九大・双日ら、大気中のCO2を直接回収・利用する装置の活用実証

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(出所:双日)
(出所:双日)

双日(東京都千代田区)と九州大学(福岡県福岡市)、九州電力(同)は3月22日、九州大学が開発中を進める分離膜を用いて大気中からCO2を直接回収(Direct Air Capture:DAC)し、それをその場で燃料等へ資源化・利用する「CO2回収・利用(DAC-U)装置」の用途を共同開発・検証すると発表した。

今回の共同検証では、九州電力による都市開発などでの住宅やビルにおいて、DAC-U装置の活用実証を行うことで地域のカーボンニュートラル実現に貢献することを目指す。

各社の役割について

九州大学では、DACを可能とする分離膜型CO2回収「membrane-based DAC(m-DACTM)装置と、回収したCO2を燃料等へ変換し利用する装置を組み合わせ、CO2回収から炭素燃料製造までを連続・一貫して行う「DAC-U装置」の開発を進めている。この装置は、地産地消型カーボンリサイクル社会構築にむけて新たなソリューションとなることが期待されている。

九州大学はDAC-U装置の技術情報、知見の提供など、双日は、双日イノベーション・テクノロジー研究所(東京都千代田区)を活用したビジネスモデル仮説の検証、九州電力はDAC-U装置の利用者側の立場での用途仮説の検証、実証候補地の検討などを担当する予定。

ユビキタスCO2回収を実現へ

九州大学が研究開発を進めるm-DACTM技術は、従来のCO2分離膜と比べて極めて高いCO2透過性を持つことを特徴としている。このため従来では不可能と考えられてきた分離膜を用いたDAC(m-DACTM)技術が、従来技術の数十分の1以下の面積かつ低エネルギーで実現できる可能性が高まった。

分離膜はCO2吸収液などの薬剤を使わず、分離膜のモジュール化で、必要に応じてCO2回収量を任意に調整することができる。そのため、従来のDAC技術で課題とされていたDACシステム設置に対する地理的な制限が大きく緩和され、多様な装置やサイズで、様々な場所でCO2を回収(ユビキタスCO2回収)することが可能となる。さらに九州大学が開発を進める、電気化学・熱化学反応を利用したCO2変換ユニットと、m-DACTMユニットを連結すれば、「DAC-U装置」が実現される。

なお、この研究開発は、九州大学のカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所とネガティブエミッションテクノロジー研究センターが、内閣府ムーンショット型研究開発事業で取り組んでいるものだ。

大気から人為的かつ直接的にCO2を回収するDAC技術は、カーボンニュートラル、さらにその一歩先を行く「ビヨンドゼロ社会」の実現に向けて、重要な技術として注目されており、世界各国で研究開発が進められている。

2021年九州大学と双日で実用化・事業化推進の覚書

2022年2月に九州大学と双日はm-DACTM技術とそれに関連した最先端CO2活用基盤技術の実用化・事業化推進の覚書を締結し、DAC-U装置の基礎研究開発と社会実装に向けた検討を進めてきた。また、取り組みに賛同する実証実験や用途開発のパートナー企業の参画を募っており、今回九州電力を加えた3社で覚書を締結した。

3社は今後も産学連携体制を基盤にDAC技術の研究開発を促進し、DAC-U装置の用途開発を通じて、社会課題解決とカーボンニュートラルへの取り組みを加速推進していくとしている。

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