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「地球環境税」環境省が7手法の課題を整理

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産業界は反対だが、国際動向には注視必要

環境省の地球環境税等研究会はこのほど、これまでの検討結果をまとめた報告書を公表した。今年12月に開催されるCOP15で地球環境税に関する国際的な合意を得ることは容易ではないが、いずれ経済活動に影響してくる可能性は捨てきれず、今後の世界の動向いかんでは対策が必要だ。

地球環境税

地球環境税とは、地球温暖化対策に必要な費用や技術開発コストを、国際社会が広く薄く負担する国際連帯税の一種。課税対象や徴収方法、運用方法などの国際ルールは定まっておらず、ノルウェーや中国などいくつかの国々が独自に考え方を提案しているが、いまだ国際的合意に至ったものはない。

今回の報告書では各国案を含め「炭素税型」や「排出量取引制度からの調達型」など7グループの手法に分類され、課題が整理された。国単位で行っている税制を地球規模に拡大するという新たな発想に基づく税制度のため、「どのグループにも大なり小なり問題がある」(環境省)のが現状である。

その中でも「難しい問題がないと思われるのは排出量取引制度からの調達型」(同)だという。炭素クレジットの買取価格の一部を徴収するなどの手法によるもので、厳密には「課税」ではないため税制上の課題は少ない。しかし、実質的には炭素クレジットの値上げを意味しており、排出削減量の一部を炭素クレジットで充てんしようと考えている企業にとっては新たなコスト負担要因になる。

通貨取引に課税する「通貨取引税型」には金融業界が警戒を強めているという。税率は0.005%と小さいが、手数料収入に比べれば決して小さくないというのが理由のようだ。また、全世界同時に実施しなければ新たなタックスヘイブン(租税回避地)を生む恐れもある。

「輸送課税・負担金賦課型」は京都議定書の対象となっていない国際輸送に課金するもの。海運業界などの反発は強そうだ。 地球環境税の今後について各国が同じ方向を向いていない今だからこそ、報告書で現状分析ができた点は評価できる。しかし、国際社会に対する日本としての提案は絞り切れておらず、立場も明確になっていない点で物足りなさは否めない。

COP15では京都議定書以降の中期目標の行方が主要議題になることが予想され、地球環境税については導入の賛否さえ議論されない恐れもあるが、いずれ国際交渉のテーブルに乗せられる可能性は高い。

環境税に関しては、日本鉄鋼業界が2003年に「鉄鋼業に壊滅的な打撃を与える」として明確に反対を表明している。 その根拠として、同業界は1971~1989年度までに環境対策・省エネルギー対策費に3兆円を投入し、20%の省エネルギーを実現しており、さらに1990~2001年度には1兆4000億円の環境対策・省エネルギー対策費を投じ、世界最高のエネルギー効率を達成していることをあげている。さらに、韓国の鉄鋼業界に対する固定資産税等が事業収益の30%と極めて軽く、トータルな税負担が日本の半分と、税制上不利であることをあげている。これに加えて「環境税」が導入されれば、激しい国際競争の中で国際競争力を維持することは難しく、さらに、自動車産業などの競争力にもマイナスであるとして、「環境税」ありきの議論に反対を表明しているのだ。

鉄鋼業界の主張のとおり、日本経済への悪影響を最小化するには、不利な立場で交渉を進めることは避けなければならない。地球環境税は資金拠出のリスクがある反面、先端技術開発費などを獲得できる可能性もある。報告書の次段階として、経済界や産業界も巻き込んだ国際交渉に備えた具体策の議論が必要である。

想定される地球環境税の7つの手法

炭素税型
炭素の排出等に統一課税するタイプ
排出量取引制度からの調達型
炭素排出量取引市場における炭素クレジットの一部徴収や、各国に割り当てられた排出枠自体の一定割合をオークションすること等により資金調達するもの
通貨取引課税型
グローバルな通貨取引に課税するもの

輸送課税・負担金賦課型
京都議定書の対象外である航空機・船舶等による国際輸送に対して、税やそれ以外の形(例:負担金)で賦課するもの

国家予算による資金拠出(又は信用創出)型
各国の国家予算から国際機関等への追加拠出を行うものや、各国の将来の資金拠出に係るコミットメントを担保に、国際機関が金融市場での債券発行により資金調達するものを含む

炭素クレジット付与による資金誘導型
CDMに代表されるような、炭素クレジットによりインセンティブを付与し資金を誘導するもの

その他
「多国籍企業への課税」、「武器取引税」など

「地球環境税等研究会報告書」より抜粋

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