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有機太陽電池の変換効率、理論上の限界が判明 最大は約21%

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有機太陽電池の変換効率、理論上の限界が判明 最大は約21%

産業技術総合研究所は、新世代の太陽電池の一つとして注目されている有機太陽電池の光電変換効率の理論限界を算出した。この成果は、有機太陽電池の光電変換効率はどこまで向上できるかという研究開発の指針となることが期待される。

シリコンなどの無機半導体の太陽電池については、ShockleyとQueisserにより1961年に光電変換効率の理論的な限界として約30%が示されている。今回、これをもとに、無機太陽電池と有機太陽電池の、光を吸収した後に電気を生み出す機構(電荷分離機構)の違いを考慮に入れて、有機太陽電池の光電変換効率の理論的限界をシュミレーションした。また、有機太陽電池が最も高い効率を示す光の波長を理論計算により決定し、光を吸収する有機分子(主にドナー)選択の指針を与えている。

電荷分離に必要な余剰エネルギーとして0.4eVを用いて光電変換効率の理論限界を計算すると、太陽電池が吸収できる光エネルギーの最小値が1.5eV(光の波長では827nm)の場合に最大値である約21%となった。

この理論的に計算された単接合の有機太陽電池の光電変換効率の限界値21%は、現状の効率である10~12%より十分高く、今後、材料の選択や改良、構造の最適化によって光電変換効率のさらなる向上が期待できることを示している。今後は理論限界との差の要因を解明し、高効率化のための課題の抽出とその解決へと研究開発を展開していく予定である。

シリコンなどの無機物やガリウムヒ素などの無機化合物を用いる電池を無機太陽電池といい、光吸収と電流の発生に有機化合物を用いる電池を有機太陽電池という。有機太陽電池は有機材料特有の軽量で薄く柔らかい特性を持っているために、これまで太陽電池を設置しにくかった場所や用途での発電を可能にする新世代の太陽電池として期待されている。概ね安価な材料であるが、光電変換効率や耐久性の向上が技術課題であった。

しかし、近年、光電変換効率は急速に向上しており、アモルファスシリコン太陽電池並みの10%を超える変換効率が報告されている。このため、有機太陽電池の変換効率をどこまで向上できるのかという点に関心が集まっている。

シリコンなどの無機半導体の太陽電池では、近年、実際の光電変換効率が、理論的な限界とされる約30%の値に近づいてきた。そのため、最近の研究開発は、多接合型太陽電池、集光型太陽電池など、ShockleyとQueisserの理論では考慮されていなかった機構を導入することによる効率向上へと展開されている。一方、有機太陽電池の光電変換効率も急伸し、どこまで向上できるのかという指針が必要なレベルに達しており、ShockleyとQueisserの理論のような限界効率を求めることが望まれていた。

産総研は、有機太陽電池の高効率化と耐久性の向上を目指して、太陽光発電工学研究センターを中心に、環境・エネルギー、計測・計量標準、ナノテクノロジー・材料・製造のさまざまな分野の研究員が連携して分野横断的な研究開発を行ってきた。今回の有機太陽電池の光電変換効率の理論限界の検討は、産総研内のさまざまな分野の研究員からなる有機太陽電池限界効率検討会にて行われた。

研究の内容の概要は以下の通り。有機太陽電池の光電変換効率の理論限界を算出するに当たり、無機半導体の理論を適用するのは妥当ではないであろうと考えられていた。有機物質では正負電荷間のクーロン相互作用(荷電粒子間に働く静電相互作用。同じ符号の荷電粒子では反発力となり、異なる符号の荷電粒子では引力となる。クーロン相互作用の強さは、誘電率に反比例する)が強いため、光を吸収して正負電荷が強く束縛された励起子(正電荷と負電荷は互いに引力で束縛される。この束縛状態をいう)が生成される。

有機物質の励起子の結合エネルギーは、クーロン相互作用に基づいて見積もると最低でも熱エネルギーの10倍以上である。一種類の有機物質では励起子の電荷分離が十分でないため、有機太陽電池は、正イオンになりやすい有機物質と負イオンになりやすい有機物質の二種類で構成され、これらの物質の界面で励起子となっている電荷が分かれて電気が生まれる。

本研究では電荷分離に必要な余剰エネルギーに着目した。ShockleyとQueisserの理論の方法で電荷分離に必要な余剰エネルギーを考慮すると電荷再結合の速度が増加し、その結果、電圧と電流が変化することを示した。

本研 束縛状態にある負電荷と正電荷間の距離を1nm、誘電率を有機分子で一般的な値3.5としてクーロン相互作用を用いると、電荷分離に必要な余剰エネルギーは0.3~0.4eVと計算された。他の相互作用もあるため、この値は下限であると考えられるが、これまで報告されている余剰エネルギーの最低値とほぼ同じである。電荷分離に必要な余剰エネルギーとして0.4eVを用いて光電変換効率の理論限界を計算した。

【参考】
産総研 - 有機太陽電池の光電変換効率の理論限界をシミュレーション

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