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東大、わずか0.3Vで動くトランジスタを新開発 IT機器の省エネ化を促進

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東京大学は、従来のトランジスタと比べて極めて低い0.3V程度の電圧で動作しうる、トンネル電流を用いた新しいトランジスタの開発に成功した。亜鉛を用いた新しい接合形成技術により、従来のトランジスタとほぼ同等の構造で高い性能を有する。新しいトランジスタの開発により、IT機器の大幅な省電力化をもたらすと共に、バッテリー不要なLSI(集積回路のうち素子の集積度が1000個~10万個程度のもの)など新たな応用も期待されている。

IT機器が消費する電力が急激に増加する中、集積回路の低電圧化の限界とIT機器の消費エネルギーの増大が課題となっている。IT機器の消費電力の多くは、LSIチップに起因していることから、エネルギー利用の飛躍的な高効率化を実現するためには、LSIチップの論理演算に使われているMOSトランジスタの消費電力の低減、特に電源電圧の低減が課題となっている。

しかし、論理演算において信号のオン・オフを司るこれまでのMOSトランジスタでは、原理的にオン状態とオフ状態の電流をわずかな電圧変化で切り替えることができず、本質的に電源電圧を下げられないという問題があった。

この問題を解決するために、従来のMOSトランジスタにおける電流のオン・オフ機構と原理の異なる新しい素子が必要とされている。新原理の素子として、電子がエネルギー障壁を量子力学的にトンネリングする際のトンネル電流を利用し、これをゲート電極により制御するトンネル電界効果トランジスタ(トンネルFET)が、近年注目されている。

しかし、トンネルFETはまだ研究途上で、これまでの報告例では、電流をわずかな電圧変化で急峻に切り替えようとしても、オン電流とオフ電流の差を大きくとることができなかった。また、これまでの多くのトンネルFETでは、縦型構造など従来のMOSトランジスタとは異なる素子構造が取られるため、現在の半導体技術を転用しにくく作製が困難という問題もあった。

今回、従来のMOSトランジスタとほぼ同等の素子構造を用いながら、亜鉛の拡散による急峻な不純物分布を持つ接合を導入することで、新しいトンネル電流トランジスタを実現。ゲート電圧のわずかな変化により大きな電流変化をもたらすと共に、素子のオン状態とオフ状態での電流比を世界最高値にまで高めることに成功した。

新しいトンネルFET、特に現在のSiトランジスタ工程と整合性のよい方式が実現されれば、トンネルFETは、現存する半導体製造工程に直ちに組み込まれ、現在のSi MOSトランジスタとも容易に集積化され、用途や適用例が拡大することが期待される。

中でもトンネルFET技術は、これまでの半導体分野の進展を支えてきた微細化に頼らず低消費電力化が実現できるため、現在、曲がり角を迎えている微細化の課題を解決し、特に日本の半導体産業の活性化と再生につながる重要な技術となる可能性を秘めていると言える。

一方、製品応用においては、極低消費電力素子が必要な分野は既に多く存在し、センサーネットワークや自ら発電をする集積回路など、消費電力を極限的に下げることへの要請は数多く存在しているため、従来の半導体集積回路技術では実現できなかった新たな応用分野や市場が出現、拡大し、結果として、半導体集積回路の応用領域が大きく広がっていくことが期待される。

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