炭素クレジット国際動向からみえる、企業価値を高める「環境価値」 の活用法

  • 印刷
  • 共有

パリ協定以前から「炭素クレジットにおけるオフセット」について、国際的に議論が繰り返されてきた。ターニングポイントになったのが2021年イギリスのグラスゴーで行われたCOP26。この会議では以前から議題に上がっていた「パリ協定6条(市場メカニズム)」(※炭素クレジットによるオフセット)について実施方針を採択した。これにより、カーボンクレジットでのオフセット取引がパリ協定で正式に認められることとなった。

「短中期でのオフセットは行うべきでない」と国連が明言

翌年2022年エジプトのシャルム・エルシェイクで開催されたCOP27では、国連のグテーレス事務局長が主導する専門家グループが「温室効果ガス排出ネットゼロを掲げる企業」が守るべき10の条件を提示。そのなかで、短中期でのCO2削減目標設定に炭素クレジットによるオフセットは使うべきではないと明言した。

いわば、グテーレス事務局長が発したと同じ意味を持ち、ネットゼロを標榜する企業や国際機関に大きなインパクトを与えた。以後この考え方は、国際的なスタンダードになりつつあり、まずできるだけ自らがCO2を削減し、それでも達成できなかった部分を信頼性の高いカーボンクレジットでオフセットするという方向になっている。

逆に、安易にクレジットでカーボンオフセットを行う企業に対しては、グリーンウオッシュと非難され、企業ブランドが大きく失墜してしまう可能性もある。一方、日本では2023年GXリーグが発足、同年東証にてJ-クレジットを扱うカーボンクレジット市場が開設した。日本国内においてJ-クレジットはスタンダードだが、グローバルではマイナーであり、すべてのクレジットが「CDP」「SBT」「RE100」などに利用できるわけではない。また世界でカーボンクレジットのオフセットが制限される傾向にあるなか、日本では国を挙げて推進している現状もチグハグ感が否めない。

脱炭素やCO2削減は世界の共通語となっており、日本株の記録的な高騰を受け、海外投資家から日本企業が高い注目を集めている今、当然経営の透明性や誠実性に関するチェックはより厳しくなってくる。国外だけでなく国内に軸足を置く企業でも海外投資家からの投資を呼び込むうえで、環境経営に対応する必要があり、これは大きなビジネスチャンスになるだろう。

EU、日本におけるカーボンクレジットをめぐる動き
EU、日本におけるカーボンクレジットをめぐる動き

次ページへ→エネルギー属性証書とカーボンクレジットの違いと注意点

続きは有料会員登録後にお読みいただけます。

  • オンラインでは実務に直結する有益なオリジナル記事を掲載
  • 登録月(購入日~月末)は無料サービス
  • 環境設備の導入・営業に役立つ「補助金情報検索システム」も利用可能
  • 本誌「環境ビジネス」の電子ブックも読み放題
月額
1,300円(税込)
年額
15,600円(税込)

関連記事