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米経済政策/ブルース・ストークス氏インタビュー

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グリーン・ニューディール政策展望は二段構え
短期の雇用創出と長期のイノベーション戦略

オバマ大統領就任を目前に控え、環境エネルギー政策ブレーンの1人、ブルース・ストークス氏が来日した。就任後の経済政策として、省エネ対策により250万人のグリーン雇用創出構想を打ち出したオバマ政権の環境エネルギー政策に注目が集まるなか、グリーン・ニューディール政策の行方を聞いた。

ブルース・ストークス氏

ブルース・ストークス氏
環境エネルギーに関する政策提言を行ってきた米有力シンクタンクの創設者で、ワシントンを拠点とするナショナル・ジャーナル誌の国際経済コラムニスト。ドイツのマーシャル基金のジャーナリズム・フェロー。50ヵ国、4万8000人が加盟する国際化や近代化、民主化と外交政策、世界におけるアメリカの役割に関する価値観や態度の変化・変容に関する調査機関、ピュー調査センターの主任研究員もつとめる。公共ラジオ放送のマーケット情報番組のレギュラー・コメンテーター。1996年から2002年まで環大西洋政策ネットワークの米国における報告者、外交評議会のシニア・フェローを歴任。共著に『日米経済関係の再構築』、編著に『対アジア貿易における米欧協力―パートナーであると同時に競争者として』などがある。


公共機関の省エネ施工による250万人の雇用創出策の効果をどうみているか。

私はオバマ氏の経済チームが最初に省エネ対策をはじめとするグリーン雇用政策を打ち出した意義は、目先の雇用対策よりも、国民のマインド(考え方)に対して働きかけるという点で重要だと考えている。前政権では地球温暖化対策は政策論議の遡上にすらあがっていなかったのに対して、オバマ政権は長期的なゴールを明示しており、最初の経済政策にグリーン雇用創出を打ち出したことは歴史的な変革が端緒についたといってもいい。

とはいえ、GDP14兆ドル、労働人口1.5億人という巨大な米経済にとって、250万人の雇用創出の経済効果はいわば焼け石に水だ。人口増加率を考えただけでも、アメリカは毎年毎年数100万単位の雇用を生み出さなければならない。つまり、米経済はもっと長期的で持続可能な社会を目指す構造改革をもたらすような政策を必要としているということだ。

構造改革のため、米政府はどんな政策を必要としているのか。日本が協力できるとすればどんなことか。

公共設備の省エネ施工など、今回の短期的な雇用対策には高度な教育訓練は不要だが、持続可能な経済体制のためには技術開発やイノベーションが欠かせない。それには人材を教育するための国家戦略が不可欠であり、継続的な投資も必要だ。 省エネはじめ持続可能なエネルギー政策のあり方や技術開発に取組むにあたり、1970年代の石油危機以来、それに取組んできた日本から多くを学ぶべきだろう。

たとえば、東京電力の原発4割、天然ガス4割、石炭火力1割というエネルギーでのベスト・ミックスという考え方がある。このなかで石炭火力がもっとも多くのCO2を排出するが、アメリカはいまでも電力の半分を石炭火力に頼っている。これらは米国地域経済活性と密接に連動している。米国版ベスト・ミックスとは何かを問い同時に製造業のエネルギー消費も見直すべきだと思う。たとえば、トヨタ生産方式は世界に普及させるべきものの1つだ。トヨタは「カイゼン」を恒常化することにより、世界でもっとも効率的な生産活動を実現しているからだ。

2009年、日米安保締結から50年を迎え、日米関係はどう変わるか。

これまでのアメリカは始祖的市場原理主義で成長してきた。しかし、現下の命題は持続可能な社会の構築のために始祖的なものと異なるより高度のものが必要だ。規制とインセンティブを組合わせ、民間企業のイノベーションを政策誘導でなければならない。

ここに新たな日米協力の意義がある。日米は政府と民間企業の関係において対極的な経験をもつ。日本は過剰な規制による弊害、アメリカは行き過ぎた市場原理による弊害をともに経験してきた。互いのよい面と悪い面を知識として共有することが持続可能な社会の構築のため、そして環境テクノロジーの技術革新のために不可欠である。

COP15について、ポスト京都枠組みにアメリカが参加する見通しはどうか。

このままではCOP15でポスト京都枠組みへの参加は難しいとみている。1970年代から省エネに取組み、ゴミの分別回収が当たり前の日本とは異なり、アメリカではまだそうした議論が始まってさえなく、すべてはこれからだ。しかし、COP15では中国やインドといった主要排出国がアメリカの非加盟を言い訳にする余地を与えるのは好ましくない。そこで、政権中枢に近い関係者のあいだではCOP15プラスαの会合が必要なのではないかという声があがっている。

アメリカでは、まず国民の認識を変えることが必要だ。「省エネ、そしてエコ・マインドの確立は自分たちの日々の生活ために役立つ」という認識を国民一人ひとりがもつことでアメリカは変わる。オバマ政権がまず着手すべき点もそこだ。

聞き手:武田修三郎氏
有限会社武田アンド・アソシエイツ代表取締役。現在、日本産学フォーラム事務局長(1992年創立以来)。また早稲田大学総長室参与および早稲田大学大学院公共経営研究科教授、日米戦略アドバイザリーのシニアアドバイザー、世界学長会議(IAUP)理事等を兼務。慶応義塾大学工学部計測工学、同大学修士課程卒業、米国オハイオ州立大学理学部博士号(Ph.D.)取得後、米国ノースカロライナ大学化学部フェローを経て、1975年から2005年3月まで東海大学工学部教授。その間、東京大学生産技術研究所研究員、米国コーネル大学客員教授(平和研究所)、ジョージワシントン大学(ワシントンDC)客員教授(国際関係学科)などのほか、米国外交評議会エネルギー・セキュリティーグループ(ミドルイースト・フォーラム)カウンセラーのほか、政府審議会、総合エネルギー調査会等のメンバーなどを歴任。

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