日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」実現には、大企業のみならず中小企業の脱炭素化が必須だ。国による補助金やモデル事業の推進により、脱炭素経営へシフトした中小企業も一定数存在しているものの、さらなる裾野の拡大が望まれる。環境省・脱炭素ビジネス推進室室長の杉井 威夫氏に、中小企業の脱炭素化の現状や必要性などについて聞いた。
産業構造上、不可避な中小企業の脱炭素化
2020年に政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言してから4年目に突入した。「温室効果ガス(GHG)46%削減(2013年度比)」を目指す2030年度まで、残された時間が刻々と減っていく中、中小企業が脱炭素経営に舵を切るなら今だと杉井氏は語る。
「日本における中小企業のGHG排出量は、1.2億から2.5億トンと推計され、日本全体の1、2割弱を占めています。割合としてはあまり多くない印象を持つかもしれませんが、サプライチェーンを構成する中小企業による脱炭素化の取り組みは、取引先である大企業に影響を及ぼすため、日本の産業構造上、不可避です。政府による旗揚げ後、まずはスコープ1、2の削減から着手した大企業も、サプライチェーン全体(スコープ3)での排出量削減へと動き始めており、その動きは今後、ますます加速していきます」
2022年、グローバルサプライチェーンに対して2030年までに脱炭素化することを要請したAppleの発表以降、日本国内でも大企業がそのサプライヤーに対して削減目標の設定を行うなど、追従する動きも出てきている。脱炭素化に取り組まない、あるいは取り組みが不十分である企業はサプライチェーンから排除される可能性すらあると杉井氏は指摘する。
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