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「2050年に世界の平均気温は2度以上上がる」 他に方法がないか研究者が議論

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環境省は、7月2日(木)に中国・北京にて、日中両国をはじめ欧米各国の研究者等が参加して開催された「気候変動に係る日中政策研究ワークショップ」の結果概要をとりまとめ公表した。

議題は、各国における気候変動政策・対策や2020年以降の各国の約束草案(温室効果ガス削減の目標等)、気候変動に係る新たな枠組み交渉、長期目標とのギャップを埋めるための国際的・地域的な協力のあり方等。

IPCC第5次評価報告書を踏まえ、2050年までの長期的な温室効果ガス排出削減として、産業革命前に比べて気温上昇を2度未満(2度目標)に抑えることが目標とされている。

このワークショップでは、これまでの議論を踏まえ、中国・日本・米国・EU等の主要排出国の目標を束ねても、2度目標を達成できない可能性が高いため、これらの国・地域に対して更なる排出削減を促すために研究者として何ができるかといった問題提起がなされた。

そのため、COP21で、温室効果ガス削減に向けた新たな枠組みが構築された後も、各国がどの程度、何が実現できるのかを考えていく必要があること、また、各国の目標は柔軟性があるべきであり、将来調整ができるようなものとすべき等の議論が行われた。

結果概要

1. 各国の気候変動政策・対策や2020年以降の各国の約束草案

中国からは、公式に発表された約束草案(INDC)のうち、2030年までに2005年比でGDP単位当たり二酸化炭素(CO2)排出量を60~65%削減すること(および分野別の削減シナリオ)、2030年前後にCO2排出量のピークを達成する見込みであることのほか、地域・都市における低炭素化パイロット事業、地域の気候変動政策の改善策、省エネ再生可能エネルギーの現状と課題含む政策や対策、適応の取り組み等について発表が行われた。参加者より、ピークアウトの時期、削減目標の妥当性、CCSの導入見込み、2度目標との関連性、目標の野心度等について質疑が行われた。

日本からは、INDCドラフトの概要や2020年目標の達成に向けた政策、米国からは、国内外での適応の優先分野、コペンハーゲン合意以降、2020年までの削減見込み、2025年目標とクリーンエネルギー開発や省エネ政策などによる排出削減政策の概要、EUからは、気候変動の主流化の取り組み(2020年・2030年目標、長期目標(2050年ロードマップ))、目標達成に向けた行動等が発表された。

2. 気候変動に係る新たな枠組み交渉(排出削減における透明性のあり方や適応における報告制度のあり方なども含む)

日中の研究者より、気候変動に係る新たな枠組みの交渉の経緯と現状、COP21での合意に対する期待、COP21以降の課題等について紹介された後、温室効果ガス(GHG)インベントリや測定・報告・検証(MRV)に係る専門家らより、各国の様々な形態の約束草案における排出削減のMRVの方法、GHG以外の目標の扱い、実施される行動の測り方などの課題、途上国による国別報告書と隔年報告書の提出状況及びそのMRVの現状等について問題意識が共有された。さらに、新たな枠組みにおける適応の報告や情報共有のあり方についても、既存の取り組みを踏まえた考え方等が示された。

参加者からは、実際に途上国においてMRVの実施があまり進んでいないのは、GHGインベントリの整備など、データ収集や統計の整備が遅れているからではないかといった指摘があった。

3.長期目標とのギャップを埋めるための国際的・地域的な協力のあり方

中国の研究者より、脱炭素化(Decarbonization)のための戦略分析において検討された、IPCC AR5の結果に基づく2100年までの削減のシナリオとともに、地域別の石炭消費の削減シナリオなどに基づくボトムアップの分析の結果が紹介された。2010年から2050年までの脱炭素化の牽引力として、電力部門における排出削減、省エネの推進、再生可能エネルギーの更なる開発、原発の開発等が挙げられた。一方、経済成長、産業構造、都市化のパターン、低炭素エネルギーの利用など、さまざまな不確実性が存在することも指摘された。参加者からは、CCSの現状、戦略分析の対象等について質疑が行われた。

日本の研究者より、アジア太平洋統合モデル(AIM)、低炭素アジア研究ネットワークの国際的な研究ネットワーク(LoCARNet)、アジアにおけるGHGインベントリについてのワークショップ(WGIA)における活動の現状、マレーシア・イスカンダール市における持続可能な開発のための科学技術研究パートナーシップ(SATREPS)の優良事例等について発表が行われた。

さらに中国の研究者より、途上国は先進国とは全く異なる経済成長を遂げる必要があることが強調され、そのための挑戦として、貧困削減、環境汚染、気候変動による損害と損失(ロス&ダメージ)、社会的衡平性の維持などが挙げられ、現在の国際協力、二国間協力、知見の共有などの取り組みが紹介され、現在、南南協力の取り組みが限られているため、資金面と技術面での協力が強化されることが必要である旨、強調された。

4. 討論

それまでの議論を踏まえ、中国、日本、米国、EU等の主要排出国の目標を束ねても、2度目標を達成できない可能性が高いため、これらの国・地域に対して更なる排出削減を促すために研究者として何ができるかといった問題提起が行われ、以下のような議論が行われた。

  • 排出削減の問題は、ピークアウト、エネルギー戦略の改善のみならず、低炭素で持続可能な成長を念頭においた経済発展の仕方、都市化の進展に伴う社会インフラ(ビルディングセクター、交通セクターにおける需要増など)のインパクト、産業構造の変遷などのマクロ経済への影響、少子高齢化、大気汚染の改善などの社会問題とも密接に関わっている。
  • COP21に向けた交渉はあと半年行われるが、新たな枠組みが構築されるに過ぎず、枠組みが構築された後も、各国がどの程度、何が実現できるのかを考えていく必要がある。将来、技術革新が進み、産業・社会構造が変わると、2度目標に向けた道筋も変わるため、各国の目標は柔軟性があるべきであり、将来調整ができるようなものとすべき。

このワークショップは、気候変動対策に関する研究面からの知見について日中両国の研究者が意見交換を行うため、環境省が中国エネルギー研究所(能源研)と協力して開催したもの。両国をはじめ欧米各国の政府系・非政府系研究機関等から約50名の担当官、研究者が参加し、活発な意見交換が行われた。環境省からは、田中大臣官房審議官ほかが参加した。

なお、より詳しい内容については後日、環境省のホームページにて公表される予定。

【参考】
環境省 - 「気候変動に係る日中政策研究ワークショップ」の結果について

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