農薬最大手バイエル、環境再生農業にシフトチェンジ その狙いとは
EUは「2030年生物多様性戦略」を策定し、2022年6月にはEU域内全体で化学農薬の使用量を2030年までに50%削減する規則案を発表。この動きに合わせ、農薬最大手の独バイエルは戦略シフトを打ち出した。同社が投資を加速させている、農薬や肥料を使わずに土壌の有機物を再構築し、水資源や生物多様性を回復させるリジェネラティブ(環境再生)農業とは?
2つの即時拘束力のある法案を提示したEU
「生物多様性」という語彙が、日本でもようやく人々の口に上るようになった。だが、今では日本人の誰もが如実に実感できるようになってしまった「気候変動」に比べると、生物多様性破壊への危機感は弱い。
世界では、気候変動同様に喫緊のテーマとされ、その復元は公的政策や企業戦略の中核に組み込まれるようになってきている。2022年末に、生物多様性条約締約国会議の第15回会議がモントリオールで開催され、日本も含め、締結国は全力で生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せるという「ネイチャー・ポジティブ枠組」が採択されている。
これに先立ち欧州連合(EU)では、現ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が就任と同時に打ち出した「欧州グリーンディール」という総合戦略に沿って、20年には極めて野心的な「生物多様性戦略2030」を発表。2009年の「持続可能な農薬使用についての規則」の改定案と「自然復元のための規則」という2つの即時拘束力のある法案を提示した。
これらによれば、30年までにEU域内での化学農薬使用量を半減させ、すべての農地のエコシステム復元を段階的に実現させることが義務付けられる。国連条約と異なるのは、EU法の多くが厳しい拘束力を持つことだ。このため欧州企業が先駆的に軌道転換を推し進めることは少なくない。
リジェネラティブ農業の潜在市場規模は約16兆円
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