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エネルギー業界の未来を左右するLNG 経産省、世界に向けて市場戦略を発表

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エネルギー業界の未来を左右するLNG 経産省、世界に向けて市場戦略を発表

経済産業省は、5月1~2日に、G7北九州エネルギー大臣会合を開催した。本会合では、多様で重要なエネルギーの課題と対応について議論を深め、具体的なメッセージやアクションを共同声明「グローバル成長を支えるエネルギー安全保障のための北九州イニシアティブ」にとりまとめた。本共同声明は月末のG7伊勢志摩サミットに報告され、首脳間の議論の基盤となる。

また、同省は、米国からのLNG(液化天然ガス)輸出開始や電力・ガスの全面自由化といったLNGの需給環境の変化を踏まえ、今後とも低廉かつ安定的なLNG調達を進めていくための今後の対応を「LNG市場戦略」としてとりまとめ、G7エネルギー大臣会合の場で発表した。

本会合には、先進主要7ヵ国(日・米・加・独・仏・英・伊)、EU、国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)から閣僚等が出席し、林経済産業大臣が議長を務めた。また、米国エネルギー長官モニーツ氏などの閣僚とのバイ会談(二国間会談)も行われた。

経済産業省による、会合の結果概要と「LNG市場戦略」のポイントは下記の通り。

エネルギー大臣会合「再エネへの技術開発投資は重要」

「グローバル成長を支えるエネルギー安全保障」を大きなテーマに据え、世界の成長に向けた「エネルギー投資の促進」、エネルギーを巡る市場や地政学的な変化を踏まえた「エネルギー安全保障の強化」、そして、COP21後初のG7エネルギー大臣会合として、その成果を受けた「持続可能なエネルギー」について議論を行い、前述のとおり、共同声明をとりまとめた。

共同声明のポイントは以下のとおり。

(1)成長を支えるエネルギー投資の促進

世界経済の成長を支えるためのエネルギー投資を促進する取組みを主導していくことで一致した。エネルギー価格安定のための上流投資、再エネを始めとしたクリーンエネルギーの技術開発投資、そして、エネルギー効率向上のための質の高いインフラ投資、この3点の重要性について認識を共有した。エネルギー投資の促進は、雇用や経済を支えるために重要であり、伊勢志摩サミットの主要テーマである世界経済の安定にもつながる。

(2)天然ガスセキュリティ

アジアを中心に利用が急拡大する天然ガスについて、国際的な緊急時対応力を強化するため、IEAが中心となり、緊急時訓練を行う等の具体的な行動を取ることに合意した。また、仕向地条項(※)の緩和に加え、LNGに関する価格指標の確立、LNG基地等のインフラの開放といった包括的な取組みを通じ、国際的なLNG市場の確立を目指すことに合意した。日本としては、同日発表した「LNG市場戦略」に従い、LNG市場の確立に向けた取組みを進め、11月に東京で開催予定のLNG産消会議も活用し、生産国、消費国双方との連携を強化していく。

※仕向地条項…液化天然ガス(LNG)の売買契約において、購入したLNGの転売を制限する条項

(3)原子力安全

福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水対策の着実な進展を歓迎した。原子力利用国において、原子力政策に対する社会的理解を高めるために、科学的知見に基づく対話と透明性の向上が極めて重要との認識を共有した。原子力の利用を選択するすべての国に対し、高いレベルの原子力安全、核セキュリティ及び核不拡散を確保し、その専門的知見や経験を共有することを要請した。

(4)サイバーセキュリティ、電力安定供給

G7が協働し、エネルギー分野におけるサイバーセキュリティの調査を実施し、地域と分野を超えた専門家の連携を加速することで一致した。さらに、再エネの拡大や自由化が進む中での電力安定供給対策については、広域系統運用に対応した新たな電力市場のデザインを目指していくことで一致し、IEAやIRENAに対し、引き続き質の高い分析や政策提言を行うことを要請した。

(5)エネルギー技術の革新

G7が「ミッション・イノベーション」を通じて、クリーンエネルギーの技術革新を後押しすることで一致するとともに、IEAのエネルギー技術ロードマップ第二弾の開始を歓迎した。

日本をLNG取引の中心にする「LNG市場戦略」

この戦略では、2020年代前半までに日本をLNGの取引や価格形成の拠点(ハブ)としていくことを目標として掲げている。今後、本戦略の実現に向けて、LNG産消会議等の場を活用しつつ、官民一体となって取り組んでいく考えだ。

LNG取引を巡る環境変化を踏まえ、(1)民間主導、(2)グローバル指向、(3)行動重視という「3つの基本原則」の下で、流動性の高いLNG市場を構築し、2020年代前半までに日本をLNGの取引や価格形成の拠点(ハブ)としていくことを目指す。実現の為の「3つの基本要素」と具体的アクションとして、下記3つが挙げられている。

(1)取引の容易性(Tradability)

  • 仕向地条項(※)の撤廃に向けた取組みの強化(消費国との連携 等)
  • LNGプロジェクトの円滑な立ち上げに資するファイナンスの考え方の見直し(政策金融機関における日本裨益の考え方の柔軟化 等)
  • 国内外における新規ガス・LNG需要の拡大(燃料電池やLNGトラック等の導入、アジアにおけるLNG関連インフラの導入支援、政策対話 等)
  • LNG船の運用の容易化に向けた取組み(船陸整合性確保の迅速化 等)

(2)需給を反映した価格指標(Price Discovery)

  • 健全な競争による日本のLNG需給を反映した価格指標の確立に向け、いわゆる価格報告機関と必要な対話の実施
  • ファイナンス支援においてもこうした価格指標の育成の観点を取り入れ
  • 東京商品取引所におけるLNGの先渡し取引の取組みについても必要な支援

(3)オープンかつ十分なインフラ(Open Infrastructure)

  • ガスシステム改革で進められているLNG基地の第三者アクセスや情報開示に係るルールについて、LNG市場育成の観点を踏まえながら検討
  • 広域パイプラインや地下貯蔵施設等の関連インフラについても、その十分な整備に向けた制度的措置や公的支援のあり方を早急に検討

取りまとめの背景

日本は世界のLNG需要の約1/3を占める世界最大の需要国である。これまでのLNGの調達に際しては、長期契約で原油価格に連動する価格決定方式が通常であり、東日本大震災後、その調達価格の高騰が課題となっていた。

一方で、米国や欧州では、原油価格に連動する価格決定方式ではなく、ガスそのものの需給を反映した価格の影響力が増している。加えて、世界的なLNG需要の拡大や、米国や豪州等からのLNG輸出量の増加が見込まれる中、国内では電力・ガス自由化によるLNG調達構造が変化していくことになる。

こうした環境変化は、より柔軟で流動性の高いグローバルなLNG市場の実現の好機であり、合理的価格で安定的にLNGを調達する環境を整備し、日本のLNG需給安定化、価格の抑制・安定化に繋げていくことが期待される。

【参考】
経済産業省 - G7北九州エネルギー大臣会合を開催しました

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