洋上風力発電の大規模開発で注目される ヘリコプターによる作業員の輸送(3ページ目)

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国内の洋上風力産業促進にヘリコプター輸送で挑む

国内への導入が最有力なレオナルド社(イタリア)ヘリコプターの販売代理店である三井物産エアロスペースでは、中小型機種AW169、中型機種AW139、中大型機種AW189の主力3機種を取り扱っている。国内に交換用部品の在庫を常備し、緊急時の部品交換ニーズに応える等、カスタマーサポートに注力し、交換用部品・整備用工具の供給、訓練サービス等を含め、機体運用を全面的に支援している。

道のない山間部や災害地等への資材輸送に活躍するヘリコプター
道のない山間部や災害地等への資材輸送に活躍するヘリコプター/写真提供:中日本航空
ヘリコプターは優れた機動性を有し、警察庁、海上保安庁、国交省、地方自治体等諸官庁に運航され、捜索救助・救急搬送等の人命救助活動、災害対応時の人員・物資輸送、林野火災消火、警備活動等で活用されている。民間では、報道取材、人員・物資輸送、送電線パトロール、ドクターヘリ等様々な用途で利用されている。

 

洋上輸送へ体制を整える中日本航空

今後、国内で需要増が期待される洋上風力発電のヘリコプターによる作業員の輸送サービス。中日本航空は、輸送サービス体制整備に向けて準備を進めている。

中日本航空は、愛知県の県営名古屋空港に本拠を置く、航空運送事業と調査測量事業の会社だ。航空運送事業としてはドクターヘリをはじめ、医療搬送、報道取材、受託運航、物資輸送、受託整備などを行う。全国各地に営業・運航拠点を有し、ヘリコプター72機、飛行機7機を運航する。ドクターヘリおよび消防防災ヘリの運航整備に加えて、重整備や修理改造検査等の受託整備業務のいずれでも国内ナンバー1の実績を誇る。

 

中日本航空は、経験、実績値で突出

洋上風力でヘリコプターを利用するときに必須となるホイスト運用(機外に装備したホイスト装備により、ワイヤーを使って人や物資を乗降させる)も、中日本航空は消防防災ヘリにて最も経験を積んでいる会社だ。また、機外に吊り下げた物資を精度高く配置する、高い技術力が必要な物資輸送業務の経験も豊富だ。

「洋上風力でのホイスト運用は、弊社のこれまでの経験と技術力を大いに活かせます」と中日本航空は言う。また、中日本航空では国内洋上風力発電でのヘリコプター活用を見据え、ドイツのHeli Service社と2020年2月に業務提携を結んだ。

「洋上風力発電施設でのヘリコプター運航に関して、先行している欧州にて確立された運航体制を基に体制整備を進めています」と同社は言う。もともと実力あるヘリコプターの運航会社が、洋上発電の盛んな欧州から学び、その準備を行っている。

中日本航空
写真提供:中日本航空
中日本航空では、多彩な目的や用途に対応するヘリコプターを多機種保有している。緊急医療サービスをはじめ、物資・旅客運送、報道取材などにも対応可能なパイロットおよび安全な運航を支える整備士を豊富に有し、全国的に運航所を展開しており、様々なニーズに応えられるサービス提供体制を整えている。

 

計画時にヘリコプター利用を組み込む

「日本における洋上発電でのヘリコプター活用で、これまでの最大の懸念は、ホイスト運用の制限でした。それは法律改正によって解決しましたが、ヘリコプターの運航体制の整備(機体準備など)にはある程度の期間が必要になります。」との同社コメントもあった。

日本の洋上風力計画はこの先数年は施設離岸距離が近いこともあり、作業員や物資の輸送は船のみで運用されることが予想される。施設運用開始後、途中からヘリコプターの必要性が高まったとしても、機体調達など運航体制の整備にはある程度の時間を要し、即座の対応が難しい。また、バスケットの設置を考慮するなど、将来ヘリコプターが必要になる事を想定して、計画することが望ましい。

 

三井物産エアロスペースがレオナルド社の総輸入代理店

そんな中日本航空と足並みを揃えようというのが、レオナルド社のヘリコプターを輸入販売する代理店の三井物産エアロスペースだ。同社ヘリコプター第一部の担当者は「我々としても、中日本航空さまと協力して洋上発電に取り組んでいきたい」と、今後の市場拡大を見据えている。

三井物産エアロスペースはレオナルド社のヘリコプターだけでなく、ダッソー社のファルコンジェット、FLIR社製センサーシステム、セキュリティシステム、防衛装備品、航空機エンジン、宇宙事業などを取り扱う。主力商品はヘリコプターであり、ヘリコプターの代理店としては国内最大手の一角となる。

三井物産の子会社として1982年にスタートし、ヘリコプターを取り扱ってきた。2006年にレオナルド機を初納入してからこれまで、レオナルドのヘリコプターを70機以上納品しており、総受注機数は80機を超えるという。同社は創業以来、ヘリコプターに40年も携わっており、ヘリコプターに関するノウハウとコネクションは国内随一と言えるだろう。加えて、国内の部品在庫拡充など、国内運航機の稼働率向上に向けた取組を同社は継続的に実施している。

「ヘリコプターは垂直離発着が可能で、空中で停止するホバリングが可能であり、航空機の中でも他には無い機能を持っております。当社の取り扱い機種がターゲットとする市場は、遭難者の捜索救助、災害時の状況把握、被災者救難等、高い安全性とパフォーマンスが求められるミッションに従事される官公庁向けが主となります。洋上風力発電事業向けは新しい分野ではありますが、電力という重要な社会インフラの維持に貢献でき、また、洋上という厳しい環境下での運航に適しているという点でこれまでの当社実績が活かせると考えます。」と、三井物産エアロスペースでは国内の洋上風力発電事業促進にヘリコプターが一翼を担えると構想している。

ヘリコプターを用意する代理店の三井物産エアロスペースと、そのヘリコプターを運用する中日本航空は、言ってみればクルマの両輪のようなもの。2つが揃うことで、洋上風力発電の未来は走り出すことができるはずだ。

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お問い合わせ先

三井物産エアロスペース株式会社三井物産エアロスペース株式会社
ヘリコプター本部
所在地:東京都千代田区丸の内1-8-2 鉄鋼ビルディング22階

 

中日本航空株式会社 航空事業本部中日本航空株式会社 航空事業本部
ヘリコプター本部
東京支社:東京都中央区京橋3-7-5 近鉄京橋ビル7階

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