苫小牧市、余剰電力を無償利用し脱炭素化 独自のPPAモデルを構築
北海道・苫小牧市が第4回「脱炭素先行地域」に選定された。同市では北海道最大の工業都市である地域特性を生かし、産業部門の脱炭素化を民生部門に波及させる独自の脱炭素地域モデル構想を思い描く。取り組みの全体像や特徴について、苫小牧市役所・環境保全課の干谷洋平氏に聞いた。
余剰電力を有効的課題を解決
国際拠点港湾の「苫小牧港」と北海道の空の玄関「千歳空港」のダブルポートを擁する苫小牧市。製紙工場や自動車関連、エネルギー関連など多様な産業が集積する、北海道をけん引する産業拠点都市だ。
同市の構想する『ダブルポートシティ苫小牧の次世代エネルギー供給拠点形成への挑戦 〜産業(立地企業)の脱炭素化が民生(市街地)のゼロカーボンと地域振興に資する新たなPPAモデルの構築〜」が第4回の脱炭素先行地域に選定された。
苫小牧市のCO2排出量の約7割は、産業部門から出ている。市内の脱炭素化を進める上では、産業部門からというのが自然の流れといえる。
「脱炭素先行地域は民生部門が対象ですが、本市としては、産業部門からアプローチしています」と干谷氏。
ものづくり産業の集積する西部工業基地内の産業施設へPPA事業で大規模に太陽光発電を導入。発電した電力を自家消費することで産業部門のCO2排出を削減するとともに、余剰電力を隣接する勇払市街地エリアへ供給することで、産業部門の脱炭素化が民生部門へ波及するPPAモデルを構築するのが構想の基本的なスキームだ。
「一般的なPPA事業では、余剰電力は捨てている状態です。もともと誰も使っていなかった電気を、地域の脱炭素のために、ほぼ無償のカタチで譲っていただくというのが、今回のスキームの特徴です」
再エネ電力を供給する勇払市街地は、苫小牧市の発祥の地でもある。工業団地に囲まれた市街地で、製紙工場とともに発展したが、現在は人口が大幅に減少し、過疎化・高齢化が進んでいる。
同スキームでは、西部工業基地から出る余剰電力に、沼ノ端クリーンセンターの廃棄物発電から出る電力を加え、勇払市街地の住民に安価な再エネメニューを供給。さらに、西部工業基地の企業などの需要家が発電量に応じて支払う対価を〈地域振興費〉とし、医療MaaS事業や災害時避難施設の整備など、地域課題解決へ向けた取り組みへの原資としていく。
「産業部門で余った電気を安く仕入れることで、勇払市街地へのより安価な再エネ供給を実現しながら、地域課題の解決も同時に実現していくスキームとなっています」
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