
大阪大学産業科学研究所の研究グループは、太陽光で発電する紙を世界で初めて開発した。この紙は、木材パルプ繊維から作った透明な紙の上に、銀ナノワイヤ透明導電膜と有機太陽電池素子を搭載しており、世界最高の変換効率・軽くて折りたためる・低温プロセスという3つの特徴を有する。この紙を折りたたんで持ち歩けば、いつでも、どこでも太陽光で発電することができる。
透明な紙の製造方法は以下の通り。紙の原料である木材パルプの繊維を通常の1,000分の1にあたる15ナノメートルまで細くし、機械的にダウンサイズして幅15nmのセルロースナノファイバーを作る。そのナノファイバー水懸濁液を乾燥すると、透明な紙ができる。セルロースナノファイバーを使っているため、処分も容易で環境への影響も小さい。透明な紙の上に幅100nmときわめて細い銀ナノワイヤを塗布すると、透明でありながら電気の流れる基盤が完成する。その性能は、ITO透明電導膜に匹敵する。
この透明な紙と透明な銀ナノワイヤ導電膜の開発と、それらのアセンブリ技術によって、この紙は光電変換効率3%を達成した。この値は、紙ベースの有機太陽電池としては世界最高値である、ガラス基板とITO(酸化インジウムスズ)透明電導膜を用いた従来の有機太陽電池と同等となっている。