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輸入食品の汚染問題/(独)農業・食品産業技術総合研究機構

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家畜用輸入飼料「トウモロコシ」に潜む汚染リスク
無害化技術と国産エコフィードの普及が急務

トウモロコシ

世界のトウモロコシ生産量の5割がアメリカ産で、日本に輸入されるトウモロコシの95%が米国産。
うち、亜熱帯に属するミシシッピー川流域はアフラトキシンが生成しやすい。

事故米騒動で発覚したアフラトキシンは、死亡事例もあるほど強力な天然の発ガン物質で、無害化するには250℃以上での加熱が必要だ。実は、事故米は氷山の一角にすぎず、9割以上を輸入に頼る飼料用トウモロコシでも年によっては4割がアフラトキシンに汚染されているという。矢部希見子氏ら(農業・食品産業技術研究機構)が開発したキノコの成分を用いたアフラトキシン無害化技術に注目が集まっている。

農水省が売却した「事故米」が食用として流通した汚染米不正転売事件。コメを汚染していたのは、主に有機リン系の農薬成分メタミドホスと、カビ毒の一種アフラトキシンである。メタミドホスについては、中国産冷凍ギョーザで有名になったこともあり、事件のキーワードのように騒がれた。一方、アフラトキシンについては「カビ毒」という一見「よくあるもの」のように表現され、軽視される傾向がある。
しかし、アフラトキシンは、パンやお餅に生えるカビとはまったく異なる「天然物中で最強の発ガン性物質」(東京都健康安全研究センター)。「調理加工では減少せず、ほとんどそのまま食品中に残存する」(同)。急性毒性も強く、アフラトキシンが作られやすい高温多湿の熱帯地域では、死亡事例も少なくない。

キノコの成分で「最強の発ガン性物質」を分解

いったん農作物に発生してしまったアフラトキシンを除去するのは難しい。熱によって分解するには250℃以上もの高温が必要。アンモニアガスで無毒化処理するなどの方法もあるが、農作物そのものを変質させてしまうため、食用としてはもちろん、飼料にさえ使えなくなってしまう。 新たな無毒化の手法が求められる中、(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所では「食用キノコを用いたアフラトキシンの分解」という研究が行なわれた。 一般にキノコと呼ばれる担子菌は、木材を腐敗させる木材腐朽菌として知られており、有害物質を分解する酵素をつくる。

同研究所の矢部希見子氏(食品バイオテクノロジー研究領域生物機能制御ユニット長)らは、特にヒラタケなどの食用キノコに着目し、カビ毒のうち最も毒性の高いアフラトキシンB1(AFB1)に対する分解活性をもつことを見出した。 この研究の結果、化学的にヘミンまたはヘムと呼ばれる構造を含む物質ならば、アフラトキシンを分解できることがわかった。その際、過酸化水素を添付することにより分解効率がさらに高まる。また、アフラトキシンだけでなく、芳香族有害化合物(哺乳瓶や食器から検出されるビスフェノールAなど)に対しても分解活性をもつことが見出された。 矢部氏らは2007年、この研究の結果である「アフラトキシン等有害物質の分解用組成物」で特許を出願している。安価で、食品に適した効率的な無毒化方法として注目される。

輸入トウモロコシからアフラトキシンB1を検出

養豚場の豚

日本は年間1,600万トン超のトウモロコシを輸入しているが、そのうち1,200万トンは飼料用。『飼料月報』、(社)日本養豚協会などによると、養豚用飼料の約5割がトウモロコシとなっている。

牛

19世紀まで牛は牧草だけで育てられていたが、穀物を餌に与えると肉質が柔らかくなることから、19世紀半ば以降、飼料として大量の穀物(トウモロコシ、大豆など)を食べさせることが一般化した。今日、食肉用の柔らかい肉質のアンガス種(松阪牛、丹波牛もアンガス種との配合で生まれた)。牛を1kg太らせるには約8倍の穀物が必要とされる。

アフラトキシンB1を含んだ飼料を牛が食べると、体内で変化し、アフラトキシンM1となって牛乳中に検出されことがある。 矢部氏らは、市販の牛乳にアフラトキシンM1を添付して汚染牛乳をつくり、ヘミンによる分解を試みたところ、30℃で6時間後にアフラトキシンM1が36%消失することを確認している。

こうした実験が行なわれたことからもわかるように、食料や飼料のアフラトキシン汚染は、かねてから問題視されていた。 1988年には配合飼料中のアフラトキシンB1の基準値が設定され、輸入トウモロコシなどについて検査が始まった。また、トウモロコシが主原料となる配合飼料についても、農林水産消費安全技術センターが検査を行なっている。アフラトキシン汚染の度合いは気候条件によって左右されるが、年によっては40%以上の確率で検出されている。 トウモロコシの95%以上はアメリカから輸入されており、その産地であるミシシッピー川沿いのコーンベルトはアフラトキシン生成菌が繁殖しやすい亜熱帯地域である。


年度(平成) 検出率(%)
10 21.5
11 11.9
12 8.3
13 5.8
14 20.0
15 41.5
16 13.0
17 22.6
18 56.3
19 45.2
試料点数 定量限界以上の点数 平均値
(μg/kg)
最高値
(μg/kg)
精白米 77 0 - -
そば粉 28 2 0.04 0.8
ハトムギ 18 7 0.83 9.0
ピーナッツ 90 1 0.05 4.9
ピーナッツバター 61 21 0.27 2.6
アーモンド 15 5 0.14 0.9
チョコレート 32 12 0.09 0.9
香辛料 21 5 0.07 1.0

(左)米国産輸入トウモロコシ中のアフラトキシンB1検出率
  (右)食品中のアフラトキシンB1濃度(平成16~18年度)
  ※表は共に農林水産消費安全技術センターのモニタリング調査による

畜産農家も問題視 出所の確かなエコフィードに注目

日本の畜産はアメリカからの輸入飼料に依存している。国内ではアフラトキシンは発生しないが、輸入飼料に含まれている可能性がある以上、被害は避けられないと思われる。また、アフラトキシン以外の有害なカビ毒も多数存在する。 畜産の世界では、家畜の病気、食欲減退、分娩率の低下、分娩事故などとカビ毒の関係の可能性が疑われており、「カビ吸着剤」も市販されている。虫が食った跡などがあるとカビが発生しやすいことから「防除効果のある遺伝子組み替え作物のほうが安全」という意見もある。 そんな中、畜産の現場で注目されているのは出所の確かな飼料である。たとえば食品残さを飼料化する「エコフィード」への取り組みにより、飼料を国内で調達でき、輸入飼料の高騰への対策にもなる。

食品残さを利用したエコフィードによる養豚を推進している獣医師の高橋巧一氏は次のように語る。 「安易なエコフィード製造は、エコフィード全体の信頼性を損ねかねないため、『食品残さ飼料化の安全性確保のためのガイドライン』を定め、原料自体の安全性やトレーサビリティの確立を含めた慎重な取り組みが進められている」 ただし、国産飼料ですべてをまかなうことは不可能のようだ。 「エコフィードや飼料米への取り組みは増えるだろうが、約970万頭いると言われる豚のうち、国産エコフィードで肥育できるのは、最大で1/3。残り2/3については輸入に頼らざるをえない。万一問題が発生しても、速やかに原因究明と解決が図られるような仕組みを準備していくことが大切」(同高橋氏) 食の安全を守るためには、無害化技術の普及もさることながら、国産飼料の増産と、サプライチェーン全体における透明化、そして「有事」を想定したリスク管理の仕組みづくりが欠かせない。

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