCコンバータ(中)、蓄電池ユニット(右)

システムと組み合わせるリチウム蓄電池ユニット(屋内タイプ)も家電の空気清浄機とほぼ同等の大きさで、6.4kWhで重量が60㎏と世界最小・最軽量クラスを実現。施工者でも持ち運びができるため搬入時のクレーンなどが不要になり、こちらも設置工数を大きく削減できる。これらを、モニタリング機能とコントローラ機能を一体化させた"エナジーインテリジェントゲートウェイ"と組み合わせることで、住宅・低圧市場における最適なエネルギー活用を実現する。

この"エナジーインテリジェントゲートウェイ"の制御機能を変えることで、発電制御(出力制御)、蓄電制御(自家消費)、デマンド制御(需給バランス)など各種制御機能を持たせることができるようになる。このようにして、創エネルギー、蓄エネルギー、省エネルギーの制御機能を自由に組み合わせられるようにすることで、まさにオムロンが目指すところの「エネルギー効率の最大化」を演出する戦略だ。

電力の自家消費ニーズへの対応 ZEHへの対応も見据える

こうしたシステムを送り出す狙いは、FITが今後収束し、「発電した電力の自家消費が広がって自分で貯めて使い切るという市場が出てくるでしょう」(立石氏)との予測にある。

蓄電機能を併せ持つことにより、使い切れない電力をいったん貯め、太陽光で発電ができない夜間などに利用することが可能となり、国が2020年をめどに普及を目指す、生み出すエネルギーと消費するエネルギーの年間収支ゼロ の「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」にも寄与できることになる。ZEHが実現すれば、ある程度の初期費用はかかるものの、長期的には電気代をはじめとした光熱費の大幅な削減が期待でき、家庭のコストダウンに寄与できる。

また、 住宅用補助金がスタートした2009年から住宅用太陽光の設置が急激に増加した。その余剰買取の終了予定である10年後にあたる2019年には、太陽光発電設備のリプレース需要が増えると予想されており、その市場に向けた準備も進めていく。

買取りがなくなれば自家消費に移行し、昼間に発電し、余った電気を貯めて夜間に使用するケースが増えることが予想され、「後付けでハイブリッド蓄電システムをつけたいというニーズにも応えられる」としている。

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