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産総研、安価な新型蓄電池を開発 リチウムイオン電池のかわりとして期待

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図 金属リチウム負極と組み合わせた共融系二次電池

図 金属リチウム負極と組み合わせた共融系二次電池(図は放電している状況)

産業技術総合研究所は8日、三菱自動車工業と共同で、安価で環境に優しい共融系液体を用いた二次電池(共融系二次電池)を開発したと発表した。世界で初めて正極側の活物質に共融系液体を利用した二次電池二次電池で、レアメタルフリーの共融系液体は電解液の役割も兼ねる。高エネルギー密度を有するレドックスフロー電池への展開に期待される。

今後は、負極側にも共融系液体を用いた全共融系型二次電池を含め、優れた性能を示す実用的な共融系電池の開発を推進していく計画だ。

正極側にレアメタルを使わない

二種類の固体物質を共融点組成で混合すると、凝固する温度が大幅に低下する。レアメタルを含まない安価な三塩化鉄六水和物(FeCl3・6H2O)と尿素(CO(NH2)2)を共融点組成で混合して共融系液体とし、これを正極側の活物質として用いた。

正極側の電解液を別途必要とせず、また固体で問題になる構造劣化が生じない点が、電池を構成する上での大きな利点となる。

金属リチウムの負極と組み合わせると、電圧が約3.4V、正極側の体積容量(共融系液体の体積当たりの容量)141mAh/cm3の二次電池として動作した。

なお、実証では、温度が高い場合(40度)は理論容量の97%まで放電電流量が得られたが、温度の低い場合(25度)は60%にとどまり、この改善を今後の課題としてあげる。

リチウムイオン電池のかわりに

近年、環境・エネルギー問題を背景として、携帯電気製品、電気自動車、電力貯蔵などのさまざまな分野で二次電池への要求が高まっている。これらの電源には主にリチウムイオン電池が使用されているが、それを構成する電解液には揮発性の有機溶媒とリチウム塩、また正極にはコバルトやニッケルなどのレアメタルと呼ばれる高価な遷移金属を含む酸化物固体が使われている。これらの材料、特に高価な遷移金属などは回収・精製して再利用できるが、コストや環境負荷といった課題がある。また正極の固体は、繰り返し使用すると充放電の際のリチウムイオンの出入りにより、徐々に構造が壊れていくという問題点もある。

これまでの研究の経緯

産総研は次世代リチウムイオン電池の実用化を目指しており、2008年8月には、電極材料のナノ構造化により大出力化が期待できることを示した。また、金属リチウムを負極に、空気中の酸素を正極に用いた、ハイブリッド系「リチウム-空気電池」の研究開発を行ってきた。現在、他の次世代の二次電池として、非水系リチウム-空気電池、リチウム-硫黄電池、ナトリウムイオン電池と共に、安価で環境に優しい共融系液体を用いた電池(共融系電池)の研究開発を進めている。

用語の説明

共融系液体

冬季に凍結防止剤や融雪剤として塩化ナトリウムや塩化カルシウムが用いられる。水にこれらの薬剤が混じると凝固点が下がる凝固点降下と呼ばれる現象を利用したものであり、塩化ナトリウムの場合、最大、濃度23%で-21度、塩化カルシウムでは32%で-51度まで凝固点が低下する。このような二つの物質を混ぜて最も凝固点が下がった組成とその温度を共晶点または共融点と呼ぶ。この組成から固化した状態を一般に共晶と呼ぶが、逆に融解した液体の状態には明確な名称がないため、ここでは便宜上、共融系液体と呼ぶこととした。

リチウム-空気電池

金属リチウムを負極活物質とし、空気中の酸素を正極活物質として構成した電池。リチウムは金属元素のうち最もイオンになりやすい性質があり、これを負極として用いると、正極との電位差が大きく取れ、高い電圧が得られる。またリチウムと酸素はどちらも軽い元素であるため、電池の軽量化や大容量化に有効であり、自動車用電池としての応用が期待されている。電解質として非水系有機電解液、水溶性電解液、有機電解液と水溶性電解液の間に固体電解質の隔膜を入れたハイブリッド電解液、固体電解質を使うものは、それぞれ非水系リチウム-空気電池、水系リチウム-空気電池、ハイブリッド系リチウム-空気電池、全固体型リチウム-空気電池と呼ばれている。

【参考】
産業技術総合研究所 - 安価かつ環境に優しい共融系二次電池を開発

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