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東京消防庁、太陽光発電の防火対策を検証 距離規制緩和、感電防止用表示など提言

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東京消防庁、太陽光発電の防火対策を検証 距離規制緩和、感電防止用表示など提言

東京消防庁は、太陽光発電(PV)設備の設置が急速に進んでいることを踏まえ、太陽光発電設備に係る建物へ求める防火安全対策と、消防隊の消火活動中の感電防止対策について検討を行い、その結果を防火安全対策の提言として発表した。

同検討部会において検討された項目と、同会による結論は下記の通り。

  1. PVモジュールの燃焼性状の検証
    →太陽光発電パネルは延焼せず、1m以上離すと重大な熱的影響は与えない
  2. 規制場所へのPVモジュールの設置
    →1m以上離すと重大な熱的影響を与えないため、高架水槽等の距離規制が緩和可能
  3. 消防活動の安全を確保したPVモジュールの設置方法
    →壁材・窓材一体型は非常用侵入口等には設置しない、屋根への設置はスペースを
  4. 防火対象物に求める感電防止対策
    →PVモジュール~パワコン間の直流電流が流れている区間には表示を行うべき

太陽光発電パネルは延焼しない

検討部会の行った調査によると、全国における太陽光発電設備に係る出火箇所別火災件数は、平成20年から25年まで計30件であり、その内、接続箱からの出火が8件、パワーコンディショナからの出火が14件であった。つまり、太陽光発電設備に係る火災は、PVモジュールが出火原因のものはほとんどなく、接続箱、パワコン等から出火するなど通常の電気火災と同様であることが分かった。

さらに、同検討部会はPVモジュールの燃焼性状を検証するための実験を、平成25年11月、東京理科大学火災科学研究センター実験棟において実施した。結果、PVモジュールは火炎を浴びる部分は燃焼するが、この範囲以上に延焼することはないことが分かった。これにより、屋上設備等から延焼したPVモジュールの火炎及び熱等が、隣接する他のPVモジュールを延焼させる可能性は極めて低いことが証明された。

「大火炎」を想定したガスバーナーの炎(加熱出力220kW)を浴びても、太陽光発電パネルは直接火に晒された部分以上には燃え広がらなかった

「大火炎」を想定したガスバーナーの炎(加熱出力220kW)を浴びても、
太陽光発電パネルは直接火に晒された部分以上には燃え広がらなかった

また、燃焼しているPVモジュールから、構成部材であるガラス部材が破損・落下したり、内容物の樹脂が燃焼しながら滴下する場合はあるが、人体に影響を及ぼす製品特有の有毒ガスが発生することはなかった。

以上から、PVモジュール自体が燃焼する際に発生する火炎及び熱等が、1m先の可燃物(屋上設備を構成する部材、樹脂、ゴム等)に重大な熱的影響(発火、溶融)を与えることはないことが分かった。

屋上設置時の消防法令の規制が緩和可能

現在、消防法令では消火用高架水槽や屋上の変電設備など、屋上設備と建築物等の間での延焼を防ぐため、また屋上設備へ重大な火災の影響を与えないため、離隔距離が定められている。

しかし、今回の検証で判明したPVモジュールの燃焼性状により、一定の性能を満たすPVモジュールを使用する場合において、下記のような条件のもと、規制緩和が可能であると結論付けた。

  1. 屋上設備の周囲から点検・操作に必要な距離か、当該設備から周囲1mのどちらか大きい距離を確保する
  2. 不燃性の架台を使用する
  3. 接続箱、パワコン等の付随する太陽光発電機器は、規制場所内には設けない
    (ただし、当該屋上設備又はその他のキュービクルに内蔵されたものは除く)
  4. 規制場所に設置するPVモジュール下方の床(屋根)構造は、建築基準法施行令第136条の2の2に適合、または同等の性能を有するものとする
  5. 規制場所に設置するPVモジュールの下方に、可燃性の配線(当該PVモジュールの配線を除く)・配管等が設置されている場合は、当該配線等に不燃性の被覆又は覆い等を設けるなど延焼防止の措置を行う
規制場所におけるPVモジュールの施工(断面図)

規制場所におけるPVモジュールの施工(断面図)

屋上の規制場所(離隔距離内)へのPVモジュールの緩和設置イメージ

屋上の規制場所(離隔距離内)へのPVモジュールの緩和設置イメージ

非常用侵入口への窓材一体型、屋根全面設置は消火活動ができない

「活動施設」は消防活動を行う場所を指す。消防隊員は入口が施錠されていた場合、破壊器具を使用して内部侵入を試みる

「活動施設」は消防活動を行う場所を指す。消防隊員は入口が施錠されていた場合、破壊器具を使用して内部侵入を試みる

同検討部会では、消防活動の安全を確保した設置方法に関しても検討を行った。現時点ではまだの設置事例は少ないが、新型のPVモジュールに関してはルーバー型や壁に架台等を取り付けPVモジュールを設置する壁設置型、PVモジュール自体が壁材として機能する壁建材型、同様に窓ガラスの機能を有する窓材型などがある。

これらのPVモジュールが非常用侵入口や屋外階段などに取り付けられていた場合、消防隊員が破壊器具で侵入口を確保する際に感電する危険性がある。このため、同検討部会では、これらの消防活動設備の付近には、PVモジュールおよび直流配線の設置を避けるべきとした。

また、屋根へのPVモジュールの設置に関しては、濡れたPVモジュールによる滑落、放水・接触による感電、破損したガラスによる消火ホース破損などの危険があり、屋根全面がPVモジュールで覆われた場合、消防隊員の滑落や感電の危険性が増大する。

このため、同検討部会では、PVモジュールの設置面積が300平方メートル以上の大規模屋根とそれ以外に分け、屋根上に「PVモジュールを設けない部分」を確保することが望ましいとした。

消防活動用通路の配置例(大規模屋根)

消防活動用通路の配置例(大規模屋根)

活動用スペースの配置例 (大規模屋根以外 [※住宅・長屋等を除く])

活動用スペースの配置例 (大規模屋根以外 [※住宅・長屋等を除く])

感電防止のため、直流部分には表示を

今回の提案では、文字の大きさはゴシック体の文字ポイント24程度以上、表示位置は見易い箇所に1ヵ所以上、色は白地に黒文字又は赤文字とした

今回の提案では、文字の大きさはゴシック体の文字ポイント24程度以上、表示位置は見易い箇所に1ヵ所以上、色は白地に黒文字又は赤文字とした

さらに、消防活動時の太陽光発電設備に対する感電防止についても検討が行われた。太陽光発電設備は、直流電力を使用しており光がある限り発電し続ける。このため、感電の危険性が高いPVモジュールからパワコンまでの直流電力が流れている部分において、太陽光発電機器の表示が必要であるとした。

また、パワコンが屋内に設置され、屋内に直流配線の引き込みがある場合には、太陽光発電機器への表示に加え、消防隊員の進入経路(建物入口、電気室入口など)にも警告のための表示をすべきとした。

今後の課題

今回の報告書では、上記に挙げたほか、消防隊員の装備や防火安全対策指導に関する協力体制に関する提言のほか、今後の課題として住宅への防火対策の難しさや再出火防止の方法などが課題として挙げられている。

近年、日本における再生可能エネルギー利用に係る技術革新のスピードは速く、太陽光発電設備についても新しい製品が続々と出現している。同検討部会は、今後も消防機関は、これらの技術進歩の動向に注目し、実態に即した防火安全対策について関係業界と引き続き協議・検討し続けることが必要であるとした。

【参考】
東京消防庁 - 太陽光発電設備に係わる防火安全対策の検討結果

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