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燃えにくい・軽い・車載可能・建材に使える、新開発の太陽電池モジュール

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燃えにくい・軽い・車載可能・建材に使える、新開発の太陽電池モジュール

開発した太陽電池モジュールの外観(左)と、燃焼試験中の様子(右上)、試験後の裏面(右下)

産業技術総合研究所は5日、信越化学工業(東京都千代田区)と共同で、シリコンゴムでできたシート状の封止材を用いて、燃えにくくて軽量な、新しい結晶シリコン太陽電池モジュールを開発したと発表した。

開発した太陽電池モジュールは高い難燃性や軽量化のほか、破損しにくく、簡易に設置できるなどのメリットもあり、新たな用途や従来とは異なる設置・利用法での導入が期待される。

例えば、電気自動車(EV)などの車載用の太陽電池としての使用や、住宅の屋根材一体型としての結晶シリコン太陽電池の利用や壁面への設置などにより、スマートハウスへの利用拡大やネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の実現に貢献できる可能性をあげる。

今後は、現在実施中の温度サイクル試験(-40℃~85℃)や紫外線照射試験などの信頼性評価結果も踏まえて、これらの用途を想定し、モジュールサイズや構造、部材の最適化、必要な信頼性試験などを、製造企業などとも協力して実施していく予定だ。

ガラス基板は使っていない

従来型モジュール(a)と開発した新モジュール(b)の模式図

従来型モジュール(a)と開発した新モジュール(b)の模式図

新しい太陽電池モジュールは、従来型の太陽電池モジュールで用いられていた高重量のガラス基板や可燃性の有機部材を用いていない。

一般的な従来型のモジュールは、結晶シリコン太陽電池を厚さ約3mmの白板強化ガラスでできた表面材、EVA封止材、バックシート(裏面材)で封入したスーパーストレート構造(※1)を取り、反り防止や架台への設置・固定などのためにアルミフレームが取り付けられている。

これに対して、今回作製したモジュールは、厚さ約500μmのシリコンゴムシート封止材と、厚さ約50μmの難燃性の高分子フィルム表面材、裏面材に絶縁処理をしたアルミ合金板で構成され、ガラス表面材を用いないサブストレート構造(※2)であるのが大きな特徴である。

新モジュールではアルミフレームを用いず、アルミ合金の裏面材により直接かつ簡単にモジュールを固定して設置することができる。従来型のモジュールに用いられるガラスやバックシート、アルミフレームなどの部材を削減することで、比較的に高コストのシリコン封止材を利用した場合のモジュール全体のコストの増加を抑制する狙いがある。

また、難燃材料であるシリコン封止材や高分子フィルム表面材と、金属のアルミ合金裏面材を用いることで、モジュール全体を難燃化することができ、さらには、アルミ合金板の厚さを抑えることで軽量化することもできる。今回の試作モジュールは、同じサイズの従来型モジュールの約半分の重量となっている。

開発した新モジュールを用いて、耐衝撃強度、耐荷重強度、燃性評価、高温・高湿下での長期信頼性を確認するための評価試験を行ったところ、優れた信頼性を示した。

もっと安全で、長く使える太陽電池のために

普及が急速に進む太陽電池システムにおいて、今後、長期信頼性や安全性がますます重要となる。しかし、太陽電池モジュールはコスト競争が厳しく、一般的に高コスト化につながる新しい高信頼性モジュールの開発や難燃性部材などの新部材の導入は難しいのが現状である。

産総研では、これまで高信頼性のモジュールや部材の開発、信頼性評価技術の開発などを、民間企業や大学、公的機関と共同で実施してきた。

シリコン封止材は、1980年代に製作された初期の市販の太陽電池モジュールに用いられた実績があり、当時のシリコン封止材を使用した太陽電池モジュールは、設置から現在まで約30年の屋外設置においても安定して発電量を維持している報告例もある。

信越化学は、従来のモジュール製造装置や工程が利用できる太陽電池用のシリコンゴムシート封止材を開発。産総研と共同で、開発したシリコン封止材を用いたモジュールは屋内環境試験において優れた信頼性を示すことを明らかにした(2015年6月22日に産総研がプレス発表)。しかし、シリコン封止材は一般的に用いられるEVA封止材よりも比較的高コストでありEVA封止材の代替とするとモジュールコストの増加を伴うため、シリコン封止材の導入が困難であった。

そこで、両者はシリコン封止材の使用によるモジュールコストの増加を抑制するとともに、難燃性などのシリコンの特長を活かした新しい太陽電池モジュールの開発と信頼性の評価を共同で行い、太陽電池の新たな用途や設置・利用法の開拓を目指すこととした。

※1 スーパーストレート構造
太陽電池モジュールの構造の一種。太陽電池セルの受光面側に白板強化ガラスなどの支持基板があり、その下に透明な封止材で太陽電池セルを封入する方式。一般的な市販モジュールで採用されている。

※2 サブストレート構造
太陽電池モジュールの構造の一つ。太陽電池セル裏側に支持基板があり、その上に透明な封止材で太陽電池セルを封入する方式。支持基板の選択により、モジュールを軽量化しやすいのが特長の一つであるが、封止材は紫外線の影響を受けやすい。

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