都内を飛び交う鳥類に見る、都市部における生態系の変化

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この半世紀の間にも日本の景観は大きく様変わりした。特に都市部では、埋め立てが進み、高層ビルが増え続け、まさにコンクリート・ジャングルと化した。その景観の変化のなかで、生息する生き物たちもさまざまな変遷を遂げ、独特の生態系を築いている。今回は身近な鳥類を例にとって、都市部における生態系の変化を紹介してもらった。

日本で減りゆくスズメ

都会に住むスズメ
都会に住むスズメ

スズメは日本の風景において最もよく見られる鳥類の一種でしたが、近年、その生息数は急速に減少しているといいます。確かに、以前は朝になれば電線に並んで留まるスズメたちの鳴き声が街に響き、庭や公園の広場では、地面に落ちている食べ物を啄む姿が普通に見られていたのに、今ではスズメの姿も鳴き声も遠い存在となっていることに気づかされます。

2009年に鳥類学者の三上修博士が発表した論文によれば、長期間にわたる農作物の被害データおよび駆除・捕獲された個体数データに基づき、日本全国のスズメの生息数は、1990年頃と比較すると20〜50%程度に、1960年頃と比較すると10%程度にまで減っているものと統計的に推定されています。

このほか、秋田県や沖縄県、奈良県、東京都などでも、スズメの減少に関する観察データが1990年代から2000年代にかけて報告されています。

減少の原因としては、水田・空き地・草原など、餌となる植物の種子を採餌する場所が減少したことや、巣を作る場所としての樹洞や茅葺き屋根を持つ木造建築などが減少したこと、さらに天敵であるカラスが増加したことなどが挙げられています。

一方、より新しい時期での調査結果として、2020年にバードリサーチ全国鳥類繁殖分布調査事務局が発表したデータによれば、1990年代におけるスズメの増減と土地利用状況の関係を見てみると、農地率が高いところほどスズメの減少が大きく、都市部では逆に増加傾向にあることが示されています。

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