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熱帯泥炭地のCO2排出量、長期測定に成功 北大・JICAなど

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熱帯泥炭地のCO2排出量、長期測定に成功 北大・JICAなど

北海道大学、科学技術振興機構(JST)、国際協力機構(JICA)は、熱帯泥炭地のCO2排出量を、世界で初めて長期・連続観測することに成功したと発表した。

その結果、熱帯泥炭地では、森林によるCO2吸収を考慮してもCO2フラックス(CO2の輸送量を示し、プラスであればCO2排出、マイナスであればCO2吸収となる)は常にプラス(CO2排出)で、環境撹乱(森林伐採、排水)が進むとCO2排出量が大きくなり、エルニーニョの年(乾燥年)にCO2排出量は最大となることを世界で初めて実証した。

また、熱帯泥炭地のCO2排出量は、地下水位の低下に対して単純な増加を示すことも判明した。よって、地下水位からCO2排出量を類推することができ、衛星データの利用により広い地域での炭素排出量の推定も可能になった。これにより熱帯泥炭地の炭素管理が現実的となり、インドネシア国内やREDDプラスにおける制度化など、国際的なカーボン・オフセット制度への基準が適用される。

インドネシアの熱帯泥炭地は、地球上の熱帯地域に分布する泥炭湿地の面積の半分以上を占め、多量の炭素が蓄積している。ところが、1990年代からこの地域の開発が急速に進み、それに伴う地下水位の低下と乾燥化、さらには泥炭火災により、インドネシアの熱帯泥炭地は膨大なCO2の排出源となりつつある。その1年あたりの排出量は日本の年間排出量に匹敵するという報告もある。このため熱帯泥炭地からのCO2排出を、どう把握し、どう管理していくかが課題となっていた。

そこで、本プロジェクトは、泥炭地から排出されるCO2の定量的な評価を一つの柱に据え、中部カリマンタン州にあるメガライスプロジェクト(MRP)地域、開発地域外の泥炭湿地林などの熱帯泥炭地を対象とし、熱帯泥炭からのCO2排出量を抑制するための統合的泥炭地管理システムを構築し、地球温暖化抑止に貢献することを目的にスタートした。

手法としては、熱帯泥炭地が大気から吸収する、あるいは大気へ排出するCO2量(CO2フラックス)を測定するために、インドネシア中部カリマンタン州で、環境撹乱(森林伐採、排水)の程度が異なる3つの生態系(熱帯泥炭林のうち、未排水の泥炭林、排水された泥炭林、排水された火災跡地)に観測用のタワーを設置し、4年間のデータを分析した。さらに、排水された火災跡地では泥炭地の微生物分解によるCO2排出量の連続測定にも成功した。その結果、前述の成果を得た。

現在、今回実施した、タワーを利用した渦相関法(超音波風速温度計と赤外線ガス分析計を用いて、大気中と陸上生態系の間の二酸化炭素の交換量(フラックス)を直接測定する方法)によるCO2フラックスのモニタリング以外に、より広域での炭素収支を定量化するため、次の2つの方法について試験を行っている。

  1. 日本のCO2観測衛星(GOSAT、いぶき)による地域スケール(中部カリマンタン州)の炭素収支評価
  2. 太陽の直達光観測から大気中CO2濃度を定量化するシステムの開発(火災発生時)

また、衛星を使ったリモートセンシングにより、地下水位を推定する方法が研究チームによって開発され、上記の結果は広く周辺の熱帯泥炭地にもスケールアップできることが明らかとなっている。以上の手法によってCO2フラックスを精度よく把握したうえで、別の研究成果として提案する泥炭火災の予防、火災跡地への植林、堰の設置による地下水位の維持を組み合わせれば、取り組みによって削減されたCO2の排出量が把握でき、熱帯泥炭地における炭素管理が可能となる。

熱帯泥炭地からのGHG排出削減量が精度よくモニタリングできれば、気候変動枠組み条約(UNFCCC)におけるREDDプラスおよび検討中の高炭素貯蔵の生態系に関わる枠組みや、日本との2国間オフセット・クレジット制度(JCM)などへも適用可能となることが期待されている。

本研究は、JSTとJICAによる地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の一環として行われ、北海道大学やインドネシア国家標準庁(BSN)などが参加している。研究期間は平成20年10月~平成26年3月。

REDDは「Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries(開発途上国における森林減少・劣化などによる温室効果ガス排出量の削減)」の略称。開発途上国における森林減少・劣化の抑制や森林保全によるGHG排出量の減少に、経済的なインセンティブを付与することにより、排出削減を促進させようという国際的な取り組み。REDDが森林減少や劣化の抑制だけを対象とするのに対し、REDDプラスは森林保全、持続可能な森林経営および森林炭素蓄積の増加に関する取り組みを含んでいる。

【参考】
JST - 熱帯泥炭地のCO2排出量を世界で初めて測定

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