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米ボーイング、世界各地で第二世代バイオ燃料テストフライト実施

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テストフライトで使用されたボーイング747-300の機体。第3エンジンに混合バイオ燃料=カメリナ(42%)、ジャトロファ(7.5%)、藻(0.5%)のバイオ燃料とジェット燃料(50%)を混合したものが充填された。

2009年1月30日、JALはバイオ燃料によるテストフライトを実施した。同フライトにはボーイング社がコーディネータ役を務め、エンジンメーカーのプラット&ホイットニー社、燃料会社のUOP社、サステナブル・オイル社、日揮ユニバーサルが参加した。ボーイング社にとっては、ヴァージン・アトランティク航空、(イギリス)、ニュージーランド航空、コンチネンタル航空(米国)に次いで4回目のバイオ燃料テストフライトとなった。


ボーイング、世界各地で第二世代バイオ燃料テストフライト実施

テストフライトで使用されたバイオ燃料のサンプル。燃料を供給するUOP社によると、現在の燃料価格は$250/ガロン。原料作物の生産拡大や技術革新により、3~4年のうちに$60~80/バレルを実現したいという。

1月30日、JAL(日本航空)の747-300が仙台沖を目指し、羽田からバイオ燃料のテストフライトに飛び立った。羽田へ戻るまでの約1時間半のあいだ、飛行中の運転状況やエンジン空中停止・再始動といった作動状況を確認、ジェット燃料のみで飛行した際と性能差がないことが実証された。

ボーイングは過去3回、バイオ燃料のテストフライトを実施しており、今回のフライトは、世界では4回目にあたる。北米産のカメリナが使用されたのは今回が初めてだ。カメリナはジャトロファや藻類と並ぶ第二世代バイオ燃料の主要原料となることが期待されている。

第一世代バイオ燃料は、小麦や大豆、とうもろこしなど、食糧との競合が穀物価格の高騰や廃棄物・排水処理の不備、森林伐採などの悪影響が明らかになり、環境NGOなどの批判にさらされてきた。 第二世代バイオ燃料は、食糧との競合や環境への悪影響を避けるべく、各国で研究開発が進められている。

米国防省開発の革新的技術、いよいよ民間航空機へ

ボーイング民間航空機部門排出ガス技術担当 ティム・ラムズ氏

ジェット燃料の代替としての研究開発で世界のトップを走るのが、米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)だ。 今回のテストフライトに参加したボーイング社、UOP社、プラット・アンド・ホイットニー社らは、DARPAのバイオ燃料開発プロジェクトに参加してきた。

「国家プロジェクトを通じ、私たちはバイオマス由来のジェット燃料を従来のエンジンで問題なく作動できることを確認しました。 また、この研究では、さまざまな原材料を用いてテストを行いましたが、北米産のカメリナはバイオ燃料として優れた条件を備えていることが明らかになりました。

カメリナはエネルギー含有量が多いうえ、モンタナ州からワシントン州、カナダまで北米の広い地域での栽培が可能で、しかも、麦などの食用植物との輪作が可能です。 さらに、藻類はまだ収量が十分とはいえませんが、目下ランソウの一種であるハロファイト(Halophyte)についても実用化を目指して研究中です」 (ボーイング民間航空機部門排出ガス技術担当 ティム・ラムズ氏)

アメリカで藻類を原料とする燃料の開発に取り組んでいる企業には、カリフォルニア州ソラザイム(Solazyme)社、ワシントン州インベンチャー・ケミカル(Inventure Chemical)社、アリゾナ州ペトロサン(PetroSun)社などがある。

エンジン改修の必要がないうえ、第一世代の問題点を克服するべく生産される第二世代バイオ燃料には地球温暖化対策としての期待がかかる。

ポスト京都枠組み視野に温暖化対策の業界標準づくりの動き

ボーイング・ジャパン社長
ニコール・パイアセキ氏
1991年に777型のエンジニアとしてボーイング社に入社。その後民間航空機部門セールス・オペレーション、ビジネス戦略チームにも所属。社長就任以前は民間航空機部門ビジネス戦略及びマーケティング担当バイス・プレジデントを務め、ビジネス戦略立案、マーケティング全般を統括していた。エール大学で機械工学の学士、ペンシルベニア大学でMBAを取得、在学中に慶応義塾大学のビジネススクールでのクラスも修了している

航空機が排出するCO2は世界の温室効果ガスの2%を占めると推定されるが、京都議定書の枠組みにはカウントされていない。しかし、航空機の"野放し"状態に危機感を示す声は年々高まっている。航空機由来のCO2の増加が予測されることから、イギリスの航空環境財団(AEF)の広報担当者ジェフ・ガザード氏は「各国政府は、航空輸送の無制限の拡大を抑制する措置をとらなければならない」と主張する(英インディペンデント紙)

同氏が発言の根拠とするのは『商業航空による騒音と排出の世界的傾向:2000~2025年Trends in Global Aviation Noise and Emissions from Commercial Aviation for 2000 to 2025』。同報告書によれば、2025年までに航空機だけで15億トンのCO2排出が見込まれるという。この数字は、EU加盟27カ国の4億5700万人が1年間に排出するCO2の約半分にあたる。

こうした状況を受け、国際航空運送協会(IATA)や国際民間航空機関(ICAO)が基準づくりに着手しはじめた。 ICAOの取組みについて、ボーイング・ジャパン社長のニコール・パイアセキ氏はこう語った。

「ボーイングは従来機と比べて15%の燃費向上を目標に定めています。燃費向上のために、ありとあらゆることを試みています。航空機の運行時だけでなく、生産システムの効率化にも努め、サプライチェーン一体の環境対策にも取組んでいます。

