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新たな企業経営のフェーズ「経営5.0」へ移行せよ/まえがき(連載第1回)(2ページ目)

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これからの時代に求められる経営者の意識

まず「自分(売り手)の豊かさ」を重視した経営を1.0とします。驚くことに、現代においてもこの考えのままで進化を止めた企業は存在します。しかし買い手も気づかないわけはなく、そんな企業は長続きしないというのが実際のところです。

その次に「お客様の豊かさ」も考える経営を2.0とします。このフェーズでは「顧客満足度(CS、カスタマーサティスファクション)」という言葉が飛び交うようになります。

次に「世間(地域社会や業界)の豊かさ」を考える経営が3.0です。いわゆる「三方よし」のことです。近江商人の経営哲学として始まり、現在も多くの企業がこれを掲げているので、耳にしたことや口にしたことがあるかもしれません。ほとんどの企業がここを目指しています。

しかし、さらにその次があります。それは「従業員の豊かさ」まで包含する、「四方(しほう)よし」の4.0です。

近年、「従業員満足度(ES、エンプロイーサティスファクション)」を重視する会社ほど伸びると言われています。「働き方改革」に端を発するように、会社の外だけではなく内側にも目を向けよう、という考えが強まっています。

すでに意識して取り組みを始めている企業や自治体も見られますが、残念ながらまだ全ての企業が十分なレベルに到達したとは言えません。

そして、私が提唱する経営フェーズはさらにその次です。

4.0に加えて「社会全体・地球全体の豊かさ」を意識すること、これが「経営5.0」です。先述したように「地球全体」となると話題のスケールが大きく、自分事には思えないという人もいるでしょう。しかし、目線を変えてみれば少しずつわかってきます。

新聞では連日、「脱炭素」や「CO2削減」といった言葉が飛び交い、自然破壊に関連するニュースが報じられています。世界レベルで、自然環境を守る取り組みが活発化しています。要約すると「未来へ、子供たちへ、世界を残そう」という考えのもと、SDGsは提唱されました。

この考えを事業に取り入れるだけで、経営は少しずつでも確実に好転していくと断言します。それが経営5.0のフェーズに向かうための方法であり、これからの時代で事業を伸ばしていくために必要不可欠なことなのです。

その考えを人でも多くの方に知ってもらいたいと思い、2020年月に『儲かるSDGs危機を乗り越えるための経営戦略』(クロスメディア・パブリッシング刊行)を執筆いたしました。中小企業や自治体がコロナ禍をはじめとした経済危機を乗り越えるための方法として、SDGsの概念を経営に取り込もう、という私の考えをまとめた作品です。

そして本書では、企業や自治体がさらに長期的な発展をするためのブランド戦略について、解説しています。そのために欠かせない考えや具体的な実践方法について、私の体験や実践をもとに展開していきます。

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本書の章ごとの、要点を簡単に解説いたします。

◇序章では、「商品やサービスがいかにしてブランド化していくのか」、その道筋を解説いたします。労働と技術革新とブランディングの3つが本章の大きなテーマです。一見、あまり関わりが薄いようにも思える三つの要素ですが、歴史を振り返ってみると、非常に密接な関わりがあることが見て取れます。本章は総論的な内容になり、「SDGs」の話題もほとんど出てきません。しかし本書で提唱する「SDGs×ブランディング」を実践するための核となる考えを述べました。ブランドの本質に迫る内容になっています。

◇第1章では、経営者が知っておくべき、ブランディングとマーケティングの実情について解説をしています。私がこれまでのキャリアを通して、体験して得た気づきがベースとなっているため、本書でしか語れない内容になっています。この章を読んでいただければ、「なぜ」そして「今」、この「SDGs×ブランディング」というテーマについて知っておく必要があるのか、そのことを理解していただけるはずです。

◇第2章では、ブランディングと日本人の関わりについて解説をしています。日本人がなぜブランディングを苦手としてきたのか。ブランディングを失敗してしまう時の原因は何なのか。掘り下げて解説いたします。

◇第3章では、私がコンサルタントとして長年携わってきた中小企業の、その独自の取り組みと成果について紹介しています。規模や業態は違っても、自社の事業をSDGsと結びつけるための考え方は転用できる部分が多くあるはずです。

◇続く第4章においても、携わった事例を紹介しています。ここでは主に自治体や関連団体の事例を中心に挙げています。

◇第5章では、ブランディングの成功の要因を振り返り、まとめています。

◇終章は、本書の結論にかかっています。

SDGsと企業ブランディングは親和性が高い

冒頭で引用した朝日新聞の調査の他、電通が2021年に実施した調査である「SDGsに関する生活者調査」その第四回(2021年)の結果も、大変興味深いものでした。

本調査では朝日新聞と同様に認知率や認知経路を調べていますが、中でも目を引いたのが、企業のSDGSs活動に対して「活動を知るとその企業のイメージがよくなる」と答えた人が74.9%という結果です。これはかなり多くの人が、SDGsに対して好意や期待を抱いているということの裏づけであるといえます。SDGsと企業ブランディングの親和性が高いことの表れでしょう(出典 電通「SDGsに関する生活者調査」)。

そしてSDGsとは、大企業だけの特権ではありません。むしろ、中小企業だからこそきめ細かにできることがあります。

SDGsブランディングといっても、なにも大きなことを始めなくてもいい。

これまでやってきた事業に、そのエッセンスを少し加えるだけでいいのです。それだけで企業の経営は、利益は、ガラッと変わっていきます。

(序章に続く)

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