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淡水性のラン藻を海水で培養 理研、生産できるアミノ酸が増えることも確認

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淡水性のラン藻を海水で培養 理研、生産できるアミノ酸が増えることも確認

理化学研究所(理研)は8日、淡水性ラン藻の海水培養に成功したと発表した。また、海水培養の際に、リシンやオルニチンなどのアミノ酸量が大幅に増加することを明らかにした。

今回の成果は、ラン藻を使った有用物質生産の実用化に向けて、淡水利用の削減や、アミノ酸などの効率的な生産につながると期待される。

本研究の背景について

微細藻類を用いて糖やアミノ酸などの有用物質や代替エネルギーをつくることは、低炭素社会の実現につながる可能性があるため、注目されている。ラン藻は光合成を行う細菌で、植物や藻類と同じように、光エネルギーを利用して水を分解し、そのエネルギーでCO2から糖をつくる。糖だけでなく、アミノ酸やバイオプラスチック、色素など、付加価値の高い物質を生産することも可能となってきている。

しかし、研究で広く使われているラン藻は、淡水でしか培養できないという問題がある。日本は淡水源が豊富だが、世界的に見ると淡水は貴重な資源である。淡水を使わずにラン藻を培養することができれば、実用化に向けた大きなステップになる。

人工海水での培養に成功

本研究チームは、できる限り淡水を使わないラン藻の培養方法の確立を目指した。本研究では、世界で最も広く研究されている淡水性ラン藻「シネコシスティス」を用いた。通常シネコシスティスは、「合成培地」(精製された化合物からなる培地)で増殖するが、「人工海水」(海水成分と同等になるように人工的に化合物を調製した培地)による培養を試みた。その結果、海水だけでは増殖しなかったが、窒素とリンを加えることで海水中でも増殖した。

また、海水培養では、培養液中の水素イオン濃度(pH)が低下して増殖が止まってしまうが、酸性化を抑える緩衝液を加えることでpHの低下を抑え、増殖が改善することがわかった。しかし、合成培地と比べると、窒素源、リン源、緩衝液を人工海水に加えても、シネコシスティスの増殖は3割ほど劣っていた。

人工海水培地および合成培地における細胞内アミノ酸量の比較

シネコシスティスの野生株を人工海水または合成培地で3日間培養後、細胞内のアミノ酸量を測定した。図は、合成培地でのアミノ酸量を100とした相対値で表している。

人工海水培養では有用アミノ酸の量が大幅に増加

次に、人工海水培地と合成培地でそれぞれ培養したラン藻を比較したところ、細胞内のグリコーゲンやアミノ酸の量に大きな差が出た。人工海水培養のグリコーゲンの量は、合成培地培養に比べて約4割少なかった。一方、人工海水培養のアミノ酸の量は、合成培地培養に比べてグリシン、プロリン、グルタミンやアスパラギン酸が約4~5倍、リシンが約10倍、オルニチンが約20倍多いことがわかった。人工海水培養は、合成培地よりシネコシスティス自体の増殖では劣るが、有用アミノ酸の量が大幅に増加するという知見が得られた。

天然海水では採取した場所で増殖量に差

また、人工海水ではなく、2種類(伊豆大島と伊豆半島付近)の天然海水を用いたシネコシスティスの培養も試みた。その結果、人工海水と同様に、どちらも窒素、リンを加えることで、シネコシスティスが増殖することがわかった。一方で、天然海水でも採取した場所によって増殖量に差が出た。このため、天然海水を用いてラン藻を培養する場合には、最も適した海水を検討する必要があることが示唆された。伊豆半島付近の天然水では、人工海水と同様の増殖を示した。また、緩衝液を加えても、効果がないなど、人工海水での培養との違いもみつかった。

天然海水を用いた淡水性ラン藻シネコシスティスの培養

シネコシスティスの野生株を2種類の天然海水で培養した。培養時には、光照射および1%のCO2を混合させた空気を導入した。窒素源として塩化アンモニウム、リン源としてリン酸水素カリウムを添加した。細胞の増殖は、濁度(OD、測定波長730 nm)で継時的に観察した。

今後への期待

今回、淡水性のラン藻が海水を用いて培養できることがあきらかになった。海水を使うことで、淡水の利用を減らすことができるだけでなく、塩濃度が高いことから、他の生物が混入してラン藻以外の細胞が増殖してしまうリスクを減らすことが期待できる。現時点では、合成培地に比べて増殖は劣るものの、有用アミノ酸が大幅に増加することから、海水培養を利用して有用な物質を効率的に生産できる可能性がある。今後、海水培養条件下で、細胞内でどのような変化が起こっているかを詳細に調べていくことで、海水を用いたラン藻の応用研究が進展していくと考えらる。

なお、本研究は、JST戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発ALCAの一環として行われた。

【参考】
理化学研究所 - 海水を用いた淡水性ラン藻の培養に成功

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