合成燃料(e-fuel)

合成燃料(e-fuel)とは、回収した二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を化学合成して製造される人工の液体燃料全般を指す概念。
原料となる水素に再生可能エネルギー由来のグリーン水素を用い、大気中や工場排ガス等から回収したCO2と組み合わせることで、燃焼時にCO2を排出してもライフサイクル全体で大気中の排出量を実質的に増やさないカーボンニュートラルな特性を持つ。原油由来の化石燃料と化学的に同等の性質を有し、電化が困難な大型輸送機関や航空分野における切り札として期待されている。
主な製造プロセスとドロップイン燃料としての特性
合成燃料は、原油由来のガソリン、軽油、灯油、ジェット燃料などと同一の炭化水素構造を持つ。そのため、既存の内燃機関(エンジン)や給油所、輸送パイプラインなどの社会インフラを改修することなくそのまま活用できる「ドロップイン燃料」としての利点を備えている。電池の重量や航続距離の制約からバッテリーEVへの完全移行が難しい大型商用車、長距離トラック、船舶、さらには航空用の持続可能な航空燃料(SAF)としての代替需要が高い。
主な製造技術には、CO2を一酸化炭素(CO)に変換した上で水素と触媒反応させて合成粗油を得る「FT(フィッシャー・トロプシュ)合成」や、CO2と水素から合成メタノールを経由して各種燃料へ転換する手法(MtG/MtJ)などがある。大規模プラントによる集中的な量産検討に加え、米エアセラ社が開発した小型の合成ガソリン製造・給油機のように、直接空気回収技術(DAC)と水電解を組み合わせ、オンサイトで分散製造を行う技術実証も現れている。
国内外における政策と商用化ロードマップ
日本国内では、経済産業省が2023年6月に「合成燃料(e-fuel)の商用化に向けたロードマップ」を改定し、従来の自立商用化目標を2040年から「2030年代前半」へと前倒しした。2020年代後半からはNEDOのグリーンイノベーション基金事業などを活用した実証製造や品質検証を本格化させ、2030年代中盤にかけて1日当たり1万バレル規模の商用プラント構築を目指している。
欧州でも重要な政策転換が見られる。欧州連合(EU)は2023年3月、2035年に内燃機関車の新車販売を実質禁止する方針に対し、CO2ニュートラルな合成燃料のみを使用する車両に限って例外的に販売継続を認める合意に至った。これにより、乗用車市場においても完全電動化と並行して合成燃料を活用する道筋が残されることとなった。
実務導入に向けたコスト課題とバイオ燃料との役割分担
企業の脱炭素調達における最大の課題は製造コストである。現状の試算では1リットル当たり約300〜700円と既存の化石燃料に比べて極めて高額であり、将来的なガソリン税抜価格と同等以下への低減には、安価な再エネ電力と低コストな水素の大量調達が不可欠となる。そのため、日射量や風況に恵まれた海外拠点で製造し国内へ輸送する国際サプライチェーンの検討が進んでいる。
また、回収CO2の由来(工場排ガスか、大気中直接回収か)に応じたGHGプロトコルや各国の認証制度における排出量算定ルールを整理・確認することも実務上の重要事項である。導入の時間軸としては、廃食油等を原料とするバイオ燃料が足元から2030年頃までの脱炭素化を先行して担い、合成燃料は技術成熟とコスト低減が進む2030年代以降に本格普及する長期ソリューションとして位置づけられている。
参考
- 資源エネルギー庁 ― 次世代燃料(バイオ燃料、合成燃料)政策について
- 資源エネルギー庁 ― 合成燃料の商用化に向けたロードマップ
- 経済産業省 ― 次世代燃料の導入に関する目標や必要な取組に関する検討について(2024年6月)
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