トランプ再任、スタートアップ企業に与える影響は?
トランプ新政権の発足で、米国では環境エネルギー政策の大きな転換が予想される。同国の情勢を踏まえ、ペガサス・テック・ベンチャーズCEOのアニス・ウッザマン氏に、2025年の環境テックの動きや注目の技術・領域を聞く。
2025年の大きなテーマはエネルギー
米・シリコンバレーを拠点とするグローバルなベンチャーキャピタルであるペガサス・テック・ベンチャーズ。アーリーステージからレイターステージまで、世界中の優れたスタートアップに投資を行う。
米国では1月20日、ドナルド・トランプ氏が第47代大統領に就任した。就任演説では環境エネルギー政策に言及し、“不公平で一方的なパリ協定から即時離脱する”と宣言し、『パリ協定』からの脱退を決めた。



アニス氏は「石炭・石油・製鉄という面で、パリ協定はアメリカにとってビジネス的にアンフェアな面がありました。コストに関しても長期的に何兆ドルと必要になり、破壊的だというのがトランプ氏の言い分です。 新政権の影響で、 環境に関するテクノロジーへの注力は、減速されることが考えられます」と予測する。
一方で、エネルギー問題は米国においても深刻な課題だ。1人1台車を持つ米国では、 ガソリンの値段が生活に大きな影響を与える。
「ガソリンの高騰は物流に影響を与えます。 物流は食材に影響し、食材が高くなると家賃が高くなる。 結局、 全ての根本はエネルギー問題で、エネルギーのインパクトはとても大きい。こうした状況を背景に、2025年、大きなテーマとなるのは、 高度な再生可能エネルギーソリューションだと思います」

AI駆動のエネルギー管理に注目
アニス氏は注目の再生可能エネルギーソリューションとして、 ペロブスカイト太陽電池をはじめとした次世代ソーラーシステムに期待を寄せる。 また、浮体式洋上風力発電へも注目している。

「エネルギーの効率化という意味では、 スマートグリッドという領域も重要視しています。 家庭、ビジネス、産業施設のエネルギーの最適化という部分で、特にAI駆動のエネルギー管理がフォーカスされると思います」
トランプ氏は、ソフトバンクグループや生成AIの開発を手がけるオープンAIなど3社が、 米国内でAIに関するインフラ整備に今後4年間で5000億ドル規模の投資を行う計画を明らかにしている。
「地域密着型の分散型エネルギーシステムとして、 マイクログリッドの領域もフォーカスされるでしょう。信頼性やコスト効率の高い電力供給がポイントになっていきますが、生成AI技術の大きな動きと連動していくと思います」
脱炭素の分野では、CO2を分解・回収・貯蔵・利用するCCS/CCUS等の技術が、 2025年も引き続きフォーカスされていくと予想する。 また、 AIによるゴミの分別・回収といったスマート廃棄物管理も技術的な革新が進んでいくとみられる。
『スタートアップワールドカップ2025』予選大会が各国でスタート
ペガサス・テック・ベンチャーズは、優勝投資賞金約1億5,000万円の世界最大級のビジネスプランコンテスト『スタートアップワールドカップ』を主催する。米・サンフランシスコで開催される世界決勝への出場をかけ、 毎年、 世界100以上の国と地域で予選が行われる。
日本では2024年、 東京・京都・九州の3カ所で開催された予選大会。2025年は熊本城ホールでの九州予選(5月)を皮切りに、 東京(7月)に続き、新たに東北での開催を予定している。東北での開催は初めてだ。
「2025年の予選大会は、 既に130カ国・地域での開催を予定しています。特に、アフリカ、 南アメリカ、 東南アジアなどの発展途上国での開催に力を入れています。 自然災害などに遭い、再生・復興を目指す地域にもフォーカスし、予選を開催することで支援したいと思います」
近年は、大学単位での予選大会への申し込みもあるという。2024年は、UCバークレー(米・ カリフォルニア州)で在学生・卒業生を対象とした予選大会を行い、 1社が世界決勝へと進んだ。
さらにテストケースとして小中高生のユースによる予選大会も行った。米・ シリコンバレーのハイスクール『Harker』が全米のユースを呼び込み、約700人が集結。 持続可能な食材で健康的なインスタント麺をテーマにした『SHLURP』が予選を勝ち抜き、世界決勝に挑んだ。
今後は学生層の参加も促していく方針で、 日本でもユース大会の開催を視野に入れる。
さらに、各国の大きなイベントと共同で予選大会を開催していくことにも力を入れていくという。
「より多くの企業、 投資家を巻き込み、多くの人が参加できるイベントにしていきたい。400社以上のテック系スタートアップの集まる『NYテック・ウイーク(米・ニューヨーク)』をはじめ、欧州でもいくつかのイベントとの共同開催を考えています」
予選を勝ち抜き、世界決勝を目指すスタートアップへのサポートも強化する。ペガサス・テック・ベンチャーズでは、全世界に声をかけ、メンターを募集している。2025年1月時点で500名以上がメンター登録をしており、 ペガサスでの研修後、 予選を勝ち抜いた各社とマッチングし、 プレゼンやビジネスモデルのブラッシュアップを中心に、サポートを充実させていく。
「ただの大会ではなく、スタートアップの成長やビジネスが生まれる場としても機能させたい」というのがアニス氏の想いだ。
本年は、すでに九州(5/23)・東京(7/18)、そして初の東北(8/22)予選の応募受付を開始している。
「予選を勝ち抜き、 世界決勝でステージに立てば、世界の投資家や大企業に自分たちのテクノロジーやビジネスを見てもらえます。 大切なのは何度でも挑戦すること。 日本国内だけでなく、グローバルでもビジネスを展開していく。 大きな夢を持つスタートアップが、日本から1つでも多く誕生すればと思います」
