環境エネルギー分野の発展をITで支える

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近年、住宅のさまざまな設備をインターネットでつなぎ、制御する「住宅IoT」のサービスが次々と発表されている。住宅へのIT浸透が進めば、『家』のあり方も大きく変わることになるだろう。

ITエンジニアとして環境エネルギー領域の事業に参画、太陽光発電の遠隔監視サービス「エコめがね」を担当する林田 悠基氏に、今後の住宅業界におけるITの浸透について伺うとともに、エンジニアとして環境エネルギー分野で働くやりがいを聞いた。

通信インフラの世界から、環境エネルギー領域へ

林田悠基氏(はやしだ・ゆうき)
林田 悠基氏(はやしだ・ゆうき)
株式会社 NTT スマイルエナジー
価値づくり本部 システム開発グループ

NTTスマイルエナジーで、住宅や太陽光発電所の発電状況をクラウドを介してチェックする『遠隔監視』サービス「エコめがね」のシステム開発を担当する林田 悠基氏は、NTTグループにて法人向けのシステムインテグレーター、情報通信セキュリティの研究開発など、一貫して通信インフラを支えるITエンジニアとしてのキャリアを積んできた。

通信事業の上流から下流までを経験するなかで、『これまでとは違う分野でエンジニアとして働いてみたい』と、新規事業であった「エコめがね」の開発に加わり、再生可能エネルギーをはじめとした環境エネルギー領域の仕事に携わることとなった。

林田氏が現在担当している業務は、遠隔監視サービス「エコめがね」の基盤となるクラウドのシステム施策推進と、クラウドにセンサーやマイコンなどのデバイス技術を絡めたサービスの開発だ。現在の基盤をもとにした新たなサービスの構築を目指して、チームを率いている。同社が遠隔監視のサービスを開始して以来、各社がこのサービスに参入してきた。

「低圧の太陽光発電所では遠隔監視は当たり前のことになってきました。太陽光発電所は投資目的の方も多く、『ちゃんと監視できていればいい』とアウトプットが重視されがちですが、今後は遠隔監視で得たデータをどう活かすか、技術の裏側まで評価される時代になると考え、サービス開発に努めています」(林田氏)。

トレンドになる住宅IoT・スマートハウス

ITに関して林田氏が今注目するのが、住宅分野でのIT導入、住宅IoTやスマートハウス。大手ハウスメーカーではすでにこういったサービスを発表しているところもあり、今後住宅で必要になる設備・機能のトレンドになりそうだ。

ZEHの普及で家に太陽光発電や蓄電池・HEMSがつくことが当たり前になれば、『家のエネルギーをどう効率的に使うか』が課題になります。エネルギーを貯めたり、使ったりというときにもITによる管理・制御が有効です」(林田氏)。

また、近年は再生可能エネルギーの発電量が電力会社の受け入れ容量を超えるため、電力会社が受け入れを一時的にストップするといった問題も起きるなど、天候によって発電量が上下する再生可能エネルギーをいかに管理するかも課題となっている。

太陽光発電の普及により系統につながれる再エネが増えることが予想される現在、こういった問題に対して、ITが貢献できる余地は大いにある、と林田氏はいう。

「特にここ1~2年はAIによる制御やセンサーデバイスによるデータ解析の技術が進み、各社がサービス開発にしのぎを削っています。住宅分野にも、エネルギーマネジメントをはじめとしてさまざまなサービスが提供されるでしょう。工務店やビルダーの皆さんには、ITと住宅がつながりはじめたということを知っていただければと思います」(林田氏)。

住宅がITとつながることで、『家』のあり方も大きく変わってくるものと思われる。余剰売電買取価格の低下を受け、今後住宅での太陽光発電は売電よりも『自家消費』需要が高まる見通しだ。

林田氏によると、これに対応したサービスとして考えられるのは、自宅で発電した電気を、蓄電システム等を介して必要なときに出し入れし、より効率的・経済的にエネルギーを使うシステム。林田氏のチームで開発しているデバイス等のセンサーも、こういったシーンで活用されることが考えられるという。デバイスは後からの設置も可能であるため、今後はリフォーム時にこういったデバイスを追加する『IoTリフォーム』の需要が生まれるかもしれない。工務店・ビルダーにとって、『住宅とIT』は注目のテーマとなるだろう。

チームメンバーとの会議の様子。これまでシステム開発を担ってきた林田氏(右)だが、今年からはセンサー等のデバイスの開発にもかかわるように。ソフトとハード両面で事業にかかわるやりがいがあるという

スピード感を持って自己研鑽できる人に向いた業界

最後に改めて、林田氏に環境エネルギー業界で働くことのやりがいを聞いてみた。

「IT業界も技術の進歩などが早い世界ではありますが、環境エネルギー業界はそれに輪をかけてスピード感のある業界だと感じます。まだ新しい領域であるだけに異業種からの参入なども多く、競争も激しい世界。常に情報を集めて勉強を欠かさないようにしなくてはならないという心地よい緊張感があります。新しいことへのチャレンジや、異分野と接することでの刺激を得たい方は楽しんで働ける業界なのではないでしょうか」(林田氏)。

ITエンジニアとしてのスキルを活かして環境エネルギー領域に飛び込み、業界の課題解決・発展に挑む林田氏のチームが今後どのようなサービスを世に出していくか、楽しみに待ちたい。

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