小さきモノへの愛 日本人の原点(前編)
1982年、ある日本人論が世に登場した。韓国の李 御寧(イー・オリョン)先生の「『縮み』志向の日本人」である。初版されたころ、日本はまさに高度経済成長の真っただ中で、経済大国に向ってまい進していた。当時、梨花女子大学教授だった李先生は、この本で日本人にちょっとした衝撃を与えた。各新聞の書評で取り上げられ、山本七平氏などに絶賛された。(図−1)がその文庫版である。

まず、この本の冒頭に驚かされる。日本の知識人の代表である「甘えの構造」の土居 健郎、歴史家の樋口 清之、そして日本文明論の第一人者である梅棹 忠夫氏を一刀両断に切ってしまうのだ。