多額の財政支出を抑制するために、米国の環境・エネルギー政策は揺れ動く可能性が高い。日本政府や企業には、米国の政策転換に機動的に対応していくことが今後も求められる。
2024年11月5日に行われた米大統領選挙では、共和党のトランプ氏が勝利し、同時に行われた連邦議会選挙でも、共和党が上下両院ともに過半数を確保した。トランプ氏の公約などを踏まえると、米国の環境・エネルギー政策は大幅に転換する可能性が高い(図1)。主な政策変更として、次の3点が挙げられる。

(資料)トランプ氏公式ウェブサイト・共和党政策綱領・各種報道を基に日本総研作成
国際連携からの離脱
第1に、国際連携からの離脱が考えられる。トランプ氏は、パリ協定から再び離脱する公算が大きい。発効(2016年11月)から3年間は離脱通告ができない、というパリ協定の規定の影響を受けて離脱期間が数ヵ月にとどまった前回とは異なり、今回の離脱期間は短くても3年以上になるとみられる。
さらに、途上国の気候変動対応を支援する「緑の気候基金」への資金拠出を撤回する可能性も高い。米国が国際連携から離脱することになれば、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)やG7・G20などの国際交渉における合意形成が難航する恐れがある。
環境規制が緩和される
第2に、環境規制が緩和される可能性が高い。トランプ氏は、気候変動対応に消極的なライト氏やゼルディン氏をエネルギー省や環境保護庁の長官にそれぞれ指名し、バイデン政権が強化した自動車の温室効果ガス(GHG)排出規制や燃費規制などを緩和するとみられる。
自動車に対する環境規制が緩和されれば、米国においてGHG排出量が最も多い輸送部門の排出削減が停滞することになる。
加えて、トランプ氏は、エネルギー関連プロジェクトに対する連邦政府の承認を迅速化することで、化石燃料の増産を目指す方針を掲げている。特に、大企業に比べて排出対策が不十分な中小のエネルギー企業による化石燃料の採掘が増えて、採掘に伴うGHG排出量が増加する可能性がある。

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