ICAOなどの国際組織では、いま、航空業界として達成可能なレベルを話し合っている段階です。まだ特定のターゲットを定めているわけではありませんが、大事なことは航空機メーカーや航空会社、各国政府などすべての関係者が合意のもとに積極的に温暖化対策を推進できるようなルールをつくることです」

バイオジェット燃料の商業化を推進するカギは顧客の意識

第二世代バイオ燃料の使用は、LCAで化石燃料の半分のCO2排出に抑えられることから、業界として積極的に推進する枠組みがあってもいいだろう。 それにはまず、現状で100倍以上の開きがある従来燃料とバイオジェット燃料の生産コストを縮めなければならない。UOP社の代表者によれば、収量の増加や研究開発により、3~4年のうちに商業化が可能だという。 もちろん、実用化には、燃料会社だけでなく、航空機メーカーや航空会社を含む、業界全体の取組みが必要だ。 「私たちの顧客の7割はアメリカ以外の方々ですから、アメリカ政府が京都議定書にサインしていなくとも、航空機メーカーである私たちにとって気候変動対策は喫緊の課題です。研究開発費の7割を気候変動対策に投じ、チャレンジを続けています」(ニコール・パイアセキ氏) 世界的な地球環境問題への意識の高まりを受け、ボーイング社は今後も研究開発を積極的に推進していく方針を示す。世界の航空産業をリードする取組みに期待したい。

過去4回のバイオ燃料テストフライト概要

2008年2月24日 ヴァージンアトランティック(VS)航空 ボーイング747-400型機
ババスヤシとココナツから抽出した油(ブラジル産)を4つの燃料タンクの1つに充填して飛行

英VS社は米GE系航空エンジン製造会社GEアビエーションと共同で、航空機向けのバイオ燃料の研究に取り組み、世界初のバイオ燃料フライトを実施。4基のエンジンのうち1基をバイオ燃料に、残りの3基は従来のケロシンを充填。機体もエンジンも特別に改造なしで無事テストフライトを終えた。燃料供給を担ったのは米シアトルを拠点とするインペリアム・リニューアブルズ社。食糧の需給に影響を与えない点がメリットとされる。VS社は「環境に優しい航空産業の実現に向けた一歩」と意義を強調するも、一部の環境団体から食糧との競合を指摘された。その後は食糧と競合しない第二世代バイオ燃料の実用化を推進している。

2008年12月30日
ニュージーランド(NZ)航空 ボーイング747-400型機
ジャトロファから抽出した油を4つの燃料タンクの1つに充填して飛行

ロールス・ロイス社、ハネウェル社との共同プロジェクトで、4基あるエンジンのうち1基の燃料に、ジャトロファ油を混合したジェット燃料を使用。オークランド空港で2時間のテスト飛行を行い、離陸、着陸に成功した。ジャトロファの商業用飛行機への使用は今回がはじめて。ジャトロファのバイオジェット燃料はテラソル・エナジー社が提供する。ジャトロファはインドの準乾燥地帯原産の多肉植物で、やせた土地とわずかな水で育つことから世界中が注目し、東南アジアなど各地でプランテーション栽培が活発化、自動車やトラック用燃料としての使用量が増えている。国際航空運送協会(IATA)は、ジャトロファを次世代の中心的バイオ燃料と位置づける。しかし、急速なジャトロファ・プランテーション拡大で、農民が耕作地を奪われているとの批判も浮上してきている。

2009年1月7日
コンチネンタル(CA)航空 ボーイング737-800型機
ジャトロファと藻から抽出した油を燃料タンクの1つに充填して飛行

CA社は、CFMインターナショナル製のCFM56-7Bエンジンを搭載した、ボーイング737-800型機の2つのエンジンの1つの燃料タンクに通常のジェット燃料を、もう1つに新開発のバイオ燃料を半分混ぜた混合燃料を使用。ヒューストン空港で行われた試験飛行では、空中に舞い上がったあと、急加速・減速したり、エンジンを停止して再起動させたりするテストを繰り返した。CA社はGEアビエーションなどと提携し、9カ月かけて試験飛行の準備を進めてきた。CO2や大気汚染の原因となる硫黄分の排出を減らす効果が期待できることから、CA社らは5年以内の実用化を目指すという。藻類を含むバイオ燃料のテストフライトは世界初。
※CFMは、サフラン・グループのスネクマ社とGEの同額出資による合弁会社

2008年1月30日
日本航空(JAL) ボーイング747-300型機
カメリナ、ジャトロファ、藻から製造したバイオ燃料とジェット燃料を50%ずつを混合した「混合バイオジェット燃料」を使用

JAL、ボーイング社、プラット・アンド・ホイットニー社(P&W社)、UOP社、サステナブルオイル社、日揮ユニバーサルの6社が参加、カメリナ+ジャトロファ+藻から生産したバイオジェット燃料を従来のジェット燃料(ケロシン)と50%ずつ混合した「混合バイオジェット燃料」を燃料タンク4基のうち1基に使用。北米産のカメリナを主原料とした世界初のデモフライトとなった。羽田から仙台沖を飛行、約1時間半で羽田に戻った。主原料のカメリナは、米国北部や北ヨーロッパ、中央アジアなど温帯に成育するアブラナ科の植物。種子から採れる油は従来ランプ油、化粧品などに使用されてきた。小麦などの輪作作物としても使用され、乾燥地や高地でも育つため、食糧や水との競合も避けられることから、次世代バイオ燃料として注目されている。

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